検索エンジンマーケティング(SEM)の成否を分ける要の1つは「キーワード」だ。検索エンジン最適化(SEO)と検索連動型広告、いずれもユーザの興味・関心を反映した言葉である「キーワード」をベースにターゲティングを行う以上、間違ったキーワードを選べば質の高い見込み顧客の誘導が行えない。どれだけ順位が高くても、トラフィックを集めても成果に結びつかなくなってしまうからだ。
そこでユーザがどんな種類の検索ワードを使用しているのか、どれだけの検索回数が存在するかを、Googleなどが提供するキーワード分析ツールを利用して調査するわけだが、ここで気をつけたいことは、把握できることは直近の(1ヶ月あたり、あるいは年平均の)検索回数であって、その推移は教えてくれないということだ。
つまり、もうまもなくテレビや雑誌でも取り上げられそうな、ブーム直前の検索ワードや、かつては特定ジャンルでの人気ワードだったが現在は相対的に検索数が落ちており、今後も検索数が下降線を辿るワードを、単純にツールを使用するだけで把握することはできない。
しかし、SEMの運用を最適化し、同じコストでより高いリターンを得るためには、いま対策しているキーワードは現在も効果的なのか、将来はどうなるのか、いまは全く考慮していないが潜在的に需要が伸びているキーワードはないのかを常に考え検討することは必要なことだ。たとえば、3ヵ月後に検索回数が現在の10倍以上に増えることをあらかじめ把握できれば、今のうちに検索連動型広告やSEOを組み合わせたキャンペーンを展開しておき、トレンドに火がついた時点で最大のトラフィックを集めるといったことができる。
キーワードの推移・トレンドを把握する方法は2つある。1つは、不定期に更新される各キーワードのデータを保存しておき、時系列で追えるようにしておくこと。自分がターゲットとしているキーワードの中でも、主要なワードであれば毎月記録しておくことは可能だろう。
もう1つは、弊社も運用にかかわっているが「キーワードハンター」というツールを利用する方法だ。
キーワードハンターは、過去12ヶ月間の検索回数の変化を追うことができる。この機能を使って、たとえば「訳あり商品」という検索クエリをみると、次のように2008年12月になって検索回数が急上昇したことがわかる。
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訳あり商品
2007年11月 4,863
2007年12月 8,750
2008年 3月 1,298
2008年 9月 12,859
2008年12月 202,057
出典:キーワードハンターにて「訳あり」で調査、一部データを抜粋
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同じように、ここ半年で価格が急落して一般消費者でも手が届く価格帯になったSSDと呼ばれる製品の検索クエリも、次の通り検索数が毎月増加していることがわかる。
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SSD
2007年11月 10,603
2007年12月 16,123
2008年 3月 21,436
2008年 9月 51,451
2008年12月 105,524
出典:キーワードハンターにて「SSD」で調査、一部データを抜粋
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実は、将来検索数が急上昇しそうなワードというのは、その直前の検索数の動きによって予測をつけられる。たとえば筆者は2008年5月時点でSSDの検索数が12月のような数値になることを予測できている。したがって、先述したとおりユーザが望むコンテンツで整理したサイトを用意しておくことで、検索数がブレークした時に多くのトラフィックを集め、同時に自然リンクも多数集められるため、他の企業がそのワードの存在を認知し、対策を始めるであろう2009年以降よりも数か月分のアドバンテージが得られる。
繰り返すがキーワードデータはSEMにおいて非常に重要な情報であり、上記のように時間軸という視点を加えることでキャンペーンの組み方も変わる。いま、皆さんが対策しているキーワードは本当に今も旬のキーワードなのか、あるいは今後伸びそうなキーワードが隠れていないか、是非一度見直してみたらいかがだろうか。
執筆:株式会社アイレップ 取締役CSO SEM総合研究所所長 渡辺隆広