SEMリサーチ

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MSNサーチ対策

ISP系ポータルサイトのように、アルゴリズム検索とディレクトリー、PPC広告を複合的に表示する検索エンジン対策は、Google 対策とは一時違った対策が必要になってくることがある。MSNはその代表的な例といえる。

最初に MSNサーチが表示する検索結果(以下、SERP)がどのような情報で構成されているのかを確認しておこう。

MSNサーチの SERP は次の4つのカテゴリから成り立っており、数字の順番で表示されてくる。( )の中はデータ供給元だ。

MSNサーチ - 検索結果の出力順序とその仕組み、構成する情報構造

※ クリックすると拡大します

(1) おすすめサイト  (MSNが選んだサイト)

(2) スポンサーサイト (オーバーチュア・スポンサードサーチ)

(3) MSNサーチのサイト (LookSmart submit-a-site / subsite listing)

(4) Webページ (Inktomi)

※ 以下、各カテゴリをこの数字で示します

ただし、常にこの4つのカテゴリが表示されるわけではない。検索キーワードと合致するWeb情報がなかった場合、そのカテゴリは省略される。例えば「自動車保険」で検索をすると (1) から順番に表示されてくるが、「SEO」で検索すると (1) は省略されて (2) のスポンサーサイトから表示される。また、「Google Microsoft 買収」と検索すると (1) 〜 (3) は省略され、(4) のWebページの検索結果から始まる。

MSNサーチの検索結果

画面1。キーワード「車 保険 見積もり 比較」で検索した時。 おすすめサイト のカテゴリはないが、スポンサーサイトから表示されて1件目はMSNサーチのサイトで1〜3件目に表示されており、4件目からは Webページだ。

MSNサーチで「杏さゆり」で検索したSERP

画面2。キーワード「杏さゆり」で検索した時。 MSNサーチのサイトから表示される。5件目から(Webページになる。ちなみに、MSN幸サイトのうち、2件目と3件目は、LookSmart のサブサイトリスティング(有料リスティング)だ。「スポンサーサイト」という表示がないからといって広告がないわけではない。

ここまでの話で複雑だなと感じた方には申し訳ないが、ここで話は終わらない。問題なのは(3)と(4)だ。

(3)は LookSmart の検索データベースからキーワード合致したWebサイトを表示する。(4)は Inktomi の検索データベースから合致したWebページを表示する。では、あなたのサイトが LookSmart にも Inktomi にも登録されていて、キーワード検索した時に両者のデータベースであなたのサイトがヒットした場合、どちらに表示されるか。実はこの場合、(3)の LookSmart で表示されるが(4)では表示されない。

LookSmart の検索データ自体は LookSmart が編集・管理しているディレクトリーだ。しかしこの検索システムは実は Inktomi だ。Inktomi は LookSmart の検索システムも担当している。従って、Webサイト(3)とWebページ(4)両者で合致したページについては(3)のSERP で表示する一方(4)では表示されない。(3)で表示したのだから(4)では省略した、と表現した方が正しい。

以上の話をまとめると次の結論が出てくる。あなたがMSNサーチにおいてターゲットとしているキーワードで検索をした時に、(1)〜(4)のどのカテゴリから SERP が始まるかを把握することだ。そして、そのキーワードであなたのページ(サイト)がどこに表示されているのかを知らなければならない。SEOにおけるMSN対策をするなら、どのカテゴリで表示をさせたいかを決定し、それに応じた対策を講じる必要がある。

例えば、あなたが狙っているキーワードとWebサイトの適合率が高く、運良く(4) Inktomi Webページ検索で1位に表示されていたとしよう。しかし同じキーワードで他の(1)〜(3)のカテゴリも表示される上、(3) LookSmart カテゴリで多くのWebサイトが何ページにもわたって掲載されているのであれば、(4)カテゴリ1位であることは全く無意味だということだ。肝心の(4)カテゴリの SERP が全然出てこないのであれば誰の目にもとまらない。

MSNサーチ対策を考える時には、単純にディレクトリーに登録をする、検索エンジン最適化を行う、PPCを行うといった考えをする前に「ファインダビリティ」(findability、見つかりやすさ)という観点から考えていく必要がある。どの位置に掲載させれば人の目にとまり、見つけてもらえるかということだ。

これを踏まえた上でMSNサーチ対策を考えてみよう。

一番簡単なのは(2)のスポンサーサイト・カテゴリだ。単純にオーバーチュアを利用して掲載すればいいので簡単だ。ただしオーバーチュアは「広告」であり、継続して掲載するためにはお金が必要だ。特にあなたが狙っているキーワードが検索回数・クリック数ともに多い人気キーワードであれば予算を確保しなければならない。これは個人事業主やSOHOには負担が大きい。

戦略的な知恵が必要なのは(3)と(4)での表示だ。ここは頭を使おう。確認したいのは、

(X) あなたが狙っているキーワードで検索した時に SERP が(3)と(4)のどちらから始まっているか

(Y) もし(3)で始まっているならそのWebサイト SERP が何ページ先まで続いているか

この (X) と (Y) について確認をしよう。

まず、項目(X)で SERP が(4)から始まっている場合。

(4)から始まるキーワードはキーフレーズや複数キーワードの組み合わせだろう。この場合は素直に Inktomi 対策を施せばよい。複数キーワードでの最適化なので、それほど苦労はないだろう。MSNサーチに興味を持っている方の多くは Google 対策を既に施しているだろうから、それを複数キーワードも念頭において対策を施せばよい。検索エンジンを騙すような小手先のテクニックや姑息な手ばかり使って最適化を施しているユーザーには無理かもしれないが、Webサイト設計時から「情報」「構造」「テーマ」といった全体のフレームワークレベルで最適化されているWebサイトであれば、苦労はしないだろう。

次に項目(X)で SERP が(3)から始まっている場合。この場合は項目(Y)も絡んでくるので、それを交えながら説明する。

一般に、1語キーワードなどの汎用的な言葉、一般的な言葉であれば、(3)のSERP が何ページにも渡って続いている。例えば「自動車保険」で検索すると延々と(3)のSERP が続いて(4)が全然見えない。こういう場合は(4)の Inktomiページ検索で上位を狙おうとすること自体無駄な努力だ。「中古車販売」「キャッシング」「ホームページ制作」といったキーワードも同様だ。こういった場合は素直にオーバーチュアを利用するか、LookSmart の submit-a-site を利用しよう。

ただし、LookSmart に掲載するタイトル文と説明文は自分自身では編集できない。掲載のされ方によっては希望するキーワードが含まれない場合もある。それは運次第だ。これでダメならオーバーチュアに切り替えよう。

一方、(3)のSERP から始まっても2ページ目あるいは3ページ目から(4)に切り替わるキーワードもある。例えば検索エンジン最適化」だと12番目から(SERP2ページ目)から(4)に変わる。「アクセスログ 解析」だと20番目(SERP 2ページ目最下部)から(4)だ。「ウェブログ」だと SERP1ページ目から(3)と(4)両カテゴリが表示される。

このケースの場合、(3)(4)どちらのカテゴリを狙ってSEO対策をしてもいいのだが、先述したことを思い出してほしい。「(3)と(4)両者でキーワードに合致した際には先に(3)で表示されて(4)は省略される」という仕組みだ。従って、(4)の Inktomi 対策をしつつ、LookSmart の submit-a-site を利用するのが効果的ということになる。LookSmart の登録状況によっては、従来(4)でしか表示されなかったWeb が、(4)より先のカテゴリ(3)で表示されるようになるので、検索エンジンにおけるファインダビリティは向上される。

このようにMSNサーチは検索キーワードによってSERPの構成が変わるため対応も考えなければならない。以上の説明を読んで「面倒くさい」と思ったらオーバーチュアを使って下さいませ。

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