社内のSEO初級者向けの研修にて、いつもお話していることの中から1つ。今回は「Googleが本当にブラックボックスなのか」がテーマです。
たまーに、「検索エンジンの検索順位付けの仕組みは完全ブラックボックスなのだから、まともに SEO なんてできるはずがない、SEOは都市伝説だ」的なことをコメントする人をネットやリアルで見かけることがあります。無論、Google やその他検索エンジンは基本的に自社の検索アルゴリズムの詳細は公開していません。だから外部の人間がそれを事細かに把握することは難しいでしょう。
しかしながら、SEOを上手に実装するために、検索ランキングの仕組みを100%理解することは必要条件なのでしょうか?そもそも本当に検索エンジンの仕組みはブラックボックスなのでしょうか?
答えはいずれも否、検索エンジンの仕組みを100%理解する必要もなければ、ブラックボックスといえどもある程度の仕組みは理解することができます。1つ1つ丁寧に見ていきましょう。
まず第1に、SEOをする上で学ばなければいけないことは、検索エンジンがどのような視点でウェブページを評価しようと試みているのか、あるいは最終的に、検索エンジンはどういうことを実現したいのかを理解することです。SEOの担当者の目的は、検索エンジンをゼロから開発したり、Googleのコピーを開発しようとしているのではありません。Webサイトが検索エンジンというソフトウェアに理解・解釈しやすいように最適化することがお仕事です。
第2に、ブラックボックスといっても Google や Bing は宇宙人が開発したわけではありません。インターネットを通じて、瞬時に、欲しい情報が探し出せる、世界中の人に役立つ検索サービスを開発しようと、Information retrieval(IR、情報検索)の分野に精通した優れたエンジニアが開発しています。
従って、現在(将来)の情報検索の分野でどんな研究・開発が行われているのかを学べば、Googleがどのようなアプローチで検索精度を高めようと努力しているのかはある程度推し量ることが可能です。Google は確かに優秀ですが、情報検索分野の領域のトレンドを押さえていれば、正確に彼らが何をしているかはわからなくても、それを実現するために採用しているアプローチはおおよそ知ることができるのです。そして、SEO担当者にとってそこまでわかれば十分すぎます。
まとめますと、(1) 「Google(他の検索エンジン)のランキングがブラックボックスである」という前提は捨てること、(2) 検索会社の論理、ビジネスやサービスを理解すること、(3) 情報検索分野のトレンドを理解すること(表面的なことで十分)、となります。SEOのアプローチには正解はありませんが、検索エンジンが検索結果の関連性をより優れたものにするためにどのような解決策を用いているかがわかってくれば、SEO担当者としてより賢い最適化の施策を見いだせるはずです。
具体的にどの視点で検索エンジンの仕組みを学べばいいのかわからない、という方のために、参考までに社内で時折お話するトピックスをここに列挙しておきます。SEOに精通しているよ!という人にとっては当たり前すぎる簡単な項目かも知れませんし、自称プロを名乗っている方なら当然理解していることなのです。以下の例は、インターネット検索がリンクをどのような目的で参照し、それがウェブ(ウェブスパム)の変化にあわせてどのように進化していったのかを説明する際にキーワードとなる出来事・事象を列挙しています。
【基礎レベル:以下の項目をスラスラと説明できるようになること】
- PageRank登場以前の検索エンジンの仕組み(~1998年)
- Googleの登場とPageRank の仕組み(1998~1999年)
- PageRank の欠陥 (2000~2003年)
- "Googleキラー"と呼ばれた検索エンジンのアプローチ(Wisenut、Teoma、2000~2004年)
- フロリダアップデートと Hilltopアルゴリズム(2003~2004年)
- リアルタイムインデックス(2005~2006年)
- 人気度と重要度と信頼度(2007年~)
※ 上記の流れを理解できるようになると、「同じ歴史が繰り返されている」ことがよくわかるようになり、事細かなスパムフィルタリングやリンク評価の変化関係の話が「くだらない」と思えるようになるはずです