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Google、ゲスト投稿やコンテンツ配信を悪用した外部リンク獲得施策に警告

Google Webspam Team は2017年5月25日、ゲスト投稿やパートナー投稿、第三者サイトへの記事配信(コンテンツシンジケーション Content Syndication)といった形式によるスパムリンクが増加しているとして、あらためて同社ガイドラインを遵守するよう呼びかけている。

SEO 上級者のためにあらかじめお伝えすると、本件は2014年にウェブスパムチームトップのマット・カッツ氏(当時)がゲストブログの利用について発した警告内容に準じている。今回は対象範囲こそ広げているが同社の判断基準自体は同じであり、目新しいことは特にない。したがって当時のことを記憶しているのであれば本記事は読み進める必要がない。

cf.

グーグル、ガイドライン違反例として「低品質のゲストブログ記事」を明記

Google、ゲストブログをSEO目的に利用することに警告 - スパム判定の恐れあり

興味がある方は2014年の上記記事を参照してほしい。以下、初心者向けに解説する。

ゲスト投稿やコンテンツシンジケーションとは

ゲスト投稿は、他者が運営するブログやサイトに(お邪魔して)記事を投稿すること。Aさんが自分のブログ A ではなく、友人が運営するブログB や取引先企業のメディアC に記事を投稿するようなケース。自分のブログとは異なるオーディエンスと接触する機会を得て、より多くの人に記事を読んでもらうことが可能になる。ゲスト投稿という文化は欧米ほど盛んではない。

コンテンツシンジケーションは、記事を第三者の(大抵は複数の)サイトに配信すること。たとえば日本では、朝日新聞や読売新聞は Yahoo!ニュースに記事を配信している。Gunosy や SmartNews も数多くのメディアからコンテンツを提供してもらっている側だ(独自記事除く)。

ちなみに私も、ここ(www.sem-r.com)に掲載した記事を ASCII Web Professionalにも配信しており、これもコンテンツシンジケーションだ。

関連するメディアに投稿することで新しいユーザーとのエンゲージを構築したり、ブランドの認知度を高めるなど、ゲスト投稿やコンテンツシンジケーションは有効な施策である。ただし、検索マーケティングの本質よりも、とりわけ検索順位を改善するための手法にばかり興味関心が集まるSEO 業界においては、こうした施策が悪用されることがしばしばある。

Google はゲスト投稿や第三者へのコンテンツ提供自体は否定しない

さまざまなメディアに寄稿すること自体は否定されるものではない。提供されるコンテンツが閲覧者にとって有益で価値がある場合や、(オウンドメディアではリーチしない)オーディエンスの教育や啓蒙を行う場合、あるいはあなたの会社や目的に興味や関心を持たせるといった場合において、Google はそれをやめさせようとする意図はない。

ただし、コンテンツ提供の意図が大規模な方法で(検索順位を上げたい)ターゲットサイトへのリンクを構築することにある場合、同社のリンク プログラムのガイドラインに違反することになる。

Google がガイドライン違反と判断するゲスト投稿やコンテンツ提供のケース

具体的には、次のような要因が度を超えている場合に該当する。

  • ゲスト投稿や配信する記事文中に、キーワードを詰め込んだリンクを埋め込む行為
  • 記事を数多くのさまざまなサイトで掲載する行為、または、いくつかの異なるサイトに多数の記事を掲載する行為
  • 記事の話題について素人のライターを使って記事を作成する行為
  • 同一または類似するコンテンツを使い回して記事を配信する行為、あるいは、自分のサイトで公開している記事全文と重複するケース(この場合は rel=cannical や rel=nofollow を使用することが推奨される)

1点目は、SEOをしたいサイトが検索順位を改善したいキーワードを記事文中に書いて、それをアンカーテキストにしてリンクを埋める(リンク先はその順位を上げたいページ)ことを指す。近年の Google はフッターリンクや画面左右のサイドナビなど現実のユーザーがまず利用しないであろう場所に設置されているリンクは評価しないため、記事本文のなかにリンクを入れたいと考えるサイト運営者がいる。

それを効率よく規模を大きくして行うにはどうするか。これが2点目で、記事にリンクを埋め込み、多数の第三者サイトに配信するコンテンツシンジケーションが適しているというわけだ。日本でも一時期、タイアップ記事広告と称して多数のメディアに掲載されることを売りとした某企業が積極的に営業を行っていたことがある。メールに添付されていたメディア資料に目を通すと月間PVや訪問者数が不明の聞いたこともないメディアが50サイトほど列挙され、掲載されることでリンクが増加することをメリットとして訴えていたことがある。

3点目は、2016年末に世間を賑わせた DeNA のコンテンツ制作手法を思い浮かべていただくとわかりやすいだろう。制作する記事の話題についてド素人の大学生に、適当にコピペで記事を作成させるような、そういった過程で制作された記事を第三者サイトへ掲載するようなことがガイドライン違反だと指摘している。

最後は、ある記事全文をオウンドメディアだけでなく他サイトにも掲載しているケースを挙げているので、当てはまると誤解される方がいるかもしれない。これは”順位操作目的のキーワード豊富なリンクを含む”という前提や他の要因も含めて総合的に判断される話なので、一般的な施策は除外される。個人的には、一般的に記事内にリンクを含めることがない新聞社の記事が Yahoo!ニュースに配信されるようなケースで nofollow や canonical※ を要求する必要があるとは思わない。文末で触れるように、Google はあらゆるゲスト投稿やコンテンツ配信を否定したいわけではない。

※ 自社サイト以外に掲載する記事ページに canonical を加えて検索結果の重複問題を解決するという話は論点がずれるのでここでは触れない。Google が原文で "A reminder about links in large-scale article campaigns" と述べているように、大規模な記事配信によるリンクスパムの文脈で説明をしている。

「お行儀の悪いメディア」に配信するときは防衛的に canonical や nofollow を使うとよいだろう、絶対安全策をとりたい方や、極度の心配性で Google におびえている人にも勧めたい。

パブリッシャー側もサイトの管理責任を問われる

Google があるウェブサイトがスパムリンクを含むコンテンツを掲載していると検知したとき、それが Google のサイト品質についての認識を変えて、自然検索順位に影響する可能性があると述べている。つまり、コンテンツを受け入れて掲載するパブリッシャーも、十分に記事を精査して、掲載可否を判断し、サイトの品質を維持するよう努めることが求められるということだ。

もちろんリンク生成目的のコンテンツを作成・配信するウェブサイトも、ウェブ全体にとって悪だとして、Google がしかるべき措置を講じる。リンク獲得が第一だと、記事の品質が低下し、ユーザーに最悪の体験を提供することになるからだ(DeNA がトラフィック第一で医療記事を大量生産したために内容がおざなりにされたことを思い浮かべるとよい、それと構図は同じだ)。

cf.

SEO:シンジケーションネットワークと外部リンク効果の関係

スパム的なゲスト投稿やコンテンツ配信依頼が届いたら、Google に通報を

サイト運営者は、さまざまなユーザーからゲスト投稿やコンテンツシンジケーションの依頼を受けることを望んでいないが、万が一そうした依頼メールがあれば Google のスパム通報フォームから連絡するように Google は勧めている。

最後に同社は次のようにまとめている。『もしリンクが一種の支持や推薦であり、あなた自身が自分の支持や推薦のほとんどを作成しているとしたら、それはサイトの最高の印象を引き出しているのでしょうか?リンク構築に関しては、サイトのコンテンツ改善に重点を置くことが我々の最善のアドバイスです。そうすれば、すべてが -- リンクを含めて -- あとからついてきます。』

第三者サイトへのコンテンツ配信や記事内リンクがすべてNGなわけではない

今回の Google の公式発表を読むと、第三者サイトへのコンテンツ配信や、他社サイトに記事を掲載するときにあらゆる外部へのリンクを含めてはいけないという解釈をする方がいるかもしれないが、そういうことでは決してない。

たとえば、ある会社が発表した調査レポートを引用した記事を作成し、そのレポートへの参照リンクも記事に含めたとする。その記事を複数のサイトへ掲載した場合、掲載サイト数分だけ、その調査会社へのリンクも増えることになる。この時、記事作成側と掲載側に非はあるといえるだろうか?

ここで突然、私が「そういえば昨日、自動車保険について調べていたんだけど、やっぱり●●●●●●がよさそうですね」と書いたうえで、その重要そうなキーワードにリンクを埋め込んで外部サイトへリンクを張った場合、このリンクは問題がないのだろうか?

つまりこういうことだ。閲覧者にとって必要なこと、助けになること、本当に知らせたいこと、コンテンツをより信頼あるものにするために必要なことであれば、Google の気分など気にする必要はない。しかし、リンク施策第一の発想で、ユーザーにとって何の意味もないものであれば、排除せよということだ。

日本でガイドライン違反に該当しうるケース

日本国内で本件に関係しそうな具体的なケースは、いろいろな著者からの記事投稿を、そのまま掲載しているメディアだ。たとえば LINE社が運営するブロゴス(BLOGOS)に掲載されている記事を見ると、微妙なラインのものが混ざっていることが確認できる(5月27日時点)。一般論として、「当社で制作した記事は、我が社が提携する●●サイトのパートナーメディアにも掲載されます」という訴求とともに SEO 効果を掲げる商品は、内容をよく精査した方がいいだろう。

念のため、Google が本件で触れているコンテンツ(記事)シンジケーションとは、コンテンツを余所のサイトにも掲載することを指している。Outbrain や Taboola のような、おすすめコンテンツのリンクを掲載するシステム(Paid Content Syndication)は無関係なのでご注意を。似たようなもので、自動的に文中にテキスト広告を埋め込むようなものも(アドサーバを介するようなものは)「広告」なので本件と関係ない。

個人でサイト運営されている方のなかに「同じ記事を、複数のサイト(たとえばアメーバブログとはてなブログと自分の独自ドメインのサイトに・・・といったケース)に投稿している」方がいるかもしれない。後述するように、過剰なSEO目的のリンクを含めていないのであれば心配ご無用だ。ただし情報商材で販売されている類いの手法は話が別。

個人的には、Google は欧米でよく観察されるSEO関係者でも引くレベルの酷いネットワークを想定して警告していると思うので、少なくとも一般企業の担当者があまり神経質になる話ではないと考えている。対応すべきは、自覚があってやっている人だ。

勝手にコンテンツ配信されているケースへの対処法は?

サイトのスクレイピングやRSSフィードが使用されることにより、他のサイトに自分のコンテンツがまるごと掲載されることもある。これも一種の(勝手)コンテンツシンジケーションと呼べるが、こうした可能性を心配される方がいるかもしれない。

Google は公式ブログで "However, what does violate Google's guidelines on link schemes is when the main intent is to build links in a large-scale way back to the author’s site."と述べているように、あくまで"大規模にリンク構築を行う目的" の場合なので、そもそも発信する記事自体にキーワード豊富な、過剰に最適化したリンクが含まれていなければ関係がないお話だし、ユーザーのことを考えてコンテンツを制作している人はそういうことをしないはずだ。

また、他人のコンテンツをあちこちから勝手に引っ張ってきてサイトを立ち上げる方法は2000年代の Web 2.0 という言葉が流行した時代からある古典的なスパム手法であり、そういったメディアの大半は今日の Google は評価しないし、無断転載されたサイト側に被害が及ぶ可能性も極めて小さい。よって心配は無用だ。

2014年のゲスト投稿の時もそうだが、本件について Google が伝えようとしているメッセージは「検索エンジン対策目的のコンテンツマーケティングをやめろ」なので、自分自身で過剰に SEO 目的で第三者への記事提供を行っている自覚がないなら何も対応することはない。

A reminder about links in large-scale article campaigns

https://webmasters.googleblog.com/2017/05/a-reminder-about-links-in-large-scale.html

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