SEMリサーチ

企業で働くウェブマスター向けに、インターネット検索やSEOの専門的な話題を扱います

企業ブランド・評判の視点から考えるSEM戦略

マカフィーが2007年6月に発表した「検索エンジンの安全性に関する調査報告」で全検索結果の4.0%が危険なウェブサイトにリンクしているとの調査結果がある。検索結果は消費者にとって危険であることを示すデータだが、実はビジネスを展開する企業も、検索結果に目を向けておかなければならないポイントがある。それは自社の評判やブランドにかかわる「評判管理」といわれるリスク問題の対処だ。

検索結果に無関心な企業

かつて取引したこともなく面識も全くない企業が、交通広告であなたの企業のブランドを勝手に利用して大々的な宣伝を行っていれば、必ず問題視するはずだ。同様に、発展途上国であなたのブランド力を利用して勝手に模造品を製造して販売をしていれば、それを許容する企業はいないだろう。

ところが同様の行為を検索エンジンを通じて行う企業がいても、それを認知・把握している日本の企業は残念ながらほとんどいないのが実情だ。米国ではいくつかの専門企業が評判管理(一般にReputation Managementと呼ばれる)専門のサービスを提供しており、クライアントの企業名や商品ブランドで検索した時に、違法行為を行っている企業がないか、ブランドを既存するWebサイトの存在有無を監視している企業がある。

こうしたサービスが登場する背景には、実際にブランドを悪用する企業が後を絶たないためだ。例えば、ブランド名称のドメインを取得した上で、そこに手段を問わないSEOを行う。"手段を問わない"すなわち、いつか検索エンジンに見つかれば排除されるだろうが、アルゴリズムの脆弱性をつくことで一時的には確実に検索上位に表示できる手法を用いることで、難なく他社のブランドで検索した時に、ブランド保有企業よりも上位に表示する。これによってトラフィックを奪う行為が横行している。

筆者が知る限りこの手のことが日本で話題になる(少なくとも、複数のブログが指摘しているような状況)はお目にかかったことがないが、日々発生している。

最近把握したケースでは、とある企業が新たにマッチング広告を開始した時に、アフィリエイトサイトを募った。ところが、アフィリエイトを募った対象がSEOをよく知り、小遣い稼ぎに力を入れるアフィリエイターが中心だったためだろうか、ブランドを含んだドメインを勝手に登録するなど一般的には許容されない手法が横行し、そのアフィリエイト主催会社のブランド検索時に検索結果を”ジャック”してしまった(検索結果ジャックとは、特定のキーワードで検索した時に検索結果ページ全体を特定の個人・組織が運営するウェブサイトで埋め尽くしてしまうこと)。

この時、誘導先ページがその(ジャックされたブランドの)企業に誘導されるのであれば実質的な実害はないのだが(検索エンジンから見ればスパムで汚染された被害と捉えるだろう)、残念ながらそのリンク先ページでは類似サービスへのリンクもたくさん紹介していた。たとえ話で説明すると、「iPod」と検索してたどり着いた先でソニーのウォークマンの紹介で埋め尽くされていたといったらわかりやすいだろうか。

英Neutralizeが発行したサーチとブランドに関する調査より。ブランドに対する不適当な検索結果が表示された割合を示している。ブランドについての誤った説明や情報はCGM(消費者が発信するメディア)が膨大になった今日においてはもっと増加しているはずだ。それらを分析してマーケティングデータとして活かすというアプローチとは別に、これらの間違った認識・情報をどう整理していくかも課題となっている。

「ブランド名」で表示させない企業も問題

上述したケースは、ブランドを悪用したサイトが悪いわけだが、ブランドを保有する企業側に問題がなかったわけではない。実はこの企業、サービス開始当初から2ヶ月ほどの間、ブランドで検索してもその公式サイトが全然上位に表示されなかったのだ。そのブランドは一般名詞ではなく固有の言葉を用いていたため、必要最低限の検索エンジン対策を実施しておけば難なく1位に表示させることができたはずだ。しかしその最低限の対策すら行わなかったために、他のサイトに検索結果を占拠されてしまったのだ。

企業名や商品名、ブランドの多くはナビゲーショナルクエリ(navigational query)に属するもの、つまり特定のWebサイトへ到達することを目的に行われる検索だ。例えばNHKと検索したユーザーの大半は、NHKに関する何かの情報サイトにたどり着きたいのではなくNHK公式サイト(www.nhk.or.jp)に到達することを目的に検索をしている。先の例では、ブランド検索時に企業公式サイトを1位に掲載できれば、ブランド侵害による損失は最小限に抑えられたはずだ。

「アフィリエイト」の取り扱いポリシー

アフィリエイトマーケティングと平行して検索マーケティングも同時に実施している企業は少なくない。検索連動型広告で問題になるのはアフィリエイターに対するブランドキーワードの取り扱いだ。

ブランドキーワードは次のグラフで示すようにSEMキャンペーンでカバーすべきキーワード全体から見ればほんの数%しか占めないが、コンバージョンは相対的に生まれやすいキーワードだ。これは消費者の検索行動の連続性(1回の検索では答えが得られず、目的を達成するために何回かの検索を繰り返す)、購買プロセスが進んでいけばある程度購入対象商品・サービスも絞り込まれるため、検索キーワードも特定のブランドになりうるためだ。

キーワード種類ごとのボリュームとコンバージョンの関係

問題はこれらブランドキーワードをアフィリエイターにも開放し、検索連動型広告で自由に活用させるべきかという点だ。これについては企業によって対応は分かれている。

例えば入札禁止キーワードを指定してアフィリエイターに周知徹底させている企業もある、一方で完全自由に入札を行わせている、あるいは全くガイドラインを示していない企業もある。前者はブランドキーワードの入札価格高騰防止や、SEMとアフィリエイトの”二重課金”を減らすことを主目的としており、基本的には筆者もブランドキーワードについては自由に入札させることはおすすめしない。アフィリエイターの数が多くなれば、アフィリエイトサイトの品質が著しく低く、ブランドと接触させた時に統一したイメージを伝えられない、むしろ低いウェブ体験を与えかねないリスクも発生するからだ。

またブランドキーワードはある程度利用対象を絞り込んでいるユーザーと多くの場合想定されるため、わざわざアフィリエイトリンクを踏ませてコンバージョンを発生させることで、SEM費用とコミッションを二重に支払う必要もなかろう。

「ビリーズブートキャンプ」で検索。複数のショップサイトで販売される商品は、A社で購入したい人もいればB社で購入したい人もいると考えられるため、取り扱いショップに対してキーワードを開放するのは問題ないだろう。しかしアフィリエイトサイトについては販促戦略を踏まえてよく考える必要がある

ブランドの表記ゆれにも対応

あるブランドの名称を知っているからといって、そのブランドのWebサイトを閲覧した経験があるわけではない。これを利用したのがブランドキーワードの入力間違いや表記ゆれを利用した自然検索対策だ。例えば「楽天市場」というのは「らくてん」と検索されることもある。ところが「らくてん」と検索するとGoogleが表示する検索結果は誤入力を狙ったアフィリエイトばかりだ。このケースは最終的に楽天で購入は生まれるかも知れないが、コンバージョンが生まれるかどうかという次元ではなく、ユーザーにどんなショッピングを体験させたいかという観点できちんとブランドキーワードでは自社公式サイトに誘導させるような対策は行っておく必要がある。このケースは「楽天」は十分に認知されているブランドであるため実害はないかも知れないが、現実はそうでないケースの方が多い。

ブログ普及による著作権の侵害

ブログの普及やRSSフィードの登場によって著作権管理についての新たな問題も発生している。これも企業側がきちんと注意を向けるべき問題だ。

頻繁に見られるのがニュース系サイトに投稿したコラムなどの執筆記事がブログに無断で全文投稿されるケース。また、そうしたニュースを多数集めてあたかも自らがオリジナルパブリッシャーであるかのごとく振る舞い、トラフィックやリンクを集め、ウェブページに貼り付けたコンテンツ連動型公告やアフィリエイトによって収入を獲得していくというビジネスもある。通常、著作権法の範囲内での引用は認めても全文転載は特別な理由がないため認めてはいないはずだ。

また、悪質なケースではコピーしたページをソーシャルブックマーク(ソーシャルニュース)に投稿したり、フィードで配信することで検索結果をジャックする(この場合、コンテンツを掲載したオリジナルサイトではなく、コピーした側のサイトが検索上位に表示されるという意味)こともある。

Yahoo!ニュースの記事にトラックバックをしたブログ。全文掲載をしているブログは少なくない。MovableTypeやWordPress、無料のブログサービスによって手軽に自分のホームページを発行・公開できるようになったことが背景にある。

「○○~で検索」の誘導先を操作する

テレビCMや雑誌などで「○○○で検索」とキーワードを見せてウェブに誘導する手法が一般的になった。これも企業側の認識不足ゆえに当初の狙いとは異なり問題を招くこともある。

以前、ある銀行がテレビCMで誘導したキーワードで実際に検索を行ってみると、その公式サイトが1位ではなくキーワードと同名の同人サイトが表示されることがあった。また、テレビCMでの検索数上昇を見越してMFAサイト(検索経由で安価にユーザーを誘導し、誘導先ページに掲載した公告をクリックさせることで収入を得ることを目的に作成されたサイト)を構築しているケースもある。また、特に悪意の第三者が特別な施策をしているわけではないが、CMで指定したキーワードで該当サイトが全く掲載されていないケースも少なからずある。

○○○で検索という手法は他の広告と流行のSEMを結びつけてオフライン→オンラインへの誘導が上手に行えると考えてしまうようだが、それを実現するなら指定したキーワード及びテレビCMを見たユーザーが興味を持ちウェブサイトにアクセスしようと思った時に想起するキーワード(つまり、CM上の何らかの情報が手がかりになるはず。例えば登場した女優名とか)で広告/自然検索問わず最上位に表示させ、検索行為まで誘導したユーザーを確実にキャッチする施策が求められる。

特に自然検索は、キーワードブランドの所有者を問わず誰でも最上位に任意のウェブサイトを表示できてしまうというリスクを認識した上で対策を行わなければいけないのに、残念ながらそこまで考えていない企業も少なからず存在するのが実情だ。

東京ディズニーリゾート「タワーオブテラー」のキャンペーン。CMで誘導している ToT で自然検索/広告ともに最上位に公式サイトを表示している

企業にとってのネガティブな情報

検索結果の全てのリンクが企業にとってポジティブな情報であるわけではない。当然ながら、あるブランドを賞賛する人もいれば否定的な人もいる。両者の意見が存在することは当然なので、すべての情報を統制することは不可能であるという前提は踏まえるにしても、少なくとも検索結果の上位にネガティブな情報ばかりが並び続けるのは喜ばしいことではない、というのが企業の心情であろう。

例えばGoogleで「日興コーディアル」と検索すると粉飾事件を想起させるキーワードが関連検索に並んでしまう。このケースは残念ながら過去にそうした事件がおきたことは事実であるので致し方ないが、中には全く事実と異なるネガティブな情報が検索結果を占拠したり関連検索に登場してしまうこともある。

指摘されている内容が事実であれば、検索結果に悪い情報を掲載したくないという企業側の心理は理解できるが事実であれば修正すべきは検索結果ではなくて企業の姿勢であろう。しかしいわれなき事実無根のことを記述されそれが検索結果の上位に表示されている場合は企業としてそれを無視せず何らかの対応を検討する必要はあるだろう。

評判管理という考えを認識し、現状を確認する

以上、検索結果という面から色々なケースを紹介してきた。そもそも、こうした観点から検索結果と自社サイトのことを考えたことがないという方も多いと考えられる。まず「検索結果という面は1つのメディアであり、その面で初めて企業ブランドを知る消費者が今日の世界では存在する」ことを認識すると同時に、企業としてそれをどのように管理していくかを考える姿勢を持っていただきたい。

ブランドキーワードの扱いについては検索連動型広告ならアフィリエイターに対する制限をどうするか、自然検索(SEO)であれば自社で保有するすべての商品・ブランドにおけるランキングの把握と同時に、同じ検索結果面に表示される他のサイトの確認を行う、著作権侵害ブログであれば個別に全文転載を中止するようお願いをするなど、個別に対策方法はある。対処方法については今後の本誌で適宜、機会があるごとに紹介していきたい。

執筆:株式会社アイレップ 取締役CSO SEM総合研究所所長 渡辺隆広

※ 本コラムは2007年9月末時点のもの

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