SearchWiki に見る検索エンジンの未来 - セミログ

先週グーグルからリリースされた「サーチウィキ」。検索結果にユーザのフィードバックを取り入れ、その行動データを活用可能な点に意味がある。


2009年05月12日 12:37 | サーチニュース 09 | TrackBack (0) |

2009年5月7日、グーグルから「サーチウィキ(SearchWiki)」と呼ばれる新しい検索機能がリリースされた。これは米国で2008年11月にリリースされていたものと同等の機能だ。

サーチウィキとは、端的に説明すると「自分の検索結果を自由にカスタマイズできる」機能で、検索結果の特定のリンク(ページ)の順位を変えたり、検索結果から除外したり、あるいは新規にリンクを追加することができる。具体的には、次のような利用シーンが考えられる。Google で「ショコラ」と検索すると、1位に日本テレビ「ショコラ/サタデーバリューフィーバー」公式サイトが、2位に女性シンガー・Chocolat の公式サイトが表示される(2009年5月8日13時時点)。

ところで私が普段、ナビゲーショナルクエリ(特定の目的ページにアクセスすることを目的とした検索、クエリ)として「ショコラ」という言葉で後者の女性シンガーのサイトにアクセスしている時、サーチウィキを使って2位のサイトを1位にしたり、興味のない“ショコラ”のページを除外しておくことで、私はいつも難なく目的のページにアクセスできるようになる。このように、サーチウィキは検索というナビゲーションを快適にしてくれる。

さて、このような自然検索の順位を入れ替えたり削除するなど自由にカスタマイズできる機能が登場すると、やはり検索マーケティングに携わる関係者はとりわけ SEO という技術への影響を考えてしまうかも知れない。一応言及すると、影響はあまりないと推測され、その理由は自分が加えた変更内容はその当人の検索にしか影響せず、他人の検索には一切影響しないからだ。 Google の Marrisa Mayer(検索製品および利便性の向上担当副社長)や Cedric Dupont(プロダクトマネージャー)両氏はともに、将来的に他人の検索に影響を与える可能性は否定していないが、SEO という観点では特にこの発言は特に意味を持たない。

ただ、「サーチウィキ」という1つの検索製品ではなく、なぜこうした仕組みが登場してきたのかを探ることで、今後の検索マーケティングの未来を少し垣間見ることはできる。今回はマクロの視点から、そもそもなぜ、ユーザーに編集やカスタマイズをする権限を検索エンジンが与えるようになったのか。その背景について触れよう。

多くのインターネットユーザーに利用されている Google、Microsoft (MSN/Live Search)、Yahoo! いずれの検索エンジンも、Web ページのランク付け(重要度を測る)をする際に、人気投票としてのリンクを重要な指標として用いている。Web 全体のリンク構造を解析し、より多くの、質の高いリンクを受けているページほど価値がある、重要であると判断することでランクを決定するわけだ。これにより、ある程度ページの選別ができるため、その他の数百にわたる要素と組み合わせることで検索クエリに合致する Web ページを抽出し、ランキングを決定している。

ところでこの方式、検索利用者に最適な検索結果を表示しようとする過程において、実は検索利用者側の意見は含まれていない。ランク決定の際に用いられた指標は、基本的にサイト運営者が発したリンクによる人気投票だからだ(もちろん、リンクだけで決定しているわけではないが)。

Google のテクノロジーのページに記載されている通り、完璧な検索エンジンを開発するためには、ユーザーが何を探しているか理解すること(クエリインテントの理解)と、ページが何について記述されているかを理解すること(コンテンツの理解)の2つが必須だ。

この前者のクエリを一番理解することは、公式ブログで言及されている通り、ユーザー自身だ。さらに、検索結果の関連性とはきわめて主観的なものであり、ある人にとって良いものでも全員が満足できる検索結果を作り出すことは難しい。たとえば「女子アナ」と検索した時の、Google、Yahoo!、Microsoft の検索結果は大きく異なるが、実際のところどちらがベストかはわからない。

検索エンジン側で大量の情報を処理して中立的なランキングを決定する一方で、何らかの方法でユーザー側の評価や意見を取り込んで、それを反映した検索結果を作ることがユーザーの利益になる可能性がある。そこで、数年前から登場したのが Search Wikia(サーチウィキア)や Mahalo などのソーシャル検索エンジン(編集型検索エンジンと呼ばれることもある)だ。これらの検索技術は、当初はアルゴリズム検索としての Google との対比で用いられることが多かったが、両者は排他的関係というわけではなく、むしろ両方の良いところを取り入れ、大部分の大量のデータを機械(アルゴリズム)で処理し、最後の調整を人力(ソーシャル)で行うというアプローチは理に適っている。

このように、ユーザーのフィードバックを取り込んで検索結果を便利なものにしていくという、検索市場のマクロの流れを理解したうえでサーチウィキという1つのプロダクト見ると、また違った見え方ができるのではないだろうか。

こうしたフィードバックのユーザー活動データを集計することで、自然検索や検索広告(アドワーズ)の品質や関連性を改善する新たなシグナルが見つかる可能性がある。実際、米国ではサーチウィキの仕組みをアドワーズ広告で実施する試験が行われている。単純に広告の表示・非表示ということではなく、 Interest Based Advertising のようなターゲティングに活用する可能性もあるだろう。

執筆:株式会社アイレップ SEM 総合研究所 所長 渡辺隆広








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