サーチマーケティングとリスク管理 - SEOの落とし穴を回避するために

検索エンジン最適化(SEO)におけるリスク管理の問題。検索順位の不安定、突然のトラフィック喪失といった問題を回避するために必要なこと。


公開日時:2008年04月25日 21:37

リスク管理という言葉を耳にしたことがある方でも、SEM という話題の中でリスク管理の話を聞くのは初めての方が多いでしょう。そこでまず「SEMにおけるリスク管理とは」について説明します。

近年、山一証券の粉飾決算による倒産や雪印乳業が牛乳食中毒や牛肉の偽装事件により会社が消滅するという大変な出来事がありました。これらの問題を通じて、企業におけるリスク管理の甘さが指摘され、リスクの認識とその対応に注目が集まるようになりました。事前に問題を認識し、それを回避する、あるいは問題が発生した時の対処方法をきちんと定めておくことによりダメージを最小限に抑えるようということです。

SEM においてもこのリスク管理の考え方は非常に重要です。

SEO や検索連動型広告を導入し積極的に活用するのは、Webビジネスにおいてサーチトラフィックが無視できないほど重要になってきたからです。検索エンジン経由で訪れる顧客は他の広告媒体よりもコンバージョン率が高く多大な売上げに貢献してくれます。しかし裏を返せば、もしある日突然あなたのWebサイトが検索エンジンから消滅あるいはランキングが大きく低下すれば、検索エンジン経由の売上げも一気に消滅し多大なダメージを被ることになります。

検索エンジンからの"消滅"で売り上げを失う

現在、世界のサーチトラフィックの55.8%は Google が握っています(OneStat.com、2003年)。つまり Google におけるWebサイトの位置づけがそのまま検索エンジン経由の訪問者数を左右することになります。昨日まで Google で1位に表示されていたのにある日突然、全く上位に表示されなくなったら非常に多くの見込み客のアクセスを失うことを意味します。そして、そんな悪夢が現実に起きたのが 2003年11月でした。

Reuters が2003年12月3日伝えたニュース"Change to Google ranking system irks merchants" によると、2003年11月の Google の検索アルゴリズムの変更により、今まであるキーワードで1位に表示されていたWebサイトが250位まで低下し、それまで毎月 $20,000 の売上げに貢献していたサーチトラフィックのほぼ全てを失ってしまった企業があります。また、米New York Times誌は、ある米国の企業がマルチドメイン戦略によるSEOを実施して、上位1~10位のほとんどを独占したために他の企業が検索結果の2ページ目に追いやられ、サーチトラフィックを奪われたというニュースを報じています。

こういったケースを耳にしても、「過度にSEOを施していただけだろう、私は特におかしなテクニックは使っていないからスパムとみなされることはない」と他人事のように気にも留めず安穏としているWebサイト担当者は少なくありません。しかし、そういった認識の甘さが命取りとなるのです。

順位変動のリスクは全てのWebに存在する

検索エンジンのあなたの現在の掲載順位は永続的なものではありません。検索エンジンのアルゴリズム変更にまつわるものから、Webを運営しているサーバの問題、あなたの企業が属する市場の競争激化など、あなた自身がWebサイトに何の手を加えなくてもランキングに大きな影響を及ぼしうるネガティブなリスク要因は存在します。あるいは今まで特に気にも留めずいわば「Web運営における常識」として行った行為の中に、マイナス影響を与えうる要因が潜んでいることもあります。問題なのはSEO や PPC のサービスを利用している企業はおろか、それらのサービスを提供するSEO会社側にも、こういったリスクの存在及びその対応策を知らないことです。


検索エンジンがあなたのビジネスにとって非常に重大な影響を及ぼしており、売上げの50%以上をサーチトラフィックがもたらしているというオンラインショップは決して少なくないでしょう。それならば、サーチトラフィックを失いうるリスクがどこに潜在しているかを認識し、予めそれへの対応策を考えておかなければ、万が一問題が発生した場合に適切な対応ができずビジネスに様々な支障をきたし、場合によっては会社自体の存続にかかわるかもしれないのです。

次に、SEM の活動において存在するリスク要因と、それの対処・回避策についての説明をします。

リスク要因1:相対的な順位決定によるリスク

あなたがどんなにSEOをがんばっても上位に表示されないことがあります。なぜなら検索エンジンが決定する順位は相対的なものだからです。例えばターゲットとするキーワードと同じキーワードで競合他社も同じようにSEOを組み込めば、一向に順位が上がらないことがあります。大学受験の勉強であなたがどんなに一所懸命がんばっても他のみんながもっと勉強すれば合格できないことと同じです。あくまで相対的に関連性が高いものが上位に表示されるのです。たとえ現在のランキングが良くても安心せずに、もっと改善する方法はないかを探って下さい。

リスク要因2:SEO会社にSEOを依頼する

検索連動型広告は対価を支払うことで確実に検索結果の上位枠にWeb広告を表示させることができますが、SEO はあくまで検索エンジンに最適化をするだけであり常に上位に表示できるわけではないことは説明しました。これは SEO会社にSEOを依頼した場合も同様です。あなたが SEOを専門会社に依頼して費用を支払う時、その費用は「最適化してもらうために費用を支払う」のであって「上位に表示されることを保証してもらうために支払っている」のではないことを再認識して下さい。SEO会社も神様ではありませんから、いくらお金を積まれても上位に表示できない時はできないのです。

また、中には悪質なSEO会社があります。Webビジネスのマーケティング戦略の一部を外部に発注するのであれば、蔓延る悪質なSEO会社が存在するという認識もして下さい。依頼したSEO会社がダメだっら他の会社に変更すればいい、などと安易に考えていると取り返しのつかない惨事を招くことがあるのです。

このリスクの回避法は比較的簡単です。まず、検索エンジンから忌み嫌われるようなスパム行為は一切しないことです。SEO会社に業務を依頼しているのであれば、そのSEO会社がどのような手法を用いてSEOを行っているかを把握しておくことです。危険な手法を用いているのであれば注意をすべきです。2003年12月現在、1年前と比べて非常に多くのSEO会社が出てきましたが、一方で非常に悪質な手法を用いているSEO会社も少なくありません(別コラム参照)。信頼できるSEO会社を見分ける目も必要です。

SEOを自分で行っている企業やオンラインショップの方は、Webにある様々なSEOに関する情報を入手して色々と試している方が多いでしょう。まずSEOテクニックに走る前に Web ページそのものがきちんと検索エンジンが解釈できる状態にして下さい。SEOの章で述べた通り、情報アーキテクチャを人間とクローラーの両者が見て理解できるようにするのです。その基盤を作った上で、少しずつテクニックを試します。また、自分が普段参考にしているSEOに関する情報ソースが信頼できるものであるかどうかを確認して下さい。最近は、いかにもSEOに詳しい人が書いていそうなWebでも内容がでたらめだったりするケースが少なくないのです。

残念ながら検索エンジン会社が「ここまではOK,ここからはスパム」という明確なボーダーラインを提示していない以上、上記のリスク要因の話を踏まえた上で SEO をするのは難しいと感じるかも知れません。目安として「明らかにユーザーのために何の利益ももたらさない小技」はやめておきましょう。

次にリスクが現実に発生した場合の回避方法について。この場合は PPC 広告を活用することでサーチトラフィックの現象を阻止することができます。検索連動型広告は有料であるかわりに確実に検索エンジンの上位に表示できるからです。再度ランキングが回復するまでの間は、つなぎとして 検索連動型広告に依存しましょう。

もし現在 PPC 広告を利用していない方は、万が一の場合に備えてオーバーチュア及びアドワーズ広告のアカウントだけでも作っておくことをお薦めします。

リスク要因3:検索キーワード競合性の変化

将来有望なマーケットが表れると利益を求めて次々と新規参入企業が登場し、市場競争が激化します。市場シェアを獲得した企業が潤う一方で、競争に負けた企業は淘汰され市場から撤退していきます。この事象は検索キーワードにおいても発生します。

検索キーワードにも競合性という概念が存在します。あるキーワードに対してSEOを施している企業が多ければ多いほどそのキーワードの市場競争は激しく、検索エンジンの上位を獲得するのも困難になります。同様に検索連動型広告であれば相互に入札を繰り返すことで上位に掲載するためのクリック単価は上昇していきます。米国の検索連動型広告はキーワードによっては価格が上がりすぎて SEO に回帰している企業が少なくありません。

例えば、2002年2月時点でキーワード"SEO"で最適化している企業など片手で数えられるものでした。しかし2003年12月時点では、非常に多くのSEO会社が表れ、同じように"SEO"で最適化を施しているため簡単には上位を獲得することができません。他にも「自動車保険」「キャッシング」「はんこ」「かに(蟹)」「中古車」「ホスティング」等に関連するキーワードはどれも競合の激しい分野です。

仮にあなたがターゲットとしているキーワードと同じキーワードで最適化をしている企業が現状で少なくても、もし今後競合他社もSEOの重要性に気がつき、コンバージョンが高いあなたと同じキーワードを発見してSEO対策を強化してくれば、現在のあなたが築いた地位は保証されません。

このキーワード競合性のリスクに対する対処法としては、様々なバリエーションのキーワードでSEOを施しておくことである程度回避できます。例えばSEOにおいてたった1つのキーワードでのみ最適化をしていた場合、そのキーワードの浮き沈みによって直接影響を受けることになります。しかし、10,50,100・・・と多くのキーワードで対策を施しておけば、ある一時点において全てのキーワードで上位ランキングを失う可能性は低いためリスク分散が行えます。株取引において様々な銘柄を組み合わせてポートフォリオを組んでリスクヘッジを行うのと同じことです。

リスク要因4:検索エンジンアルゴリズムの変更

検索エンジン会社は検索サイト利用者に、検索に対してより的確な情報を提供できるように日々検索エンジンアルゴリズムの開発・改良に努めています。例えばGoogleは2007年に450回以上も検索アルゴリズムを改良しています。一方で一行に減らない検索エンジンスパマーの様々な悪質な手口に対応するために様々なスパムフィルターや対策を行ってきます。

つまり、検索エンジンのWebページ評価に関するルールは日々変更されていることを意味します。従って、かりにあなたが全くWebページに変更を加えていなくても3ヶ月前は1位に表示されたページが今は50位以降に表示されるようになることもあるのです。あるいは、今まで過度な SEOテクニックを駆使して1位に表示されていたのにある日突然検索結果ページをいくらめくっても見つからないほどランキングが低下してしまうこともあるわけです。たとえ今あるキーワードでランキングが1位であっても、明日も1ヶ月後も3ヶ月後も1位で表示され続けるという保証はどこにもありません。

この説明を顕著に示す事例がありますので紹介しましょう。下記の図をご覧下さい。

これは、ある会社A~Cのある検索キーワードにおけるランキングの変動推移をグラフ化したものです。会社Aは私がSEO/PPCを担当した企業のものです。会社Bと会社Cは、ある別のSEO会社があるクライアントに対してSEOを提供していた時のものです。

会社Aに対してはSEOを実施してから3ヶ月経過後あたりから効果が出始め、以後2003年4月まで安定して上位に表示されています。この時のキーワードは比較的広い意味を持つSEO的には少々難しいキーワードですが、適切な最適化作業を施していればこの例のように安定して上位に表示ができることを示しています。

今度は会社Bをご覧下さい。このWebサイトは調査した2002年5月から安定して上位に表示されていたのですが2002年10月から2003年1月まで検索エンジンから削除されています。なぜこの期間に消滅したかというと、実は会社Bはクローキングという手法を利用していたのです。クローキング用にドメインを取得、whois にも虚偽の情報を記載するなどかなり手の込んだ手法を使っていました。しかし Google はクローキングによるSEOは検索エンジンスパムとみなすというスタンスをとる会社です。2002年10月はおそらく Google がクローキングに対して何らかの対策をうったのでしょう。この会社Bを担当していたSEO会社は他のクライアントにもクローキングを提供していたのですが、それも全て検索エンジンから削除されていました。

この会社Bが実施していたキーワードは、その業界では比較的コンバージョン率が高い人気キーワードでした。おそらくかなりの売上げをサーチトラフィックに依存していたはずです。しかしクローキングという手法に依存したためにこのような結果となっています。

今度は会社Cです。会社Bと同様のSEO会社が実施していたものです。こちらは隠しキーワードや CSS Positioning による画面外にテキストを並べるという手法を使ってあるキーワードでSEOを施していました。しかし2002年11月以降から急激に順位を下げ、ほとんどサーチトラフィックを得られない状況となっています。

適応は適応能力を締め出す

"Adaptation precludes adaptability"(適応は適応能力を締め出す)という言葉があります。ある環境に適応しすぎると、その環境が変化した時に対応する適応能力が奪われるという意味です。同じように、Google のアルゴリズムに関心を寄せすぎ、Googleアルゴリズムを逆手にとって「今のアルゴリズムに」対応したSEOテクニックばかり用いると、そのアルゴリズムが変化した時に全く対応できなくなりランキングが大きく低下することがあるのです。アンカーテキストが効果的だと聞いて、ユーザビリティや導線を考えずにリンクテキストばかり用いると、Webサイト全体の使い勝手が悪くなるばかりか、検索アルゴリズムが少し変わった時に今までは「よく最適化されたサイト」と判断されていたものが突然「スパムサイト」とみなされてしまうのです。

あまり過度にSEOテクニックに走ることは、一時の効果が得られる一方で順位にマイナス変動を及ぼすリスクもあることを認識する必要があります。「それでもサーチトラフィックを増やす必要があるから」とSEOテクニックに走るのであれば、先述した米国企業の例のような問題が発生し売上げが激減しても、そのリスクは甘受しなければなりません。





記事カテゴリ:SEO(検索エンジン最適化), サーチニュース 08H1
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