グーグルが日本国内の複数のディレクトリサイト運営会社に対し、同社のガイドラインに違反した行為が行われている旨の通知を行っているほか、一部の悪質なサイトには制裁を科している模様だ。[関連:[解説] なぜGoogleはディレクトリ登録サイトにnofollowを加えるよう通知したか]
対象は、表向きは審査型の(有料)ディレクトリ登録サービスを標榜しながら、実質的にSEO目的のリンクを販売しているディレクトリ運営会社。これらの会社はディレクトリの提携サイト数の多さや PageRank の高さ、SEOに最適な複数のテキストリンクを設置できるなどをPRして積極的に営業。料金はYahoo!ビジネスエクスプレスよりも多少安めの金額を設定していた。
すでに某S社が運営していたディレクトリサイトは掲載サイトのリンクにnofollowが付与されており、(掲載企業にとっての)SEO的な効果がゼロになっている。ディレクトリからの外部リンク獲得を期待して審査(掲載)料を支払った企業にとっては残念な結果であるが、少なくとも nofollow が付与されたことでマイナスの影響を被ることもなく、その点は安心だろう(?)※。
※ もともと効果が薄かったはずなので影響はないはず
別のS社の運営するディレクトリも同じくnofollow が加えられていることを確認した。同社のディレクトリの提携サイトの一部はすでに PageRankが下げられたり、一部のページが正常に登録・表示されない状態となっていた。この会社は別メニューで大手メディアサイトのドメイン配下に顧客が自由にコンテンツ(リンク)を発行できるサービスを提供しているが、こちらも Google から何らかの指摘が行われた模様ですべての発リンク(外部サイト=SEOで順位を上げたいであろうページ)に自動的にnofollowが加えられている。もともと提供開始当初からSEOのメリットをアピールしていた同社の商品は、nofollow の追加とともに商品メリットが完全に失われたことになる。ただし、本案件も Google は最初から大した評価をしていなかったはずであり、顧客への影響は軽微と推定される。いずれにせよ、典型的なブラックハットSEO商品がグーグルによって排除されたことは、ユーザーに提供する価値で勝負したい、まともなウェブマスターにとって朗報であろう。
F社が運営するディレクトリのケースでも PageRank がゼロあるいは付与されない状態に変更されていることも確認できた。こちらも一部の提携サイトはGoogleのインデックスから外れている。このディレクトリ提携ネットワークは数ヶ月前から一部の提携サイトがディレクトリデータを丸ごと削除するなどGoogleから何らかの指摘があったことをうかがわせる動きもあるが、今のところ外部へのリンクに nofollow を加えるなどの措置は行っていない。
その他、比較的新興の複数のディレクトリサイトは Google にインデックスすらされていないが、これらは有料リンクの販売が問題なのではなく、低品質なサイトをネットワーク化していること自体に問題があったと推察される。一部の会社は自称SEO専門家を名乗る人物の声を掲載して登録時のSEO効果を訴求していたが、現在は削除されている。
主要なディレクトリ登録サービスを提供するサイトを確認する限り、客観的に見て問題がありそうなケースでも現時点(10月11日19時)で特に何の対応も行っていないサイトもある。Googleから何らかの通知があったけれども未対応なのか、あるいは何のお咎めも受けていないのかは不明だ。ただ、時期を同じくして複数の(問題ある)ディレクトリ運営会社が対応を迫られていることから、グーグルが"ディレクトリを装った不正なリンク"を排除するための対応を積極的に進めていることが窺える。
[UPDATE 01] ディレクトリ登録サービスの販売代理店を行っていたアッカ・コミュニケーションズLLC(名古屋市)がSEO事業からの撤退を同社公式サイトで明らかにしている(2013年10月16日付)。同社は企業サイトをディレクトリに掲載するディレクトリ登録商品を扱っていたが、Googleが一部のディレクトリの掲載モデルを問題視し、SEOの効果が事実上ゼロになったことで同商品販売継続が困難と判断したものと推察される。
[UPDATE 02] LINE Business Partners株式会社が同社のディレクトリ登録審査サービス「Jエントリー」及び「Jエントリーモバイル」の新規登録受付を停止した模様だ。2013年10月25日現在、公式サイトに『現在新規申し込みの受付を停止しております。』との告知が掲載されている。2014年7月31日にJエントリー及びディレクトリサイトの終了・閉鎖。
[UPDATE 03] ソネット・メディア・ネットワークス株式会社が運営するディレクトリ登録サービス「BPNディレクトリ」が新規申込受付を停止した。2013年10月27日現在、同社の公式サイトには『現在新規申し込みの受付を停止しております。』との案内が掲載されている。BNPディレクトリの管理・構築及び代理店窓口はLINE Business Partners株式会社。2014年8月31日サービス終了。
[UPDATE 04] ディレクトリ登録サービスの代理店・株式会社アイフラッグは2013年10月30日、同月をもって「Jエントリー」「BPNディレクトリ」の取扱を一時中止すると発表した。また、「iディレクトリ」「プロバイダーリンク」は取扱を終了する。Googleがディレクトリ各社にnofollowを加えるよう指導したことに伴う対応の模様。
[UPDATE 05] 株式会社フルスピードが2013年11月25日、同社運営のディレクトリ「プロバイダーリンク」の発リンクにnofollowを加えることを発表した。同社のディレクトリも運営歴の長い全国のISP(インターネット接続業者)のサイトを中心にネットワークを形成していたため、Googleから有料リンクと認定されたことを受けての対応と思われる。
[UPDATE 06] 株式会社フルスピードが、2014年2月末を持ってプロバイダーリンクを閉鎖すると発表した。事業継続が困難と判断したと思われる。
[UPDATE 07] GMOアドパートナーズ株式会社が運営するディレクトリ「SASOU Directory」(サソウディレクトリ)が新規登録受付を停止。またディレクトリに掲載されている各サイトへの発リンクにも nofollow が加えられた。
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事実上、Yahoo!ビジネスエクスプレスもどきの有料登録ディレクトリビジネスは終了となりました。
以前、うっかり有料審査型スパムディレクトリに登録しないために - (今更) SEOとディレクトリ登録の歴史の記事で警告した通り。だいたい、2005年前後の「ODPクローン」(DMOZクローン)問題によって、提携サイト数の多さとリンク評価は比例しないことが明らかになりましたし、その後、ディレクトリ登録とは数多くのリンクを獲得することが目的ではなく、信頼のおけるリンクを(1本)獲得することに意味がある(あった)と言われるようになったわけですから。こうした過去の歴史を見てきた人であれば、この結果は容易に予想ができたことでしょう。
ちなみに、上記の件から、「Yahoo!ビジネスエクスプレスも危ないんじゃないか」と、意味不明な憶測を述べられる方がいるのですが、全く的外れです。理由がわからない方は、Yahoo!カテゴリが生まれた経緯(Jerry's Guide to the World Wide Web や Yet Another Hierarchical Officious Oracle の話)をさかのぼってみてください、それが理解できれば上記の話と Yahoo!カテゴリの違いもわかると思います。ジェリー・ヤンとデビッド・ファイロがインターネットの情報を効率よく探せることを目指して作った Yahoo! (Yet Another Hierarchical Officious Oracle ) と、リンクを販売することを目的にネットワーク化されたディレクトリを一緒にするのは Yahoo! に失礼です (UPDATE:このあたりの事情がわからない方も最近は増えてきたのかと思い知らされたので、ディレクトリ登録と有料リンク問題 海外事情という記事も補足記事として追加しました)。 あ、ただ…(以下略
個人的に興味があるのは、Googleが具体的にどの個所が問題だと最終判断したのかということです。多数のゴミレベルのサイトを連結してリンクネットワークとしている点なのか、ディレクトリページそのものの品質を問題にしたのか、それとも実質的な有料リンク販売モデルである点なのか、などなど、このビジネスは突っ込みどころがたくさんありましたので、Google 的にはどこを問題視したのかは知りたいところです。