2008年から順次、日本でも対象コンテンツを地図、ブログ、動画へと広げてきたGoogleユニバーサル検索を追う形で、日本の検索最大手・Yahoo!JAPANも同年11月から順次、"ユニバーサル化"を進めてきた。「タスマニアデビル」と検索すれば画像を、「スニーカー」と検索すればYahoo!ショッピングを、「ガンダムOO 動画」と検索すれば動画を、「ホテル 新宿」と検索すればYahoo!地図を、といった具合に、検索ワードに応じてウェブ検索結果中にその他のデジタルコンテンツを複合的に表示するようになった(いずれも2009年1月16日13:00時点の検索)。
※ ウェブ検索に様々なコンテンツが混在して表示する形式を、米国では一般的にblended searchと表現しているため、本稿もこれに倣い「ブレンド検索」と表記する。なお、ユニバーサル検索はGoogleのサービス名称である
GoogleもYahoo!もブレンド検索のUIは大差ないが、実は複合検索結果が出る確率はGoogleの方が多い印象だ。ためしにSEM総合研究所にて本年1月5日に、ユーザの多くが画像を求める、あるいは画像を表示することが望ましいであろう検索ワード40個にて、画像及び動画が表示される確率を両検索エンジン間で比較する調査を実施した。この結果によると、Googleは8割に対してYahoo!は3割の確率で動画または画像を表示した。
Yahoo!JAPANが低めになったのは、検索ワードに「画像」を含めなかったためだ。同検索エンジンは基本的に「画像」というクエリを含めなければ画像結果は表示されない。当然ながら画像クエリを含めれば表示確率は100%となる。ただ、検索ユーザの中には画像という言葉を含めると画像が手に入りやすいことすら知らない人も少なくないので、クエリから必要であろう情報を推し量り表示するGoogleが親切といえる。ただし、Googleはたとえば「こいのぼり 画像」と画像クエリを指定しても、画像を表示するわけではない。
それはともかく、現在のYahoo!JAPANのブレンド検索は、表示エリアがスポンサードサーチの上または自然検索の4番目という枠に限られているほか、特定クエリを入力しない場合は基本的に表示されない(例外あり)、Googleと異なり部分的なワード一致という理由だけでニュースを表示しないなど、全体的に見ると私の所感では2007年から地道に開発・改良を続けてきたGoogleに一日の長があるように思える。ただ、Yahoo!JAPANも今後チューニングを重ねていくことでクエリのインテント(検索意図)を推定し、それに応じた検索結果を表示するように改良されていくようになるのではないだろうか。
さて、検索結果の複合化・ブレンド化は世界的なトレンドの1つであるが、Yahoo!(US,JAPAN)にはGoogleにはできない強みが1つある。それは、自社で編集したコンテンツプロパティを持つことにより、検索と巧みに統合し、プロパティ間でユーザのトラフィックを流すことができる点だ。
たとえば、「レストラン 渋谷」で検索をした際、Googleはクロールで収集したページあるいはGoogleマップに登録されたお店へのリンクを表示するため、クリックした先で取得可能な情報や可能なアクションは店舗サイトに依存する。サイトの完成度が高いお店であれば料理の写真や予約の方法、営業時間など様々な情報が取得できるが、一方でテキスト文字しかないもの、ナビゲーションが不便なサイトも少なくない。
対してYahoo!JAPANの場合は自社で編集・整理したYahoo!グルメに誘導できるため、どのお店をクリックしても一定の情報をクチコミも含めて取得することができる。Googleはあくまで世界中のコンテンツをクロールして検索性を高めているだけに過ぎないが、Yahoo!のそれは検索と自社で保有し作り上げたコンテンツを一緒に提供できるため、ユーザ体験という観点で見ればYahoo!JAPANのそれが優れているともいえよう。Yahoo!JAPANは着々と自社プロパティとの連携を深めているが、こうした強みをアピールしていけば検索利用者数でまだまだリードを保ち続けることが可能ではないだろうか。
Yahoo!JAPANの取組みについてざっと説明してきたが、米国ではまた違った動きをしている。Yahoo! US はオープン戦略に基づいて、Yahoo!の検索インフラを活用して新たな検索サービスを開発できるYahoo! Search BOSS、ユーザが好みに応じて検索結果をカスタマイズできるSearchMonkeyなど、日本と異なり劣勢な立場にあるからこその挽回戦略をとっている。
Search BOSSはHakiaやMe.diumなどのソーシャル検索にも採用され、他にも新興検索エンジンがBOSSを使ったユニークな検索サービスを投入しつつある。SearchMonkeyも同社の発表によると検索結果のクリック数は上昇傾向にあるということで、それなりの成果は見えつつある。世界的にはGoogleが支配する検索エンジンだが、こうしたYahoo! USの取組みによって、(コストの関係で)日の目を見なかった新興会社による検索技術が登場することで、再びGoogleキラーと呼ばれる検索エンジンが多数出てくる日が来るのかもしれない。
執筆:株式会社アイレップ 取締役CSO SEM総合研究所所長 渡辺隆広
[2009年 新年特集]