SEMリサーチ

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検索エンジンとコンバージョンに差が出る要素

検索エンジンマーケティング(SEM)において ROI を最大化させる際のキーワードの1つが「コンバージョン」。コンバージョンを左右する要素は様々ありますが、ここではサイトに到達する前に影響する要素である検索エンジンサイトとキーワードについて話をしましょう。

検索エンジンマーケティング(SEM)の特徴はキーワードによってピンポイントに見込み客にアプローチができると共に探し求めている情報に対する興味・関心の高いユーザーを誘導できることから費用対効果(ROI)に優れたマーケティング手法だと言われます。さて、この ROIを高める、つまり「投資金額に対する見返り(リターン)を増やす」ためには、誘導した顧客に対してアクションを起こしてくれる割合、つまりコンバージョンを高めることが重要になります。

SEM のことを勘違いしている方がいるのですが、検索エンジンを利用して顧客を誘導するだけで ROI が高くなるわけではありません。特に最近は「SEO をすると売り上げが増えるらしい」という中途半端な知識で SEO に取り組むために全く成果が上がらないと嘆くオンラインショップの方の声を聞くことがあるのですが、残念ながら SEO 「だけ」やれば売り上げが増えるものではありません。

SEO も PPC も、バナー広告やメール広告と比較してより絞り込まれた顧客にアクセスできるという点では優れているのですが、あくまで SEM は検索エンジンから顧客をWebサイトまでつれてくるのが役割ですから、サイトに訪れた人が実際にアクションを起こすかどうかはサイトの作りにもよります。

たとえば、あるユーザーが検索エンジン経由であるWebサイトに訪れてある商品を購入するまでには次のステップがあります。

1.Google で検索

2.検索結果を閲覧

(あるサイトをクリック)

3.サイトに訪れる

4.ページの説明をみる

(リンクをクリック)

5.ページの説明をみる

6.ショッピングカートに入れる

7.注文画面:個人情報の入力

8.注文画面:お支払い方法の入力

9.注文画面:最終確認

10.注文の完了

このようなステップをたどります。すると、1〜10各ステップに移動するユーザー数は変化しますので、ステップごとにコンバージョン率は変わることになります。たとえば個人情報の入力画面まできたけれども、入力する項目が多すぎるから買うのをやめた、であるとか、9.の注文の最終確認画面にきたけれどもここで初めて送料がいくらかかるのかがわかり、その金額が高いからやめる、といったケースは少なくありません。実際 米Gardner Group の調査によるとWebサイトに訪れても50%は途中で購入するのをやめるといった結果も出ていますので、様々な要因で(購入の意向があったとしても)やめてしまうことはあるわけです。

話が大きくそれてしまいましたが、このようにサイトの作り方によってコンバージョン率は変わるわけですが、サイトにつれてくる前の時点、つまり上記ステップでいえば1と2のところでもコンバージョンに影響を与える要素があります。それがキーワードと検索エンジンサイトです。

まずキーワード。Webサイトに訪れた時のリファラーキーワード、つまり訪問者が検索エンジンで利用したキーワードによって、最終的にアクションを起こしてくれる割合は異なります。例えば新潟産コシヒカリのお米を販売しているサイトでも、そのサイトを訪れた時に「お米」というキーワードでやってきた訪問者と、「お米 新潟産 コシヒカリ」でやっていた訪問者、そして「お米 新潟産 コシヒカリ 安い」というキーワードで訪れた訪問者では、最終的にお米の購入に至る割合は異なるのです。キーワードには情報探索者のニーズや購入意向が反映されているため、一般的にはより特定した情報を探し求めているユーザーの方がコンバージョン率は高くなります(そうではない時もあります)。

SEO や PPC広告を利用している方々でも、アクセスログをみながら「どのキーワードでの訪問者が多いのか」といったところだけに注意がいきがちですが、それだけでは不十分です。訪問者が利用したキーワードごとに、サイトに入ってきてからどのように移動しているのか(クリックストリーム)、最終的に注文完了まで至った割合が高いのはどのキーワードなのか、といった点にも関心を寄せなければいけません。

次に、検索エンジンごとに購入に至るまでのコンバージョン率が変わる、という点にも注目して下さい。米国の調査で最もコンバージョン率が高い検索エンジンは AOL であり、Google や Yahoo! は5位以内に入らないという調査結果が出ています。この統計は、検索エンジンごとにコンバージョン率が異なることを表しているのですが、なぜこのような違いがでるのかを考えましょう。特に AOL が採用しているアルゴリズム検索は Google です。同じ Google 検索エンジンを使いながら、なぜ AOL と Google ではコンバージョン率が異なるのか。

これは検索エンジンごとに利用者層が異なるからです。テレビで朝7時に同じニュースを流していても、NHKの視聴者とフジテレビの視聴者とTBSの視聴者が異なることと同じです。検索エンジンやポータルサイト、Yahoo!、Google、MSN、NAVER、infoseek はそれぞれ同じ検索サービスを提供していても日常使うユーザーは異なります。この閲覧者層の違いそのものがコンバージョン率の変化を生み出します。

また、この検索エンジンおよびポータルサイトごとの閲覧者の違いはそのままキーワードごとのコンバージョンにも影響を与えます。つまり、全く同一のキーワードであっても、そのキーワードが検索された検索エンジンまたはポータルによってコンバージョン率は変わってくるということです。

例えば同じ「お米 コシヒカリ 新潟産」というキーワードを使ってアドワーズ広告とオーバーチュアを利用すると、コンバージョン率に差が出てきます。これはアドワーズ広告のターゲット範囲とオーバーチュアのターゲット範囲が全く異なる上、Google では広告と検索結果が完全に分離されていることなど様々な要素が絡んでいます。

従って、先ほどキーワードごとのコンバージョン率に注意しようと説明しましたが、そのキーワードがどの検索エンジンまたはポータルで使用されたのかという点にも注意しないといけません。

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