SEOに目をつけるのが早すぎたからこそ誰よりも早く気づいた本質

「私がSEOの世界に足を踏み入れたきっかけ」の続き。SEO で売上立てるのが難しかったので、空いた時間でウェブ解析やユーザビリティ、UX を学んでいた話。


公開日時:2019年06月23日 21:30

2012年に投稿した記事「私がSEOの世界に足を踏み入れたきっかけ」の文末に続くと書きながら放置していたので、この機会に(まだ記憶があるうちに)続きを書きます。

SEOは早すぎた

Googleが誕生する前の1997年にSEOは早すぎました。検索エンジン登録代行*1ならまだしも、特定の検索キーワードで検索上位に表示することを支援する事業は、早すぎて誰も理解してくれませんでした。幸い、前回の記事で紹介したネクストの井上氏ほか、後に有名となるネット企業の社長*1の方々からお仕事を発注いただけたのですが、収入を得るのにとても苦労しました。

*1検索エンジン登録代行:当時人気だったディレクトリ型検索エンジンにサイト情報を掲載するお仕事。1990年代にSEO事業をやっていたという企業の大半は、今日でいうSEOというよりも検索エンジン登録代行業です
*2当時の顧客リストには、きっと誰もが「おおーーーー」と驚く名前が並んでいます。先見の明がある方々だからこそ、その後事業が軌道に乗ったのでしょうか。

Infoseek、Lycos、goo、フレッシュアイ、Altavista、AlltheWeb、Hole-in-One、Excite といったアルゴリズム型(ロボット型)検索エンジンが群雄割拠する時代にSEOは時代を先取りしすぎました。それでも「2005年には絶対に世の中の人が検索サービスを使って情報取得するのが一般化するはず」という(根拠のない)絶対の確信がありました。あと7年耐えることにして、生活するための資金を得るために他のことをすることにしました。

他のこととは、(1) PCテクニカルサポートなど本当にまったく別のお仕事、(2) インターネットに関連する勉強の2種類があります。前者は生活費を稼ぐためで、話としては面白いと思いますが、書き始めると永遠に終わりません。よって後者に触れます。


自然にリンクが増えていくニッチなサイトを立ち上げる

(ウェブ制作関係:1997~2003年頃)

ウェブ制作や運営の練習に、個人でさまざまなウェブサイトを立ち上げました。全世界のドメイン情報をまとめたサイトや、海外の格安レンタルサーバ情報など、ウェブ系の比較的ニッチな、でも確実にニーズがあるコンテンツを作っていました。こうした専門性が高い情報ほど、検索ニーズが高いと思ったからです。

実際、かなりの自然検索流入があったうえ、国内外、言語を問わず世界中のウェブサイトからリンクが張られました。おかげで、検索キーワードの選定ノウハウや、どんなコンテンツを企画すればいいか勉強になりました。

この時の経験も現在役立っています。


SEOをするならウェブ解析(当時のアクセス解析)のキーワード分析は必須スキルになるはず

(アクセス解析:1997~2005年頃まで)

検索エンジンで探しやすくするということは、より多くの人がウェブサイトを訪問するということ。だったら数値でそれを確認するための知識は必要になるよねと考えて、まずアクセス解析を勉強することにしました。

1990年~2000年前半のインターネットでは、多くのウェブサイトが自サイトのアクセス情報を一般公開していました。サイト設置型の eXTReMe や、Apache サーバ生ログ解析ソフト Webalizer、無料のCGI設置型アクセス解析(futomiなど)などがあったと思います。こうしたツールを導入しているサイトであれば、サイトのどこかにあるアクセス解析のリンクを辿ることで、誰もが第三者のウェブサイトのアクセス情報を閲覧できました(今では考えられないですよね)。

先述した通り仕事を得るのに苦労してヒマだったので、時間がある時は1日20時間くらい、ひたすら(一般公開アクセス解析ツールを設置している)サイトを探してはそのアクセス情報を見ていました。特に、参照キーワード情報(* 検索経由で来訪したユーザーが利用した検索クエリの情報、まだSSL暗号化される前の時代なので、基本的に全てのキーワードリファラを確認することができた)をひたすら見ていました。きっと当時、検索エンジン会社の関係者を除けば、日本で一番サイト来訪時に使用されたキーワードを見ていたと思います(本当に仕事なくて時間があった・・・)。

おそらく1997~2000年の約3年の間に1,000以上のあらゆる種類のウェブサイトの参照キーワードに目を通したと思います。この経験のおかげで、私は「同じことを探しているのに、使用するキーワードは十人十色である(後のロングテールという言葉で表現される事柄)」「検索行動は連続性がある、1つ1つのキーワードを点で見るのではなくて、行動でつなげて線で見れば人の検索時の気持ちや意図が浮かび上がってくる」ということを学びました。アクセス解析では1円も稼ぐことはなかったですが、学びは多かったです。


ユーザビリティやUX はSEOとセットで考えないといけないはず

(ユーザビリティ診断:1998~2003年頃まで)

ご存じの方がいらっしゃるかもしれませんが、私はかつて、購読者1万人以上のメルマガで毎週、無料のユーザビリティと顧客体験の診断をコンテンツとして配信していたことがあります。診断を希望する企業や個人から応募を募り、その診断をメルマガ上で行っていました。

診断は無料です。ただし事前に「診断をします」ということは先方には一切伝えず、かつ、(通販企業の場合)私はお客として実際に商品を購入し、商品が自宅に届いたところでユーザビリティや顧客体験のレポートを書くこと、そして悪いところははっきりと悪いとメルマガで指摘するというルールにしました。これを3~4年ほど毎週続けていたので、合計1,000近くのウェブサイトの診断をしています。

ユーザビリティを勉強しようと思ったのは次の理由です。検索という能動的な行動をしているのだから、その人は真剣に情報を探しているはず。ならば、せっかく検索上位に表示しても、サイトの作りが悪ければがっかりして帰ってしまうだろうし、仮に商品購入に至っても顧客体験に不満があれば二度目はないだろう --- だったら SEO するなら(現在でいう)UXとUI の改善は必要不可欠だと考えたのです。

たくさんのサイトを本気で分析して、毎週レポートを書いたおかげで診断・分析スキルは身につきました。レポートの質を高めるために、ユーザビリティ診断関係の書籍のほか、企業の顧客満足度や経営戦略に関する書籍も読んで学びました。アクセス解析同様にお金にはなりませんでしたが(診断のために本当に商品を購入していたのでむしろ出費が増えた)、専門知識の財産が得られました。

ちなみにメルマガですが「事前に通達しない」「ミステリーショッピング」「酷いときはメルマガでボロクソに書く」ということで、現在の感覚だと恐ろしくて私にはとてもできないですが、実は当時、苦情は後述する最後の1件を除いて1つもありませんでした。むしろ皆様に喜んでいただきました。もともと診断希望の方々なので正直に客観的な意見を言ってほしかったんだと思います。また、ボロクソに指摘するにしても論理立てて何故ダメなのか具体的に説明すると同時に、どう改善すべきなのかも提案していたので、きっとお役に立てたはずです。

この診断は4年ほど続けたのですが、最後にある女性から理不尽な苦情が寄せられ、それでやる気が削がれて止めました。この人の主張は「私の(*この女性が運営する)サイトの診断レポートは、他のサイトの診断レポートより文字数が少ない」というクレームでした。いま思えば質の悪いクレーマーです。あの時の女性の方、お元気ですか?


SEOが早すぎたからこそ、本質にも早く気がついた

20年前の私に一言伝えるなら、その時代に UX/UI とアクセス解析を選択したセンスを褒めてあげたいです(笑)。

SEO に目をつけたのは早すぎたと思います。でも、早すぎたからこそ、私は誰よりも早く本質に気づくことができました。参照キーワードは検索各社がSSL暗号化で閲覧不可になるまで SEO 効果測定における重要な分析項目でしたし、現在もサーチコンソールで使います。検索意図は説明不要でしょう。UI や UX の話は、Google検索が機械学習を本格導入した以後(2012年~)は SEO担当者の守備範囲になっています。

このアクセス解析と UX/UI診断と並行して、細々とSEOの仕事と、個人で解説したウェブサイトで色々とSEOの研究をしていました。しばらく続けているうちに(2000年頃)、私はSEOの限界に気がつきました。


マーケティングを学ぶために大学院に行く

私はよく「成果報酬型SEO?キーワードの順位上げることを目的化しても意味ないだろ」的な発言をしていますが、正直にいうと1997~1999年頃は私も料金体系の1つとして順位に基づいた価格を設定していた時期があります。しかし、だからこそ負の面にも気がつきました。

SEO はあるキーワードで検索した時に、検索上位にウェブページを表示してあげることを支援するわけですが、1位に表示してもウェブサイトの売上が増えないのであれば意味がありません。私(SEO)はマーケティング支援に対価をいただくべきであって、順位でお金をいただいてはいけないと考えました。

また、アクセス解析のデータを大量に見ていたおかげで、正しいキーワードを選択してあげることの重要性にも気がつきました。私が鮮明に覚えているのは、ある家具通販サイトの方から相談をいただいたときに「キーワード"木"で1位にして欲しい」と言われたことです。

その通販サイトは木製を特色とする家具屋さんでした。だから担当者の方も「木」で検索上位に表示してほしいと仰られたと思うのですが、さすがに家具を購入するときに「木」とは昔も今も検索しませんよね。だから、キーワードはデータに基づいて私が提案してあげるべきだと考えました。

しかし大学生時代からこの仕事をしている私には、マーケティングの専門知識がまったくありませんでした。でも今更企業に就職する気もありませんでした。そのタイミングで、偶然にも母校(明治学院大学)にて大学院(MBA)を新設するという話があったので、面接を受けて大学院に行くことにしました。


(続く)

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