SEMリサーチ

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SEO目的に中古ドメインは購入する価値はあるか?

SEOの手法の1つとして、中古ドメインを使ったSEOがあります。その手法と問題点について解説します。

中古ドメインを利用したSEOとは、取得後長い年月を経過した他人が所有していたドメインを何らかの手段で取得し、それを用いてウェブサイトを開設する手法を指します。

近年の検索エンジンは、ドメインやページ、リンクの経過年数(エイジング)を評価し、その経過年数が長いものをそうでないものよりもランキング算出時に高く評価します。つまり、他の全ての条件が同一であれば、取得後6ヶ月経過したドメインよりも、3年経過したドメイン下のウェブページの方が、検索エンジンの上位に表示されるチャンスは高いということです。Googleは「エイジングフィルタ」という呼称が作られたように、新規取得後6ヶ月未満のドメインはどんなに適切なSEOが施されたウェブサイトであってもランキング上位に表示される機会が著しく制限されます。最近でこそ、QDFにより対象検索キーワードが話題性ありと判断されている期間においては、新規に作成・公開されたページであっても検索上位に表示される確率は高まりますがそれは中長期で維持できるものではなく、やはり経過年数が高いページ、リンク、ドメインを持つほうが、顕著とは呼べないものの、相対的には、よりベターといえます。

さて、古いドメインはどのように入手するのか。これは、かつて存在したけれども何らかの理由で閉鎖され、所有者がいなくなったドメインを特定し、それを再取得する、あるいは、近い将来、有効期限切れが予想されるもの、間近に控えるドメインを見つけて、その有効期限切れと同時にドメインを再取得する、あるいは、閉鎖後もドメイン所有権は放棄せずにそのまま眠らせている人にコンタクトをとり、当該ドメインを譲ってももらうという方法があります。いずれにせよ、ずっと昔からあるドメインを手に入れて、そこにウェブサイトを開設すればいいのです。

例えば、1996年に開設されて、2002年に閉鎖されたサイト(ドメイン)があったとしましょう。そこに自然に張られた10,000本のリンクが存在したとします。そんなドメインを見つけて再取得し、ウェブサイトを開設すると、最初から10,000本のバックリンクを持った状態でサイト運営ができるのです。ドラクエのゲーム開始直後から最強装備を身につけている状態といったらわかりやすいでしょうか。

まとめると、中古ドメインというのはそれが過去にサイトが開設されていたのであれば、きっといくらかのバックリンクを持っているはずです。そのサイトが消滅すれば、被リンクページの中には「このサイトは存在しない」としてページ更新段階でリンクを消してしまう人もいるでしょうが、同時にメンテナンスをしないためにいつまでもその「消滅したドメイン」に向けてリンクを張っているケースは多々あります。Yahoo!カテゴリやDMOZ、Jディレクトリーといった大手ディレクトリ型検索エンジンでも、カテゴリを見ていると既に存在しないサイトを掲載していることが少なくありませんが、そういった形でリンクは存続しているわけです。そうした誰かのお古のドメインを取得してしまえば、過去に蓄積されたリンクをまるごと自分のものにできるわけです。

そんな理由で米国では中古ドメインを使ったSEOを手がける人もいますし、そんなドメインを取得したい人、高値で売却したい人をマッチングさせるオークションサイトもあります。例えば私はかつて大企業が運営しており、その後放棄されようとしているドメインを発見し、それがオークションにかけられていた時に価格をウォッチングしていたのですが、最終的に日本円で25万円(!)の値段がついたものを見たことがあります。

ここまで読むと「よし、オレも良さげな中古ドメインを見つけてSEOラクにすすめてやろう」と考える人が出てくるかも知れません。しかし残念ながら、それは難しいです。

実はこの中古ドメインを利用したSEO、今日では効果を失いつつあります。正確にいえば、SEO的に再取得の「意味があるドメイン」と「意味がないドメイン」がありますが、前者を見つけるのは極めて困難なのです。後者はオークションサイトやそれのビジネス専門業者にコンタクトを取れば腐るほど見つけられますが、SEO的に意味はないのです。

何故か。これはGoogleは中古ドメインのバックリンクを無効にするからです。具体例をあげて説明しましょう。例えば、2000年に取得されて2004年に放棄され、所有者が誰もいなかった、バックリンク1,000本を持つドメインがあったとしましょう。このドメインを私が2008年1月19日に取得します。

ここで「1,000本がそのまま引き継がれる」と思われるかも知れませんが、Googleは賢いことにこの「過去の1,000本」を無視します。これはGoogleインデックス上の当該ドメインの履歴と照らし合わせて、消滅期間(2004~2007年)があるから無視したのか、前所有者のサイトのテーマと、新所有者のサイトのテーマが全然違うからなのか、どの要素を元に判断しているかは正確にわかりませんが、アルゴリズムによって当該ドメインへ向けられたリンクを評価しない仕組みを持っています。

このように、特定期間において何のコンテンツも存在しない、アクセスできない、所有者がいなかったドメインというのは無数にあり、専門業者も数多く所有していますが、上記理由によりSEO的な効果を得るのは極めて困難です。

次に、現時点でサイトが存続しており、それを譲渡してもらった場合。これは有効です。しかし、こうした「サイトの譲渡」というのは一般的にSEO目的というよりも企業の事業戦略上の理由によるものが多いでしょう。また、これから有効期限切れを迎えるドメインを、その期限切れと同時に取得したい時。最近はドメインのレジストラが有効期限切れと同時にそうしたドメインを抑えてしまうため、簡単に取得できません。有効期限切れと同時にドメインを登録しますといったサービスを展開している企業もありますが、大抵そういうサービスはオークション形式で値段がつりあがるため、価格が高くなりすぎて手が出ないなんてケースも出てきます。

そもそもの話として、中古ドメインというのはドメイン名を自分で決められません。例えば、音楽配信サイトを開設するのに tenshoku-●●●.comなんてドメインで開くことはためらいますね。

以上、まとめると、対Googleにおいて有効期限切れドメインの再取得による「中古ドメインを利用したSEO」というのはおすすめできるものではありません。

※ この原稿はとある特集記事向けの下書きなので、内容に間違いがあったり、読みにくいかも知れません 完成版は書店でご覧下さい 2008.01.19

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