米Yahoo! は Google との提携に終止符を打ち、独自検索技術を Yahoo! Search に投入した。果たして Yahoo!JAPAN がこれに追従して Google と"離婚"して、新たな Yahoo!サーチをリリースするのはいつになるのか。
Yahoo!JAPAN の対応については、Internet Watch 2004.02.20付けの記事『Yahoo! JAPAN、Googleの検索エンジンを継続利用』の中で、Yahoo!JAPAN 広報担当が次のように述べている。
Yahoo! JAPANは米Yahoo!や他国のYahoo!サービスとは異なり、検索エンジンの採用に関して独自の方針をとっているので、米Yahoo!が独自エンジンへ変更してもYahoo! JAPANには影響がない。ネットユーザーの8割がアクセスするYahoo! JAPANとしては今後もよりよい検索システムの利便性を追求したい (Internet Watch)
この内容からいえることは、米Yahoo! と Yahoo!JAPAN は直接関係あるわけではないため米Yahoo!の方針がYahoo!JAPAN に影響するわけではないこと、そして Yahoo!JAPAN は検索の利便性を追求しているのであって Google に固執しているわけではないことだ。
Yahoo!JAPAN の今後の方針について様々な憶測があるが、明確にいえることは『Yahoo!JAPAN には Google を切り捨てて独自検索技術を投入する理由もそれによるメリットもある一方で、今後も Google を継続利用しなければならない理由はない』ということだ。
▼ 検索ビジネスとして
Yahoo! Search Technology 導入により、検索ビジネスで更なる利益を上げられる。
Google に依存していると検索ビジネスの戦略が制約を受ける
▼ 検索技術として
Yahoo! Search Technology 導入により、Google には実現できない付加機能をYahoo!サーチに追加できる。
Google に依存していると My Yahoo! による会員情報との連携ができない。
Google に依存していると "Google"以上のサーチエクスペリエンスは創り出せない。
▼ 競争戦略として
Google が今後成長する芽を摘むためにも、早期に切り捨てる方が良い。
米Yahoo! を見てみよう。米Yahoo! が独自の検索技術を入手して Google を切り捨てたのは、検索市場においてリーダーとなるとともに多大なる利益を享受するためだ。検索ビジネスを行うのに、その核となる検索技術という経営資源を他社に依存するわけにはいかない。なぜなら他社の資源では完全自由で利用することはできず、自らが保有する他の事業との連携もスムーズにできない。つまり戦略そのものが制限されるわけだ。
例えば従来のようにページ検索に Google を利用していたら PFI のような有料登録を導入することもできないし、My Yahoo! とリンクしたサーチパーソナライゼーション機能も提供できない。けれども、Yahoo! Search Technology の導入によって Yahoo! が保有する他のサービスと組み合わせて検索サービス自体の質的向上も図れるようになった。XML/RSS と 検索、My Yahoo! の連携もその例だ。
また、オーガニックサーチとペイドサーチのリスティングの自由な組み合わせも Overture の買収により可能になった。米Yahoo! の Overture 買収は、その広告をコントロールすることが目的だったというのが専門家の見方だ。
Denise Garcia, principal analyst with Gartner's media and advertising group, told NewsFactor. "Overture could have struck out in a different direction or have been acquired by someone else. Yahoo purchased Overture to have that control." (NewsFactor / 2004 / Yahoo Dumps Google, Strikes Out on Its Own)
これを踏まえてYahoo!JAPAN を考えてみよう。米Yahoo! と同様に Yahoo! JAPAN も Google と提携解消して自社検索技術を投入すれば Yahoo! アカウントと連携した Google にはできない様々な付加機能を加えることができる。検索に限っても現在の1回限り課金のビジネスエクスプレスに加えてさらに PFI という新たな有料サービスを加えられる。SERPs のレイアウトも自由に変更できるし、中途半端にアドワーズ/オーバーチュアの両者の広告を表示させる必要もなくなる。
多彩なサービスのアカウントを管理する Yahoo!ID の会員という資源により、Yahoo! は Google の検索では実現できない、新たな付加価値あるYahoo!サーチを提供できる可能性を有しているわけで、それが会員を持たない Google に対して優位性があることも、そしてそれが Google の牙城を崩すカギとなりうることも Yahoo!JAPAN 経営陣は認識しているはずだ。
また、日本市場で Google が今後成長する前にその芽をつみ取るためにも切り捨てるという考え方もできよう。Google の人気が高めているのは Yahoo!サーチにそれを採用していることもいくらか寄与している上、アドワーズ広告を利用する広告主がいるのも Yahoo!JAPAN がそれを採用しているからという理由があるだろう。Yahoo!JAPAN がそれを切り捨てればサーチトラフィックをほぼ独占できる。
以上のことから、Yahoo!JAPAN もいつか Google との関係に終止符を打ち、独自検索技術の採用に踏み切ることはほぼ間違いないと思うのだが、問題はそれをいつ行うかだ。
米Yahoo! の発表によると、今後数週間の間にさらにパーソナライゼーションなどの付加機能を Yahoo! Search Technology に組み込んでいくとのことなので、少なくとも一通りの新機能の追加と "Google以上の検索サービス" が提供できる体制が整った後からだろう。さらに Yahoo!JAPAN の過去の経緯を見ると、全く目新しいサービスをすぐに取り組むよりも、市場で成功したのを見届けてから導入しているケースが少なくない。そこから判断すると、パーソナライゼーションサーチの米国での反応を見届けてからというのが一つの目安にならないだろうか。