SEMリサーチ

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Googleペンギンアップデート2.0 傾向と対策

米Googleが先週実施した、検索エンジンスパム排除を目的とした、アルゴリズムの変更 - 通称「パンダアップデート 2.0」 - の影響範囲や内容について簡単に紹介します。これは日本語サイトを対象とした分析としています。

影響は小規模・限定的

同社Matt Cutts氏からの事前の説明などから今年最大のアップデートの1つになるだろうという予想もあったペンギンアップデート2.0ですが、ここ日本においての影響は限定的なようです。

検索順位1位~100位までの変動状況としては広範囲に観察されるものの、上位30位に限定してみると、順位変動の範囲・規模ともにそれほど大きなものではありませんでした。某業界の大手企業の検索順位が派手に大幅下降するなど、いくつかの大幅変動・下落を確認していますが、主要業界全体で見ると、決して多くはありませんでした。プラスマイナス10程度の小規模変動はちらほらありましたが、彼らのビジネス的にさほど影響はないと推察されます。少なくとも、昨年のペンギンアップデート1.0と比較すると、小規模に留まっています。また、過去の検索アルゴリズム更新時の変動幅と比較しても、今回は影響は小さめです。

影響を受けたサイトが駆使していたウェブスパムの例

ここがクローズドなサイトであればスクリーンショット付きでご紹介したいところですが、そこは自重しまして、Googleが無効化または評価を大幅に減衰したであろうリンクの種類について特色を紹介します。

◎外国語サイトへの被リンク設置:たとえば中国語やタイ語、韓国語など、日本語以外のサイトに、日本語キーワードをアンカーテキストに含めた複数のリンクを羅列しているケースです。実は昨年のペンギン時でも同種のリンクは Google により補足され、評価調整がされています。今回は"従来のアルゴリズムでは捉えきれなかったもの"を検出した印象です。

心当たりのあるサイト担当者の方、海外のリンクを購入するのはお勧めしません。日本製(というのかな?)でさえリスクがあるものに、どうしてハイリスクな海外のものに手を出すのでしょうか。

※ 補足(2013/05/30):言語が異なるページへのリンクが問題ではなく、文脈的な関連性なく異言語のアンカーテキストで張られているリンクの評価を変更したと推察しています。後述するように、単にキーワードリンクを並べただけのテンプレートの評価を変更した、という仮説もありうるのですが、その仮説では説明できない事例が中国にあり、ここでは「外国語サイトからのリンク」としました。以上の通りですので、決して、世界展開しているグローバル企業が、コーポレートサイトから世界各支店へ張るであろうリンク(=異なる言語サイトへのリンク)や、このサイトのように日本語記事の中で外国企業を紹介したときに張るようなリンクが問題になることはありません。インターネットの世界では異なる言語の情報源にリンクを張るようなケースは無数とあるわけで、そうした行為を Google が制限することはないからです。勘違いなさらないようお願いします。

◎テンプレート化されたリンク集を、様々なサイトに張りつける手法:検索順位を上げたいウェブサイトを複数並べた簡単なリンク集を作成し、それを世界中の様々な無料ブログや独自ドメインで立ち上げたサイトに張りつけて、被リンクを集める方法です。リンク集に含まれる1つ1つのサイトは、「タイトル(上位表示したいキーワード含)」「URL」「簡単な一行説明文」の三要素で構成されています。この3セットが10~20サイト並べられており、あちこちのサイトにコピーすることで、ターゲットサイトへリンクを積み上げていきます。

これは非常に古典的な手法ですが、順位変動状況を見る限り、Google はこれまでスパム検出ができなかったようです。これは私の推察ですが「見かけ上はデザイン的にもコンテンツ的にも、一応、”まっとうな”サイトの要件を部分的に満たしている」ことが背景にあるように思われます(スクリーンショットをお見せできないのが残念)。

一般的に、リンク集を活用したスパムというのはウェブサイトのデザインやコーディングにお金をかけることはしません。コンテンツも、適当な日本語を書くか、激安のバイト料で学生や主婦に適当に文章を書かせます。運用コストを最大限に下げて、出来上がってくるのは「どうでもいい日本語文章+リンク集+しょぼいデザインまたはテンプレートデザイン」のサイトです。しかし本事例では、パッと見た限り、一応、情報検索サイトや口コミサイト、コーポレートサイトなどの体裁を整えており、架空やダミーコンテンツが一応、それなりに構成されていたところに、ブラックハットSEO会社の努力が垣間見えます。結局 Google に見つかっちゃいましたけど(笑

◎1行文章紹介:これまたスパム業者に人気の手法で新しいウェブスパムではありません。無料ブログのアカウントを多数取得し、解説したサイトに、1行ずつ、全く脈絡のない文章を入れながら、キーワードにターゲットサイトへのリンクを埋め込んでいく手法です。

例)

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私は来週、埼玉 引越します。

いつかFXでお金持ちになりたいです。

今日は天気が良いので中古車を買いに行きます

…(以下、続く)

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上記の例では「埼玉 引越」「FX」「中古車」がハイパーリンクとなり、検索順位を上げたいサイトのURLを入れます。

◎品質が低い、またはシンジケーション展開型ディレクトリ:ここでいう「品質が低い」とは、掲載すべきサイトを選択していない、掲載可否基準が非常に緩いまたは存在しないディレクトリを指します。建前上有料や審査有を謳っていても、実質的にあまりよろしくないサイトまで掲載しているディレクトリも含みます。こうしたディレクトリは、ユーザーのためのディレクトリではなく「順位を上げたいウェブマスターのための、リンク供給減のディレクトリ」であり、それは検索アルゴリズム的に解析しても、著しく評価が低いサイトと判断されています。こうしたサイトからのリンクは無効になっているようです。

蛇足ですが、シンジケーション展開型ディレクトリ --- ディレクトリデータを他サイトにも配信して、「うちのディレクトリに掲載すると、数多くのドメインからリンクが集まります」的なディレクトリ --- 、これもコンテンツが重複しているので、あまり効果は期待できません。

◎内容が乏しいページからのリンク:これは検索順位不正操作目的のウェブスパムリンクではなく、"自然発生的に生まれたリンクだけれども評価すべきでないリンク"に対する調整です。ページの重要度を推し量る上でシグナルとして用いるには適当ではないので、評価するのはやめましょうということです。サイト運営者自身がコントロールできるものではなく、また、こうしたリンクが皆さんのサイトに何らかの害(例えばスパムと認識される)が発生することもありませんので、心配無用です。

ペンギンアップデート1.0の強化版?

今回は、私が用いる判断基準的に「それほど大きな影響は出ていない」という結論を出しているため、あまり大量の個々の事例分析は行っていません。しかし、特に大ダメージ(高順位からの大幅転落グループ)を受けたサイトに限ってみると、おおよそ上記のような感じでした。つまり、日本は前回ペンギンアップデートの正当進化・強化版といったところでした。

ただし、今後まだリンク分析アルゴリズムの強化もロールアウトが予定されています。また、上記の通り 今回は(影響が)控えめになるようしたみたいですので、今回大丈夫だったからといって安心してはいけません。もしかしたら、これからが本番かもしれません。

対策:まじめにやってください

  1. SEOを外注するなら、相手の信頼度をよく考える:残念ながら、何の倫理観もなく、検索順位を上げることのみを目的として悪質な手法を用いるSEO会社というのは存在します。ここ日本では、かなりの確率で、そういう会社に遭遇するはずです。悪質SEO会社にひっかからないように、そのSEO会社に依頼したらどういう作業をしてくれるのか説明を求め、その内容を理解して下さい。納得できないのであれば、発注しないで下さい。
  2. 安全性ばかりをアピールするリンクサービスに注意:技術的な安全性ばかり主張しているリンクサービスは、その安全性を疑って下さい。技術的な安全性の強調は、「私たちはGoogleにバレないよう努力しています」という意味です。バカ正直に安心と受け取らないで下さい。例えば IPアドレスの分散性や、リンク増減の時間軸などをテクニカルな話ばかり持ち出している場合は注意して下さい。本質を理解しているSEO会社は、そんなどうでもいい事柄をアピールすることはありません。
  3. 自分で自社サイトへのリンクをチェックする:私は何度も繰り返しいいますが、SEOで「外注に丸投げ」はやめて下さい。Googleからウェブスパムの通告が来た、検索順位が全く上がらなくなったと相談される企業の中には、自社サイトへのリンクを把握していないことが少なくありません。定期的に、どのようなサイトやページからリンクが張られているのかを確認して、不適切なリンクを発見した場合に対応するといった「リンク監査」を行うことをお勧めします。仮に、変なSEO会社にひっかかってしまった場合でも、リスクを未然に防ぐことが可能かもしれません。
  4. 初歩的なウェブスパムを学ぶ:ペンギンアップデートでひっかかるようなウェブスパムは、とても古典的で古くから存在する手法です。正直、こんな手法を未だに使っている会社がどうして存続できるのか私には理解できません。最低限のSEOの勉強もしないで、順位を上げることだけを考えて駆使している手法なのでしょう。ですから、SEOをするのであれば、「やってはいけないこと」も同時に学んで下さい。SEOは依頼する側にもスキルが必要です。
  5. リンクをどこかからお金で買う、という発想を捨てて下さい:リンクは購入するものでもなければ、第三者に増やすよう依頼するものではありません。リンクは信頼や評判の証として自然に積み上げるものであり、それを構築できるのはサイト運営者であるあなた自身が本来行うべきことです。

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今回のペンギンアップデートに「捕まった」サイトの運営企業の多くは、きっとSEOを(現在または過去に)外注していたことでしょう。

SEOというのは、サイト構築や運営を通じて、検索利用者や検索技術に適応・最適化を積み重ねていく仕事です。サイト運営とSEOを分離することは決してできないのです。

しかし現実には、SEO、とりわけ外部リンク構築とサイト運営を別個のもの、前者を広告・販促的なもの、後者をウェブ制作と認識している担当者は少なくないでしょう。しかし、その認識が根本的に間違っているんだ、ということをまず理解して下さい。

そもそもの話、リンクは重要なデジタル資産であり、その所有権は企業に属するものです。長年積み重ねていくことによって、検索エンジンもそのサイトの信頼性を評価していくのです。それを広告の固定費として扱うということは、それをストップすると同時に資産もゼロになり、そのサイトの信頼度や重要度の評価も(広告費として扱った分は)ゼロになってしまうのです。それはおかしいと思いませんか。

また、リンクは「関係性の構築・最適化」によって自然と獲得するものです。関係性とは、インターネット上のユーザーやメディア関係者、企業の取引先・販売代理店など、様々な人々との関係性や信頼性を高めつつ、対話を通じて支持や信頼(=リンク)を自然に獲得していくというのが本質です。このように書くと抽象的で難しい話のように思えますが、要は「ちゃんとサイト運営をしてみろ」という話なだけです。ただ、無駄にコンテンツを増やすのではなくて、顧客は何を求めているんだろう、まだ自社にの商材に興味すらもっていない層に、どうやってちょっと関心をもってもらおうか、そこから考えて行動に移せばよいのです。繰り返しますが、サイト運営とリンク構築を全く別物と捉えるその認識を改めましょう。

無論、「そんなのんきなこといってられないんだよ」「それは理想論だ」という反論があるのは重々承知しています。一方で、瞬時にリンクを増やしてくれる業者に依頼することで、サイトそのものが検索上位に全く表示されなくなるリスクが高まるのも理解しているはずです。このまま Google といたちごっこを続けて、ウェブスパム判定される度に別の手口を延々と探し続けることの方が、無駄なコストではないでしょうか。

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