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中国ネット規制当局、百度に検索と広告の改善要求

中国のインターネット規制当局・国家インターネット情報弁公室は2016年5月9日、同国検索エンジン最大手・百度(バイドゥ)に対して、検索サービスにおける違法な医療広告の掲載方法について改善するよう改善要求を出したことが明らかとなった。

百度の検索結果画面はオーガニック検索と検索広告を明確に区別していないうえに広告主を優遇していると指摘、5月31日までに検索結果を信頼性に基づくものに変更し、検索結果1ページあたりの広告専有面積を30%以内に制限するよう要求している。

この問題は、同国の21歳の大学生・Wei Zexiさんがガン治療のために百度の検索結果で見つけた病院で治療を受けたものの、それが詐欺で死亡に至ったことが発端。病院である広告主が医学的な裏付けに欠けた、効果のないガン治療法をネット上で違法に宣伝していkたことが一因であり、ネットユーザーを中心に百度に対する非難の声が上がっていた。

解説:検索サービスと医療・健康情報の問題

インターネット上では医学の資格や専門的知識を持たない誰もが自由に情報を発信できることから、医学的根拠に基づかない信頼性に欠ける医療情報が氾濫している。誰もが日常的に利用する情報アクセスプラットフォームである検索エンジンを通じて、一般ユーザーがこうした偽の治療や偽医薬品情報に接触し、生命の危機にさらされることは重大な問題であり、それを放置することは検索サービスの信頼性を揺るがすものとなりうる。

米Microsoftは2009年に Bing(ビング)をリリースした際、その検索性能の差別化要因の1つとして、医療情報検索の信頼性向上を掲げていた。同社によると検索ユーザーの45%がネット上で健康や予防や症状、薬品や措置など医療・健康情報について検索をしている一方で、専門知識を持たないユーザーが1つ1つの情報の信頼性を判断することは困難であり、情報探索の大きな障害になっていることを指摘している。同社は当時、The Mayo Clinic, The American Cancer Society, MD Consult といった信頼のおける医療情報ソース提供事業者と提携し、ユーザーに妥当な医療・健康情報を提供するように努めた。

世界最大手の Google も、同社の検索品質評価基準の1つであるYMYL(Your Money or Your Life)が掲げているように、人の健康や生命にかかわる情報については特にその専門性や権威性を十分に考慮して自然検索順位を構成するように努めている。

世界のさまざまなユーザーに利用されている大手2社はこのように健康・医療情報検索を課題と認識して改善を進めてきたが、中国国内というローカルな世界での最大手であり、同国のネット規制によって独占的に事業を進めてきた百度には医療や健康情報はもちろん検索結果の信頼性そのものの問題に取り組んでこなかった。Google や Microsoft の検索の理念や哲学に照らし合わせれば到底受け入れられないような事柄も百度では平然と行われてきたしそれで事業は成立してきたわけだが、そのツケが回ってきた格好だ。

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