SEMリサーチ

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検索エンジン各社の医療情報検索への取り組み

東証一部上場企業の某スパムメディアが不適切な医療情報を大量に検索上位に表示させている問題。その技術的背景の解説はに譲るとして、検索エンジン各社は医療や病気に関連する検索が抱える課題は以前から認識しており、これまでさまざまな製品開発を行ってきた。

Microsoft Bing 医療・健康情報検索の取り組み

たとえば米Microsoft は2009年に Bing をリリースしたときに、注力する4領域の1つに医療・健康情報を挙げている(ちなみに他の3つは「ショッピング」「旅行」「地域情報」)。同社によると全世代に渡り45%のユーザーがインターネットで医療・健康情報を探している(Bing、2009)といい、2000年代から医療系は検索需要の高い領域の1つだった。

当然ながら一般のインターネットユーザーは医学の専門家ではなく、したがってウェブ検索を通じて発見した情報がどれほどに信頼できるものなのか判断する術がない。そこで Bing は、メイヨー・クリニックやアメリカがん協会、米国立補完代替医療センター(NCCAM)、MedlinePlus(一般向けに医療情報を提供するサイト)といった、一定の信頼がおける情報ソースを優先的に自然検索結果の上位に表示されるようにした。また、インスタントアンサー(Google でいうボックス形式のダイレクトアンサー)でサマリーを表示したり(※ 2016年11月現在、確認できず)、関連する症状のリスト表示(※ 同 確認できず)、患者による病院のレイティング(※ 同 確認できず)の提供など、一般ユーザーと患者に豊富で有意義な医療情報を検索を通じて届けるための開発を行っていた。

Google の医療・健康情報検索への取り組み

Google によると検索20回に1回の割合で健康に関連する情報が検索されているほか(Google, 2015)、同社の検索のおよそ 1%(数百万)が症状・兆候に関する検索だという(Google, 2016)。しかし、ウェブの健康情報を案内するのは難しく、人々を軽度の症状から恐ろしい状態や不安定な状態に導く傾向があり、不必要な不安やストレスを引き起こす可能性があるという。

Google は YMYL(Your Money Your Life)にあたる情報は信頼できるページを自然検索上位に表示できるように日々アルゴリズムを開発・改良するのに加えて、ナレッジパネルを活用して信頼できる医療情報を提供するアプローチをとっている。

Googleモバイル検索の医療情報

* Google モバイル検索結果 2016年11月29日時点

同社によると、ナレッジパネルに掲載する情報は、米メイヨー・クリニックやハーバード大学医学大学院といった専門組織による編集・監修を経ているという。ウェブ上の高品質サイトから健康関連情報を見つけて分析し、次に医師のチームが慎重に情報を見直し、改善するという手順を踏んでいる。症状や病気のクエリによってはイラストが表示されるが(例 スマホからupper respiratory infection(上気道感染)や strep throat(連鎖球菌性咽頭炎)を検索)、これらの図版はメディカルイラストレーターが作成したものだ。

headache on one side と検索すると、関連する状態(headache 頭痛、migraine 片頭痛、tension headache 緊張性頭痛 など)のリストが表示される。これは2016年6月に発表された医療健康検索の改善の1つだが、このリスト自体は検索結果から自動的に抽出しているものの、1つ1つの項目を医療の専門家が審査して情報の正確性を担保しているとのことだ。

Google は医療関連の検索機能は英語圏(米国)からリリースしており、対応する病気や症状の情報を充実させている途中だ。同社は将来的に他の言語・国にも展開していきたいとの意向を示しているが、時期は不明だ。

Yahoo! JAPAN の医療・情報検索への取り組み

さまざまなプロパティを保有する Yahoo! JAPAN ならではのアプローチをしており、Yahoo!検索の自然検索最上部に、Yahoo!ヘルスケア(https://medical.yahoo.co.jp/)の情報を表示する(例 腰椎椎間板ヘルニア で検索)。「概要」「症状」「診断・治療」「原因・予防」「関連の病名」といったタブが並んでおり、検索結果上でおおまかな症例・病気の概要を知ることができる。より詳しく知りたい場合は続きを読むをクリックすると Yahoo!ヘルスケアの該当ページに移動できる。

Yahoo!検索は自社のヘルスケアの情報を最上位に

* Yahoo!検索 検索結果 2016年11月29日時点

Yahoo!ヘルスケアのコンテンツはもちろん医学の専門家(執筆者一覧)が書いたもので、各ページの本文最後に署名が入っている。こういった人間による審査・評価を得たコンテンツを活用できるのは最大ポータルサイトでもある Yahoo!検索の強みだ。

同社はまた、CSR活動の一環としてセンシティブなキーワード検索時に自殺予防総合対策センターを紹介するリンクを表示するなどの取り組みもしている(関連:"自殺推奨サイト"が検索上位を独占 - 「自殺予防サイトのアクセシビリティ向上を」)。

Search for medical information on Google

https://support.google.com/websearch/answer/2364942?hl=en

A remedy for your health-related questions: health info in the Knowledge Graph (2015/02)

https://googleblog.blogspot.jp/2015/02/health-info-knowledge-graph.html

I’m Feeling Yucky :( Searching for symptoms on Google (2016/06/20)

https://blog.google/products/search/im-feeling-yucky-searching-for-symptoms/

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