SEMリサーチ

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SEO 簡単に競合サイトを分析したい時の手順

ライバルサイトの SEO 施策状況を分析したい場合、Google Trends や Autocomplete といった検索エンジン自体が提供している各種ツールから Screaming Frog、Followerwonk、Ahrefs、Majestic、SimilarWeb、compete、comScore、eMark+ といった様々なサードパーティーが提供している分析ツールや統計データを駆使しつつ、技術的な SEO 視点で対象Webサイトを分析していくことで、ある程度の SEO 状況を確認することができます。

しかし、本格的に細部にわたり分析をしたいのであればともかく、ざっくりとした概要を知りたい、あるいは「SEOを意識しているかどうか」「どの検索クエリを標的に検索エンジン対策をしていそうか」「自然リンクを得るための意識的な施策をうっているか」「最新のテクニカルな SEO にキャッチアップできているか」といった具合に、ある特定の情報のみを取得したい、大雑把な 傾向を知りたいケースもあるでしょう。そういったときに、冒頭で触れたような様々なツールを駆使して、データを読み取ってなどとやっていたら時間が足りませんよね。

SEO の神様のように 24時間のほぼすべてを SEO に費やすことができる人はこの世には存在しないでしょう。

そこで今回は、私が長年に渡り使っている、時間がない時の競合サイト分析方法について紹介したいと思います。先述したすべての項目を以下の方法で確認できるわけではありませんし、すべてのサイトに適用できるわけではありません。この手法を使う場合、ある程度の SEO のスキルや経験は必要かもしれません。しかし、SEO の実装や施策が一定レベル以下のサイトであれば、おおざっぱな状態は把握できるはずです。

調査対象サイトの「SEO の意識レベルを確認する」

調査対象サイトの SEO に対する意識レベルを最初に確認することは重要です。明確に SEO を意識していると判断できるのであれば、その施策方針や意図、傾向、過去の施策の足跡が必ず見つかるはずなので、冒頭で触れた各種分析ツールのデータをどの程度まで読み込むべきかの判断ができます。あるいは、後述するようにクラシックな(一昔前の)SEO の知識でとどまっていると判断できるのであれば、ざっくりとデータを斜め読みするだけで、みなさんが本当に得たかった競合に関する SEO 情報を得ることができるでしょう。

つまり、「あたり」をつけることで、その対象サイトにどれくらいの時間を分析に割けばよいのか、何のデータを参照すれば欲しい情報が得られるのかを推し量るということです。

手順1. Webページの特定箇所のテキストを確認する

この方法は、特に分析対象のサイトが「首都圏の法人/個人ではない」ときに有効です。

分析対象サイトのトップページを開いたら、以下 (1)~(3) のテキストの有無および、もし記述があるならその文言の「色」と「大きさ」と「内容」を確認します。

  1. サイトロゴの真横または真下のテキスト
  2. 画面の左上端のテキスト
  3. 著作権表示文言の上下のテキスト

訂正(2016/01/05 14:05) 右じゃなくて左、左上端でした。デザインによって右になる場合もありますが、大抵は左ですね

テキストを無理やり入れた感がある、人間が読めるような色、大きさになっていないけれど検索でヒットさせたそうなキーワードが入っているのであれば、程度の差はあれ SEO に対する意識の有無を確認することができます。

SEO 業界歴が長い方であれば覚えていらっしゃると思いますが、「Webページのソースコードのできるだけ先頭付近に検索キーワードを埋め込んだ方がよい」という対策方法がありましたよね。重要なキーワードを Webページ(あるいはソースコードの)できるだけ先頭(body のできるだけ直後)に書くことで自然検索順位を改善する時代がありました。

その施策が広まった時代というのはまだ SEO という言葉すら知らないウェブマスターが多かった時代なので、すでに出来上がった Webサイトにキーワードを埋め込むには、ロゴの上か下、Webページの左上端(デザインによって右上端)に記述するしか解決策がなかったのです。つまり、もともとは「しかたがなく」実践されていた方法なのですが、そのノウハウだけが今日まで生き残った結果、あたかも推奨されるベストプラクティスかのように現在も一部の界隈では実践されています。

話が脱線しましたが、あきらかにユーザーが閲覧することを意図していない形でキーワードを埋め込むかのようなものがあれば、なんとなく SEO は意識しているんだろうなという判断はできると思います。ちなみに、画面上部付近にテキストがあった場合は、念のためページ最下部付近のテキストの有無を確認します。画面上部の記述と同様のものが著作権表示付近にも、薄めの文字で記述されているのであれば SEO 目的で行っている施策と考えて間違いないと思います。同じキーワードを繰り返し(繰り返し記述することはオールドスクールなSEO、つまり施策者の SEOスキルはそれほど高くない/最新状況にキャッチアップできていないと考えられるかもしれない)ているのであれば、そのキーワードで順位を改善したいに違いありません。

もっとも、上記の条件を満たしたからといって必ずしもサイト運営主体が SEO を意識しているとは限らないケースもあります。たとえば、サイト開発を請け負った制作会社がテンプレート的に良かれと思って入れただけのケースもあります。ロゴの下に入れるテキストも、企業のミッションステートメントを入れただけで、SEO を意識していないかもしれません。そこは、「位置」「色」「大きさ」「文言」と、各位置との関係性で推し量っていきます。

手順2. タイトル要素の文言を確認する

SEO の施策状況から、スキルを推定していく作業を続けます。

手順1. で SEO に対する意識レベルや施策程度をおおざっぱに把握したところで、Webページのタイトルの記述を確認します。これはトップページだけでなく、テンプレート単位(たとえば通販サイトであればトップページ/カテゴリトップ/カテゴリ別商品一覧ページ/商品詳細ページのテンプレート)でのタイトル記述状況を確認します。手順1.で”それっぽい”記述があるならば、タイトルにも相応にキーワードを入れているはずです。

ここで確認することは、「タイトルは手入力か、それともルールベースで自動挿入か」「自動挿入であればその生成ルールは適切か」「サイト名称の枕詞(○○○のことなら■■■の△△△へ、みたいな文言の○と■の部分)の記述法」といった事柄です。コンテンツ管理システムを導入している可能性が高いのに生成ルールが適当であれば、キーワードを入れておけばいいという時代遅れの考えか、最新事情にキャッチアップできていない、SEO はページ上下にキーワードを入れればよいという間違った認識でいるといった可能性、いずれにしても「わかっていない」のでしょう。全ページ共通に挿入するサイトID名も、枕言葉に人間的にくどく感じるような形式でキーワードを入れているのであれば、それも一昔前の SEO 知識に基づいているか、その効果の検証もせずにとりあえず入れているのかもしれません。

手順3. 外部リンクの状況を確認する

Google の検索式 link; がほとんど使い物にならなくなってしまった今日、ライバルサイトの外部リンク状況を確認するにはサードパーティーのツール、たとえば Ahrefs や Majestic SEO といったツールを使うことが一般的となりました。ちなみに2004年当時は、Optilink という Java を使った Windows / Mac のクロスプラットフォーム対応ではあるけれど非常に不安定なソフトウェアしかなかったので、当時と比べて便利な世の中になったものです。

しかし、SEO に限らずツールというのはそれ自体が目的ではなくて手段です。自分がやりたいことにあわせて道具を使うことが大切であって、道具に使われてはいけません。

言いたいことは、「あなたが知りたいことは、本当に Ahref や Majestic を使わなければいけないのか?」を自分に問うてみることです。過去にスパムリンクを大量に貼ってしまって、それをできる限りリストアップして Google に報告しなければいけないのであればバックリンク調査ツールは有効化もしれませんが、ライバル企業の施策概要を把握したいだけなら、大量のデータに目を通さなくてもいいかもしれません。

という前置きをしたうえで、目的に合うなら次の方法で試してみましょう。

Google または Bing で、次のように検索します。

"調査対象ページのURL" -site:調査対象ページをホストするドメイン

例) 首相官邸ホームページ(www.kantei.go.jp)の外部リンクを調査したいのであれば、Google 検索窓に "www.kantei.go.jp" -site:www.kantei.go.jp と入れる

文字列 URL を含む Webページを、そのページのドメイン以外のページから探すという検索式です。外部のページでそのURL文字列を持っているのであれば、外部リンクだからです。""(ダブルクォーテーション) は完全一致検索の式を意味します。

もしも調査対象サイトの対策キーワードが高難易度(≒大人気)キーワード、つまり過去に有料リンクをはじめとする人工リンクに手を出している可能性が高そうであれば、次のように検索します。

"調査対象のページURLあるいはドメイン名" seo 引越 fx

1つずつ解説していきます。

まずは前者、この"調査対象ページのURL" -site:調査対象ページをホストするドメインという検索式を使うと、バックリンクに関する様々な状況を確認することができます。たとえば、過去に張られた自然リンクが向かっている先のページが 404 Not Found になっていることが多いのであれば、こうした過去のデジタル資産を十分に生かせていない、そういった社内体制ができていない可能性があると判断できますね。あるいは、Google に人工リンクと見抜かれないように巧妙な外部リンク施策をこっそりやっている形跡がわかるかもしれませんし、あるいは自然検索結果を占拠するために複数の同種のウェブサイトを立ち上げていることを発見できるかもしれません。

後者の検索式にある文字列「seo」「fx」「引越」のところは、表示される検索結果を見ながらマンション、占い、探偵など適当に変更していきます。かつて外部リンクのみの力技で自然検索順位を上昇させていた SEO会社は、そのリンク供給元ページに複数顧客のサイトへのリンクを張っているケースが多いので、文字列としてマンション 探偵 バイク買取 ウィークリーマンションといった文言が同一ページに記述されているのです。さすがに2016年現在、こうした手法を提供する SEO会社は激減しているのですが、絶滅したわけではありません。比較的最近のページでこうした方法が発見されれば、その調査対象サイトはいまだに人工的なリンクに手をだしていると判断できます。古いページばかりであれば、現在は心を入れ替えている可能性、それらの古いリンクを取り除き切れていないなど複数の可能性が考えられますが、「いま、何をしている/しようとしているか」を知るうえで参考になるでしょう。

なお、検索結果を見るときは、上から1つ1つ順に見ないことです。1つずつ見るくらいなら Ahrefs など使った方が早いです。全体的な傾向を把握するために、ランダムにタイトルを見ながらクリックしていくことをお勧めします。たとえば私は、検索結果の1ページ目の次は4ページ目、次は9ページ目、といった具合に、表示するページをランダムに変えています。「特徴的なリンクを探す」ことがキモですから、ページを適当に飛ばしながら見た方が効率的なのです。

また、紹介した検索式は Google と Bing どちらでも使えます。Google だと類似・同一・低価値ページとして省略されて表示されないページも Bing で見つけられる場合もありますので、Google を見てもいまいちヒントが得られない時は Bing を試してみてもよいでしょう。SEO 分析の道具としては Bing もまだまだ利用価値はあります。

全体の傾向をとらえてから、目的にあわせて道具を使う

以上の手順を踏んでいくと、分析しているサイトの傾向や特性が見えてくるはずです。たとえば純粋に自然なリンクが張られていそうであれば、なぜ自然リンクが張られているのかを分析すべきですから、ここでサードパーティーの外部リンク分析ツールを用いつつ、リンクが張られた文脈や目的を調べていくと良いでしょう。逆に、人工的なリンクが多いのであれば、どのような手法を用いているのか、その人工リンクが与えているポジティブ/ネガティブな影響を調査すべきで、それにあわせて取得するデータの対象と範囲を決められます。サイト内部の設計的にダメダメであれば、外部リンクそのものを調査せずに、サイト内部をじっくり見ながらテクニカルな課題を発見していけばよいでしょう。

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「森全体を見渡してから、個々の木を見る」ような流れになっていますが、必ずしもそういうわけでもありません。最初にいくつかの木をチェックして、そこから全体を見渡すこともありますし、全体を見ないこともあります。残念ながら、この手順でやれば完璧に分析ができるという方法はないので、結局のところ対象のサイトの状態によって切り込み方を考えなければいけません。

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