SEMリサーチ

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多言語・多地域サイトを正しく検索エンジンに登録する方法

米Microsoftが公開した、新しいBing Webmaster Center FAQsに掲載されているFAQの紹介及び解説です。今回は、"How can I increase the ranking for a website hosted in another market?".

標的とする市場とサイトがホストされている市場が異なる場合、検索順位が低くなる場合があります。Bingは、ウェブサイトのIPアドレスやトップレベルドメインのリージョンコードなどの情報を参照して、サイトが掲載されるべき国・地域を判定しています。

FAQの文書は説明があまり親切ではないので、解説を行います。Bingに限らず、検索エンジン一般に適用可能です。ちょうどGoogleも "Working with multi-regional websites" というグローバルサイトの運営者向けの情報を公開しましたので、それもあわせて、専門家としての見解も交えて解説します。

地理・地域の関連性とは

これはサイトの場所・地理的な関連性(Location Relevance)の問題です。検索エンジンは、ウェブサイトやページの地理的属性を判定し、どの国・地域・言語との関連性が深いかを判定しようとします。たとえば「日本語」と「英語」のように言語を判定する、あるいは、同じ英語でも「英国」「米国」「シンガポール」の国属性の判定を行います。

検索ユーザの居住地や使用言語で、期待する検索結果は異なる

世界的に有名な企業、ここでは「SONY」を例にとって考えてみましょう。日本のユーザの多くは、GoogleやYahoo!の検索エンジンをgoogle.co.jpあるいはyahoo.co.jpから利用しています。これら日本ローカルな検索エンジンから「SONY」というキーワードで検索された時、検索エンジンはSONYの「どの国・言語」の公式サイトを1位に表示することが望ましいでしょうか?

google.co.jpやyahoo.co.jpを利用しているユーザであれば日本在住、日本語を利用するユーザであると推定できますから、sony.co.jp が最も関連性が高いでしょう。しかし、google.co.uk (英国)から検索された場合、英国在住、英国人が検索したと推定できますから、sony.co.uk を上位に表示する方が妥当です。

また、football というキーワードも、google.comとgoogle.co.uk は検索結果が異なります。米国と英国ではキーワードの意味が異なるため、対象とする国にあわせてランキングは調整され、望ましい検索結果を作り出します。

地域の関連性が低いと、ターゲットとする国で検索結果に表示されない

検索エンジンは自動的に、サイトが所属すべき正しい言語・国を判定しようとしますが、全てが正しく処理されるわけではありません。残念ながら、ウェブサイトの構築方法やアーキテクチャによって、サイトやページが所属する言語や国が正しく判別されず、したがってターゲットとする国や言語の検索結果に表示されないケースがあります。

過去に私は、(1) フィンランド在住の日本人が、日本をターゲットにした日本語サイトを開設したものの、www.google.fi(フィンランド版のGoogle)には表示されるのにgoogle.co.jpには表示されなかった、(2) 東南アジア諸国で事業展開する大手企業が、シンガポール向けの英語サイトを構築したのに、米国や台湾の検索エンジンでは表示されるのにシンガポール(google.com.sg)では表示されなかった といった事例を経験したことがあります。

それぞれ、取得したドメインや外部リンク施策に問題があったために、検索エンジンが各々のサイトの正しい国・言語を判定できず、結果としてターゲットオーディエンスが利用する検索エンジンにて検索結果に表示されない、という問題が発生していました。

地理的な関連性を最適化する

ターゲットとする国・言語にあわせてサイトを開設しても、想定する閲覧ユーザーが利用する検索エンジンで見つからないのでは全く意味がありません。「検索エンジンで見つからないサイトは、ネットに存在しないのも同然です」。英国向けに立ち上げたサイトであれば google.co.ukで、スペイン向けに立ち上げたサイトであればgoogle.esで企業名やブランド名をはじめとする関連語句で検索した時に適切に表示される状態を作らなければなりません。

では、検索エンジンに正しくサイトの属性を伝達するためには、何に注意すべきでしょうか。ここでは、検索各社が提供するウェブマスター向けツールを用いる方法以外の手続きについて紹介します。

Bingを含めて検索エンジンは、ページやサイトの言語・地域属性を判定するために、次の情報を判断するサイン(材料)として用いて複合的に判断します。

1. 言語

2. ドメイン

3. リンク

4. IPアドレス

5. その他

言語

ページやサイト全体で使用されている言語によって、どの言語に所属するかを判定します。たとえば、日本語で記述されていたら、google.co.jp で表示すべきと判断します。同様に、韓国語ならgoogle.co.kr で表示すべきでしょう。使用言語がわかれば、その言語を話す国に関連付けをします。言語はウェブページの言語宣言が明記されていれば(lang=jaなど)簡単に判定できます。

ただし、複数の国で使用されている言語(英語、仏語、西語など)の場合、どの国のローカル検索エンジンで表示すべきかを判定してあげる必要があります。理由は先に挙げた football の例が示すように、国(や言語)によって検索対照とするものが変わる場合があるからです。また、英国人が液晶テレビを購入するためにネットで情報収集するのであれば、検索できるテレビの情報は英国内で取り扱われているものを望むでしょう。

しかし、言語だけではどの国か判定できません。そこで、次のドメインとリンクを使って判断していきます。

ドメイン

ドメインについて話を進める前に、gTLDとccTLDについて説明しましょう。gTLDとは、generic Top Level Domain(ジェネリックトップレベルドメイン)、つまり.comや.net、.org、.infoなど世界の誰でも取得できるドメインを指します。一方、ccTLDとは Country Code Top Level Domain(国別コードトップレベルドメイン)、つまり日本なら.jp、韓国ならkrといった具合に国別に割り当てられたドメインで、基本的にその国のユーザーが利用できるものです(もちろん、.toなどのように世界の誰でも取得できるccTLDも多々ありますが)。

インターネットの黎明期である1990年代後半から.comや.netは国・地域・言語に関係なく世界中の誰でも取得・利用していましたから、gTLDは国判定に用いることはできません。日本人が作成した日本向けの日本語サイトでも、.comや.netドメインのサイトは山ほどあります。しかし、ccTLDは基本的には、その国・言語をターゲットとしたサイトを開設する場合に利用されるものです。したがって、『検索エンジンは、サイトが開設されているccTLDの情報をサインとして所属地域を判定しようとします』。

したがって、シンガポール向けのサイトであれば.sgを、ドイツ向けのサイトであれば.deといった具合に、ターゲットとする訪問者が日常的に利用する検索エンジンにあわせて、ccTLDを用います。

先に述べた言語や後述するリンクによって、サイトの所属地域を検索エンジンに伝達することはもちろん可能です。.jpドメインでも米国向けの英語サイトと認識させることは不可能ではありません。しかし、誤認識されるリスクも同時に抱えることになります。リスクを軽減し、円滑にサイトの所属地域を認識させるためには、適切なccTLDを利用することが望ましいです。

余計なトラブルを避けるためには、ccTLDを選択した方が良いでしょう。

なお、.comや.netなどのgTLDの場合、それだけで地域の判定はできないので、言語とこれから説明するリンクでもって判定します。

繰り返しますが、.comや.netなど世界中の地域で利用されているgTLDはその1つのサインを持って地域判定されることはありません。日本国内向けに日本語サイトを開設する場合に、.com よりも .jp が望ましいとする十分な合理的理由は全くありませんので、ご自由に選択してください。

リンク

あなたのサイトにリンクを張っているサイトやページの所属言語や地域から、あなたのサイトの言語や地域を判定する方法です。たとえば、英語で記述されたサイトでも、それに対するインバウンドリンク(外部リンク)の発信元の多くがシンガポールであれば、きっとそのサイトやページはシンガポールの人々に関連するものであると推定できるからです。英国内で中古自動車販売をするサイトに対して張られる被リンクは、米国やインド、イスラエルからのものではなく、同じ英国内のサイトからのものが多数を占めるはずだからです。

このことは、仮に.ccTLDが fi(フィンランド)で言語もフィンランド語であっても、外部リンクの多くが日本からのものであれば、そのサイトはgoogle.co.jp には表示されるけれどもgoogle.fi には表示されないリスクもあることになります。

とはいえ、どの国・地域のサイトからリンクが張られるかというのは多分にそのサイトのコンテンツと、それの対象とするオーディエンスによって適切なソースからリンクが張られるでしょうから、サイト運営者の意図とは違う形のリンクになることは「通常」ありえません。

"通常"といい加えたのは、たとえばSEO目的で悪質なSEO業者にリンク対策を依頼し、その業者が海外のサイトから大量のリンクを貼り付けてきた場合に、あなたのサイトの所属地域が歪められて掲載されないリスクがあるためです※。

したがって、特にサイトを立ち上げた直後の段階では、「その国のYahoo!など、ローカルなディレクトリ検索サイトに登録する」「言語や国が異なるサイトからのリンクは、組織上必要なリンクを除き、人為的に積極的に張らないこと」です。

組織上必要なリンクとは、たとえば世界各国別にサイトを開設していて、それぞれが互いにリンクさせる必要がある場合は当然リンクを張るべきです。通常の経済活動上、発生するリンクを拒む必要はありませんが、ランキング上昇目的にリンクを増やす場合は、原則としてターゲットとする国・地域に属するページからリンクを増やすように注意してください。どのサイトからリンクが張られるかコントロール不可能な手法(たとえば、検索エンジンに関する十分な知識のない業者が販売する、素性の知れない有料リンクなど)は避けましょう。

※ 一定の専門知識を有する検索マーケティング領域の専門家であれば、こうしたリスクが生じることは「常識的に行わない」のですが、残念ながら、日本国内ではいくつも問題が発生しているケースを確認しているので注意喚起。

IPアドレス

IPアドレスは地域によってわかれています。したがって「IPアドレスによってサイトの所属国を判定する」といいたいところですが、残念ながらこの要素はほとんど考慮されません。Googleは"Geotargeting factors"の2つ目に挙げていますが、IPアドレスの所属国と、そこで展開されるサイトのターゲット地域には何の関係もないことが多いため、疑問です。このシグナルを厳格に処理すると、検索エンジンの地理的な関連性が崩壊しかねないので、神経質になる必要はありません。

その他

サイトやページの地理的情報を判定する際に用いるシグナルは他にもあります。たとえばウェブページ上で記載されている住所や電話番号、使用している通過表記などです。また、詳細は省きますが、Google Webmaster Toolsjで地域・言語の指定を行っている場合はそれが優先されます。

多言語/多地域サイトの運用に最適なURL構造

検索エンジンの登録時に地理的・言語的な適合性を担保するためには、URL構造も重要な要素となります。ページ単位で標的の言語や地域を検索エンジンに伝達することはできませんし、検索エンジンも技術的にそれを効率よく処理することはできません。論理的なURL構造によって、対象の言語・地域ごとに分類を行うのが好ましいでしょう。

URL構造で標的言語・地域のセグメントを区切る方法は、Googleも紹介するように次の4つがあります。

1. ccTLD による分類

2. サブドメインによる分類

3. サブディレクトリによる分類

4. URLパラメータによる分類

グローバルにサイトを展開するということはすなわち、その多くの掲載目標とする検索エンジンは実質的にGoogleとなるでしょう(日本、台湾、中国など一部アジア地域除く)。そこでGoogle Webmaster Toolsで制御ができる、及び私の過去の経験的に適切な処理が行えたケース及びトラブルが発生したケースを考慮すると、1.と2.、ccTLDまたはサブドメインによるセグメントが適切です。

4. URLパラメータによる分類とは、たとえば location=japan や ?country=ja-JP などのパラメータを付与することで言語を切り替える方法を指しますが、これはページがインデックスされない、標的としたい検索エンジンに登録されないといった問題が発生しがちなのでお勧めできません。また、パラメータによる方法はGoogle Webmaster Toolsが使えませんので、欧米などGoogleが過半数どころか80%近くのシェアを握る地域では不利です。

地理的な関連性の最適化 まとめ

特に世界各国でサイトを開設している企業で、かつ検索エンジンからの集客を完全に無視できる合理的な理由がないのであれば、もっと地域の関連性の問題に目を向け、サイトそれぞれがターゲットとする訪問者が日常利用する検索エンジンにおいて、確実にサイトが検索結果に表示されるかを確認するべきです。大概の場合、ccTLDとリンクに特に気をつけることで、問題は解決するはずです。グローバルでは ○○○.com/国名/ などURLルールを設定しており、個別にccTLDが取得できないのであれば、外部リンクが適切にそれぞれのローカル域内から得られるように努力することで、問題が発生するリスクを最小限に抑えられます。

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