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解説:Googleユニバーサル検索とは

Googleユニバーサル検索は様々な検索結果を複合表示するサービス

Googleユニバーサル検索とは、米Googleが2007年5月に発表した新しい検索技術の呼称です。検索結果画面に、ウェブページだけでなく画像、動画、商品、ニュース、地図、地域情報、ブログ、学術論文など、多様なコンテンツを複合的に表示するのが特色です。

たとえば「アゲハチョウ」と検索すると、アゲハチョウに関するウェブページだけでなく、アゲハチョウの写真も同時に検索結果に表示されます。「チャーハン 作り方」と検索すると、単にチャーハンの料理方法を説明したテキスト文章だけでなく、それを実際に調理している場面を撮影した動画コンテンツも検索結果に表れます。「目黒区 歯科医」と検索すれば目黒区周辺の歯科医を地図上に表示してくれます。

このように、Googleユニバーサル検索はユーザが入力した検索キーワードに応じて、関連性の高いデジタルコンテンツを(Googleが)自動的に選択して、検索結果に混在表示します。

Googleユニバーサル検索は誕生して1年経過時点で、すでに日本を含む100言語、150カ国・地域で展開されています。検索結果がユニバーサル化される割合は国や言語によって異なるのですが、日米で比較すると主に商品情報(Google Product Search)の日本語版が存在しない関係で、ネットショップに影響が出るであろう商品系は表示されないこと、動画コンテンツの表示割合が少し低いという違いはありますが、画像、ニュース、ブログは総じて頻繁に検索結果に現れる状況となっています(2009年5月現在)。さらに2009年4月から、ジオロケーション情報を使ったパーソナライズド検索の投入により、地域系クエリなしでもアクセス元を自動判別して周辺地図を表示する仕様になるなど、検索結果のユニバーサル化の割合は増加傾向にあります。

Googleはユニバーサル検索技術を同社のコア技術の1つとして推し進めており、同社副社長のMarrisa Mayer氏は2009年の春以降に検索結果のUI(ユーザ・インターフェース)を抜本的に変更する旨も発表しています。2009年に入ってGoogleはAJAX技術を使って検索結果を高速表示する試験を行ったり、+ボタンをクリックすることで関連コンテンツを得られるPlusBoxなど新UIをテストしており、これらのユーザフィードバックを得た上でUIのリニューアル時に投入されることが予想されます(2009年5月時点)。

ちなみに、日本ではYahoo!JAPANが2008年11月から本格的に、MSN / Live Searchも2009年3月に「ぜんぶ検索」にて、Googleユニバーサル検索同様に、ニュースや地図、商品などの様々なコンテンツを複合的に検索結果に表示するサービスを開始しています。こうした検索結果に複合・混合的に表示するサービスは一般的に「ブレンド検索(Blended Search)」や「統合検索(Unified Search)」と呼びます。「ユニバーサル検索」はGoogleのサービス名称を指しますので混同しないように注意してください。

Googleユニバーサル検索 登場の背景

Googleユニバーサル検索は、「検索結果の複合・混合表示」が特色です。従来からGoogleは地域情報なら「ローカル検索」、イラストを探したければ「画像検索」、最新ニュースを知りたければ「ニュース検索」と検索目的に応じて各々のバーティカル(専門)検索を用意してきました。それなのに、いま何故、Googleはこれらを複合的に表示するユニバーサル化の道を選んだのでしょうか。この背景には、次の3つの理由があります。

第1に、今日のインターネット環境と多様化する検索ニーズへの対応が挙げられます。一般に私たちが検索エンジンを利用する時は「ウェブ検索」と呼ばれるサービスを利用しています。ウェブ検索はその名の通り、キーワードと関連性が高いウェブページを検索結果に表示するものです。しかし、ユーザが検索エンジンに対して求めているのは、その時の検索インテント(意図)に応じて適合性の高い検索結果(情報)であり、決してウェブページという情報の形式(フォーマット)にこだわっているわけではありません。

たとえば、富士山の高さについて調査したくて検索をしたのであれば、「3776メートル」という回答の記述を持つウェブページを検索結果に表示すればユーザは満足かもしれません。しかし、チャーハンの調理方法を知りたくて検索したユーザがいた時、チャーハンの作り方を解説したテキストを持つウェブページを表示すれば十分でしょうか。この場合のユーザはチャーハンを自分で作るために検索をしている可能性がありますから、むしろチャーハンの作り方を実演している動画を検索結果に表示した方が、ユーザにとって有益でしょう。

現在のインターネット環境は、動画、画像、デジタル地図、地域情報、ブログ、商品情報など、様々な種類・形式の情報が無限に広がっている世界です。こうしたネット環境の変化にあわせて検索利用者の検索ニーズも多様化しており、これに応えるためには検索エンジンがいつまでも「ウェブページ検索」の姿のままでは立ちゆかなくなるでしょう。

第2に、検索利用者のリテラシの問題が挙げられます。たとえば私は検索業界に10年以上いますので、最新ニュースを知りたければ「ニュース検索」を、最近発売されたばかりの商品の評判を知りたければ「ブログ検索」を、渋谷駅周辺のエステのお店を探したい時は「ローカル検索」を、といった具合に自分の検索用途や目的に応じて、同じGoogleのサービスながら使い分けを行うことは容易にできます。

しかし、一般のインターネットユーザにも同じことが可能か?というと、自在に検索サービスを使いこなせないユーザというのはまだまだ大勢います。たとえば私の両親は「地図検索」「ブログ検索」「画像検索」というサービスの存在すら知りません。

こうした検索リテラシが高くないユーザでも、Googleが掲げるミッション「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること」を実現するためには、ユニバーサル検索によってユーザが意識しなくても必要な情報へ瞬時にアクセスできるようにすることが必要なのです。

最後の3つ目の理由に、バーティカル検索がそもそも利用されていないという課題を解決することにあります。Googleはウェブ検索以外にも、画像、ディレクトリ、トランジット(乗換)、ニュース、地図、ブログ、ブック(書籍検索)、スカラー(学術論文)など多岐にわたるバーティカル検索を提供していますが、皆さんは過去1ヶ月の間に、これらをすべて利用したことがあるでしょうか?また、検索の使い分けをするためには、用途に応じて瞬時にどのバーティカル検索に情報が存在するかを瞬時に適切に判断することが求められますが、それは検索の便利さを享受するためにはあまりに敷居が高すぎます。

つまり、Googleは個々の目的に応じて数々のバーティカル検索を立ち上げたものの、結局ユーザはウェブ検索という1つの窓口を継続して使い続けているため、結果としてユーザの検索体験の質を高める機会を逸しているという問題を抱えることになりました。実際、世界的にGoogleが強いといわれますが、ウェブ検索以外の検索分野ではマーケットリーダーではありません。そこで、検索キーワードのインテントを判断して、適切な検索結果を表示することで、ユーザの検索満足度を高めようとしているのです。

Googleユニバーサル検索のメリット

Googleユニバーサル検索がもたらすメリットは、第1に検索サービスに熟知していないうユーザでも探し求めている情報にアクセスしやすくなった点が挙げられます。モンシロチョウの姿を確認したい時、これまでなら「モンシロチョウ」と検索して表示された検索結果のいずれかをクリックして、その先のページに掲載されている写真を探す、あるいは画像検索に移動して「モンシロチョウ」と検索する必要がありました。Googleユニバーサル検索なら、単に検索窓に「モンシロチョウ」と検索すれば、自然検索最上部にモンシロチョウの写真を提示してくれます。

第2に、ユーザが入力した検索クエリによって検索結果に表示すべきコンテンツが自動的に判断・決定されるため、検索体験の質を高めることができます。たとえば先ほどの画像検索なら「芝桜」「インコ」など視覚情報が役立つと考えられる検索クエリなら軒並み写真やイラストを自動的に表示しますので、検索結果に対するユーザの満足度も高まるでしょう。また、先ほど例示した「チャーハン 作り方」での動画紹介や、「渋谷 中華料理」での渋谷駅周辺の地図と店舗情報の表示など、ユーザが求める「回答」に近いコンテンツを提示することで、ユーザが検索を開始してから完了するまでの検索タスクに要する時間を短縮できる、快適な検索体験を提供できます。

第3に、ユニバーサル検索で検索時ごとに様々なコンテンツに接触してもらうことで、Googleの新しいサービスや機能を認知してもらったり、便利さを理解してもらう機会を増やし、結果としてユーザ数の維持・拡大につなげることができます。Googleはその売上げの99%近くはアドワーズなどの広告収入に依存していますので、検索利用者の拡大はそのまま売上拡大に直結できます。

Googleユニバーサル検索技術の仕組み

Googleユニバーサル検索の技術は次のような仕組みです。Googleソフトウェアエンジニア・David Bailey氏の説明によると、ユーザが検索クエリをGoogleサーバに送信した時、Googleはまず同社が持つあらゆるデータベース(DB)からコンテンツ形式を問わず関連するものをすべて抽出します。その上で、検索クエリとコンテンツの関連性を評価して最終的に検索結果に表示すべきものを決定します。

注意したい点は、検索キーワードごとに、あらかじめ表示されるコンテンツの種類や枠が決まっているわけではない、ということです。検索する時間帯や時期によっても、検索結果に表示されるコンテンツは変わります。

たとえば、2008年10月22日の段階で「ハロウィン」(10月末のイベント)で検索すると、自然検索最上部にハロウィンの画像(かぼちゃのおばけなど)が4つ表示されました。しかし10月28日時点(つまりイベントの直近)では画像に加えて関連するニュース記事やブログの検索結果もあわせて表示されるようになりました。しかし11月1日(イベント終了の翌日)には、ハロウィンと検索しても画像は表示されず、かわりに昨日のハロウィンに関するニュース記事やブログが表示されました。そして月日が流れた2009年1月15日現在、同じ「ハロウィン」というクエリで検索しても、ウェブページへのリンクが10本表示されるだけです。

これは、同じ「ハロウィン」という検索クエリでも、イベント開催直前と当日、その後では検索利用者が求める情報の種類は異なるはずだからです。つまりハロウィンのイベント前で検索するユーザならハロウィンに関する様々な情報にアクセスしたいでしょうから画像やニュースなどのコンテンツを表示していますが、2009年1月という季節外れの頃にハロウィンと検索するのは、おそらく本年10月のハロウィンの準備ではなく、何らかの調査・研究などで検索している可能性が高いのであえて画像を表示する理由はないということでしょう。

同様に、2009年4月下旬に「みなとみらい イベント」と検索すると、自然検索の4件目付近にみなとみらいで開催されるイベント情報(野毛大道芸、神奈川新聞花火大会、横浜開港祭など)が表示されますが、5月3日~5日の時点ではこれら地図は表示されませんでした。

このようにGoogleユニバーサル検索は、検索クエリと、コンテンツとの関連性、さらに検索トレンドや時事性など、様々な要因を総合的に判断して表示されるべきコンテンツが決定しています。従って、ネットショップを営んでいる方が自分の商品写真を関連クエリで掲載しようとがんばっても、クエリとその写真の適合性が十分でないと判断される限り決して表示されることはありません。

なお、検索上位に表示されるようにするための努力は無駄になりますが、一方で、関連性が高いと判断された時にきちんと検索結果に表れるように、検索性を高くする(ファインダビリティを高める)ための工夫を日常から行っておくことは、ずっと重要になります。コンテンツのファインダビリティを高めることにより、ユーザが本当に必要とする時に、皆さんが持つ関連性が高いコンテンツを検索エンジンを通じて届けられるようになります。たとえば、「豚インフルエンザ」という言葉は2009年4月23日を境に突発的に検索数が急上昇し、自然検索結果のブログやニュース検索枠に表示されるようになっています。この時、検索性が高いサイト構築をしておけば、タイムリーにユーザとコンテンツの情報マッチングが可能になります。サイト運営者は、自身のコンテンツをユーザに届けるために「情報を見つけやすくする(findable)、探しやすくする(searchable)」といった意識が求められます。

原稿は2009年5月5日時点のもの

執筆:渡辺隆広

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