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米Google、検索アルゴリズムを変更 - 評判悪い企業が検索上位に表示されにくく

米Googleは2010年12月1日、米ニューヨークタイムズ紙のコラムを受け、検索アルゴリズムを変更したことを発表した。同社は技術的詳細に言及していないが、ユーザからの評判が悪い企業サイトが検索上位に表示されにくくするための改良を行っている。

米ニューヨークタイムズ紙に先日掲載されたコラムの中で、DecorMyEyesというショップオーナーが、悪評だろうとレビューを集めることでGoogle検索上位に表示されるからビジネス上はプラスという意見を紹介している。これを受けて、米Google Fellowの Amit Singhal氏は、ランキングアルゴリズムに「ビジネス倫理」を組み込むことにした。

同社は今回の問題を受けて、いくつかの検討を行った。たとえば、特定サイトをブロックすること、レビューコンテンツからポジティブ/ネガティブ判断を行う感情分析(sentiment analysis)、収集したユーザレビューの公開といった選択肢だ。しかし、いずれも効果的に悪質業者を閉め出すには不十分と判断された。

たとえば「特定サイトのブロック」は緊急的な措置には有効かもしれないが、ネット全体の対象サイトを閉め出すことは困難であり、検索品質をできるだけアルゴリズムで機械的に保持したいGoogleの思想とは相容れない。感情分析は、レビューサイトからのリンクを排除したところで悪質業者の排除にはつながらないために不十分だ。特に今回のケースは、レビューサイトから張られているリンクの多くは rel="nofollow" が付与されているため実際にランキングに反映されているわけではない(=DecorMyEyesの検索順位に貢献しているわけではない)。むしろ、New York TimesやBloombergといった著名ニュースサイトから問題のDecorMyEyesにリンクが張られてたことが1つの要因として捉えることができる。つまり、仮に感情分析を含めたところで、中立的な言語で記述されているニュースサイトのリンクを適正に評価できるわけではないため(本件のようなケースで有効に働かないため)、この手法も不十分ということだ。さらに、仮に感情分析を入れると、本当に論争となっているサイトや賛否両論が分かれるサイトを見つけるのが困難になるというデメリットも出てくる。

最終的に、Googleは数日のうちに新しいアルゴリズムによるソリューションを開発して、今回問題となっているようなユーザエクスペリエンスが劣悪な企業が表示されにくくなるような対応を行った。なお、検索アルゴリズムの欠陥をついて、検索結果を不正に操作される恐れがあることから、仕組みについての公開は行わないとした。

ただし、検索業界の専門家たちは、たとえばGoogleプレイスはランキングアルゴリズムにユーザレビューの件数や点数を組み込んでいると指摘している。今回の"新しい検索アルゴリズム"も、従来のランキング計算にレビューの要素を組み込んで、一定の閾値を超えるサイトのスコアを修正するアプローチを行っていると推定される。先日明らかになった Twitterのユーザオーソリテなども例示するように、ウェブの進化にあわせてGoogleは「ソーシャルシグナル」をランキングに組み込み始めるようになったことを示す事例となるだろう。

Being bad to your customers is bad for business

http://googleblog.blogspot.com/2010/12/being-bad-to-your-customers-is-bad-for.html

A Bully Finds a Pulpit on the Web [New York Times]

http://www.nytimes.com/2010/11/28/business/28borker.html?_r=1&pagewanted=all

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