Amazon.com がeコマース検索技術開発会社 A9 を設立し、Yahoo! が商品検索エンジン "Yahoo! Product Search" を、Ask Jeeves が同じく "Smart Search" の提供を開始。Google も Froogle のベータ版を公開しています。検索エンジンやeリテーラーが商品検索エンジンの開発に乗り出している背景は?
ユーザーが検索エンジンを利用する際の目的はその用途に応じて次の3つに分類されると言われます。
1つは「情報」。つまりある特定の情報について詳細を知ることを目的とした用途です。例えば北朝鮮の軍情報について知りたいユーザーは「北朝鮮 軍事」などと入力することで、北朝鮮に関する情報にたどり着くでしょう。
2つ目は「案内」。これはある特定の企業や団体のWebサイトにアクセスすることを目的とした用途です。例えば「外務省」「米国防省」と入力するユーザーは、それぞれに関する情報が知りたいというよりもむしろ、それぞれの公式サイトに到達したいために検索していることでしょう。
3つ目は「取引」。これは検索エンジンで探し出したサイトで何らかの取引、例えば資料請求や商品の購入などを行うことを目的とした用途です。例えば「デジカメ 富士フイルム」や「メルトンスタンドカラーコート」といった検索を行うユーザーは、きっと商品購入をするために検索をしていることでしょう。
さて、話を本題に戻しましょう。商品検索エンジンの開発に相次いで乗り出しているのは、これらの検索エンジン用途のうち、3つ目の「取引」を目的として検索エンジンを利用するユーザーが急激に増加していることが背景にあります。
業界の推計では、一般の検索エンジンを利用して製品やサービスに関する情報を探すネットユーザーが 40%もいるといいます(ZDNet)。Nielsen//NetRatingsの調査では、比較ショッピングインデックスを利用するユーザーが2002年の9%から2003年には15%近くまで増大しています(同)。
従来、インターネットの消費者はまず小売業者やショッピングモールにアクセスをして、そこで商品検索を行い購入に至っていました。つまり商品検索をする以前の段階で小売業者は選定されています。そこで小売業者は何とか自分のサイトの認知度を上げると共に消費者を誘導することに努力をしてきたわけです。
しかし現在の消費者は検索エンジンで見つけた小売業者を通じて欲しい商品を購入する傾向が非常に強いのです。つまり、オンラインショッピングの出発点が「小売業者」から”上流”に位置する「検索エンジン」に移っていることを意味しています。
現在では Google が検索エンジンシェアの数字から見てもわかる通り圧倒的な強さを誇っています。ショッピングに至るまでの主要経路を Google に完全に牛耳られることは、Amazon.com を始めとするオンライン小売業者や Yahoo! にとっては戦略が全て Google によって規定されてしまうという非常に危機的な状況に追い込まれてしまいます。このような市場の変化から、Amazon.com や Yahoo! が商品検索エンジンの提供に乗り出してきたわけです。