SEMリサーチ

企業で働くウェブマスター向けに、インターネット検索やSEOの専門的な話題を扱います

Google と Microsoft の買収話 - 検索市場を巡る争い (1)

New York Times 誌の報道によると、米 Microsoft が過去数ヶ月にわたりGoogle と買収を含めた話し合いを持っていたとのこと。拒否されたものの、未だ Microsoft は Google に関心があり今後も交渉をするかもしれないそうです。

The report, quoting company executives and others briefed on the discussions, said Google indicated it was more interested in pursuing an initial public offering.

Google はMicrosoft よりも IPO に興味があるようです。

Google がなぜ IPO を目指すのか、について様々な意見が出ていますが、 Google が将来の市場競争を勝ち抜くために必要な資金を獲得したい、という事が主要因だと考えます。確かに Google は現時点でかなりの資金を保有していますが、

(1) Yahoo! との提携終了は濃厚であり、トラフィックシェアは減少する

(2) (1) によるシェア低下を取り戻すには、Google が従来ほとんど実施しなかった積極的なマーケティング活動が必要

(3) Microsoft、eBay、Yahoo! との競争が激化する、特に Microsoft は OS、ブラウザを持っているため MS の戦略如何では Google は苦しい

(4) AdWords & AdSense 配信ネットワークを拡大するためには、中小PPCの買収は不可欠

(5) 新たな検索技術の開発

等を考えると、IPO が望ましいでしょう。

ちなみに、

Microsoft as a search competitor could change the market's assessment of Google's value. Moreover, if Microsoft attempts to integrate Web search features directly into its coming Longhorn operating system, it could restart the bitter feud that led to the government antitrust case that grew out of Netscape's failure. (New York Times)

Microsoft は Windows という OS、Internet Explorer というブラウザ、Office というソフトウェア - この3つの強力なコアコンピタンスを保有しているために、かつて Netscape がブラウザ戦争で敗れたように、Microsoft が 検索機能を標準搭載して Google を駆逐するのではないか、といった見方があります。この考え方には一理あります。日本での例を出すと、一太郎VSワード対決で見事に一太郎は駆逐されました。

また、NewMediaAge の記事では、Microsoft に対抗するために「Google が独自ブラウザを2年以内に出すかも」などという観測を述べています。

Andrew Goodman, founder of search marketing Web site Traffick.com, said, 'MSN has advantages that other providers don't. It controls that browser, the operating system and office software. Search can be integrated to form a coherent package. 'I foresee the launch of a Google browser within two years. Controlling the browser may be Google's only defence,' he added. (NewMediaAge)

Andrew Goodman氏はおそらく冗談でコメントを出しているのでしょうが、Google独自ブラウザは戦略上ありえませんし、何の解決策にもなりません。この推論の根拠は「Microsoft が自社の強力な経営資源であるOSとブラウザに検索機能を搭載して普及させてくるから」ですが、それなら Googleが独自ブラウザを出してもその M$のもつ強力な資源によってブラウザを普及させることは不可能だからです。実際にブラウザ戦争によって駆逐された Netscape を見れば明らかですね。

今回の検索市場においても、Microsoft はおそらく OS またはブラウザを積極的に活用して検索エンジンの普及を目指すでしょう。ただ、この検索市場における戦いについては従来の Microsoft の戦略は通用しないのではないか、と私は分析しています。これについては後日コラムで書きたいと思います。

[続き]

検索市場を巡る争い (2) - かつての「ブラウザ戦争」とどこが違う?

[Source]

Microsoft and Google: Partners or Rivals? [New York Times]

Microsoft made advances toward Google - report [Reuters]

Microsoft's search entry could restart browser war [NewMediaAge]

COPYRIGHT © 1997-2021 渡辺隆広(わたなべ たかひろ) ALL RIGHTS RESERVED.

お問い合わせ(お仕事の相談、講演依頼など)

SEMリサーチ(www.sem-r.com)に掲載している文章及び図版の無断使用及び転載を禁じます。著作権侵害行為には厳正に対処します。

免責事項:SEMリサーチは、本記事中で触れている企業、商品、サービスの全て(情報)について、有用性、適合性、正確性、安全性、最新性、真実性に関する一切の保証をしておりません。各自の判断でご利用下さい。