SEMリサーチ

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【SMX East 2017】 最も検索順位に影響を与える要素は何?

SMX初日の早朝に開催されている、定番のセッション。検索エンジン(=Google)が自然検索順位を決定するときに利用しているシグナル(評価項目)について議論する。個人的には2011~12年以後、つまり Google が機械学習を導入し始めた頃より本セッションの意義が薄れてきていると考えているが、(同時間帯に参加したいセッションもなかったので)一応参加した。

以下、※箇所は私の注釈。

SEMrush Ranking Factors 2.0: SEMrush 2017 Study With Unreleased Updates By Olga Andrienko, Olga Andrienko (SEMRush)

同社(※ SEMRush)が2017年5月に公開した、SEMRush Ranking Factors Study 2017 のデータを紹介。キーワード数60万(うち米国は20万、ほかドイツやスペインを含む)、検索上位100サイトを対象とした統計的な調査を実施。ページ内要因(On-Page factors)、参照ドメイン(Referring domains)、トラフィック情報(Traffic Data)の3軸から分析を行った。キーワードは検索数に応じて4段階(Very High > 10,001, High 1,001 - 10,000, Medium 101 - 1,000, Low 1- 100)でグルーピングしているとのこと。

ハイライトは以下の通り。

  • HTTPS:検索数が高いキーワードの上位トップ3に入ったドメインの65% は HTTPS を導入(※ HTTPS だから検索順位が高いわけではない、後述)。HTTPS はランキングの大きな要因ではないが、コンバージョンや来訪者への信頼醸成には役立つのでは。
  • コンテンツの長さ:上位3サイトのコンテンツは、それ以下(20位まで)のサイトよりも45%長い。すべてのキーワードボリュームで同様の結果だった。
  • ロングテール(のキーワード)はショート~ヘッドよりも20% コンテンツ数量が多かった⇒提供するコンテンツが十分か確認すること、それが関連性があり、ユーザーの意図に合致していることを確認すること。
  • キーワード:検索数が多い(High-Volume)キーワードでランクインするドメインの35%はタイトル要素にキーワードを含んでいない。
  • アンカーテキスト:アンカーテキスト内のキーワードはほとんどランキングに影響ない。検索数が多いグループ(High-Volume)でもアンカーにキーワードを含んだリンクはわずか8%だった。(※ 2004年前後はリンクへのキーワード挿入率は70%程度が推奨とされていたので、時代の流れを感じさせます)
  • 訪問者数:High-Volume グループにおいて訪問者数は影響あり、検索数が少ないグループでは影響は小さかった。ダイレクトアクセス(※ ブラウザの検索欄/アドレスバーから直接、サイトへ訪問すること)を除いてデータを集計すると、来訪者数はランキングに大して影響していないことが判明。
  • ユーザーシグナル:トップ3以下のサイトでは直帰率が上がっていた(※ 関連性が高いと判断したサイトを検索上位に表示しているのだから、当然だと思う⇒直帰率と、どんな検索クエリでサイトに訪問しているのか確認すること
  • その他:セッションあたりのページ閲覧数:3から3.5。バックリンクはまだ重要、特にミドル~テールのキーワード。
  • まとめ:バックリンクはまだ重要、ユーザーシグナルは検索順位に影響する、タグ内のキーワード挿入は重要性が低くなっている。ランダムフォレストによる重要性の評価の結果⇒ダイレクトアクセス、滞在時間、セッションあたりの閲覧ページ数、直帰率は重要度高いと言える。

所感:統計アプローチのSEO は基本的に、業界の多くの専門家がある仮説を支持するようになった「後」に統計的に裏付けをするだけなので、新しい発見は出てこない。データで見てもやっぱりそうだよねとみんなで納得する場なんだと思う。検索利用者の行動全体を解析して満足度を測るようになってきているので、ランキング要因として「滞在時間」「セッションあたりの閲覧ページ数」「直帰率」といった指標が上がります。ただし、検索クエリの種類やインテントによりユーザー行動は多種多様なので、単純に各指標を改善すればいいというものでもないのが、旧来の”検索エンジンと向き合うSEO”の考え方をしてきた人には理解が難しいかもしれません。ユーザーの検索体験を高めることがゴールになるので、向き合う相手は検索エンジンではありません。検索エンジンと向き合うわけではないという意味において、この(従来のSEOで重宝されてきた)本セッションの意義が薄れていると私は考えています。

Why General Ranking Factors Are Dead! By Marcus Tober, Marcus Tober (Searchmetrics)

このセッションは以下の理由により省略する。

統計データに基づいて検索順位の要因とSEO の話をするときは、(1) 検索順位に影響している要素は何なのか、ということと (2) そのデータに基づいてウェブマスターは何をすべき(考えるべき)なのか、の2点はセットになるべきだと私は思う。しかし本セッションは後者が欠けているので ”So what ?" となる。Searchmetrics の見解は何なのかが不明。

一例を挙げると、旅行業界のサイトは金融関係のサイトと比較してページあたりの写真点数が多いというデータに言及したが、だから「写真が多いかどうかは検索順位と関係がない」と言いたいのか、それとも「旅行サイトの運営者は検索順位を改善するために同じように写真を増やせ」なのか、あるいは「業界ごとのユーザーのニーズをよく考えて、掲載すべき情報をよく考えよ」と伝えたいのか。それを言わなければ本セッションの意義がないのでは? -- 登壇者が準備不足のようで話がまとまっていない印象。というわけで本セッションは省略する。

SEO Ranking Factors 2017: What's Important, What's Not By Herndon Hasty, Herndon Hasty (The Container Store)

上記2つのセッションを踏まえて「どんな行動をすべきなのか」を話してくれる流れなのかと思ったら、SEO で最近話題の指標を取り上げてアクションを考える内容だった。直前の講演と直接関係はないので、なおさら(直前の Searchmetricsの)セッションは時間の無駄ではないのかと考えながら・・・。

以下、ハイライト。

  • <サイトスピード:画像サイズの調整は重要。画像ファイルサイズを削減したおかげでサイト内のユーザー行動が改善した。モバイル利用者が増えれば増えるほどサイトスピードは重要な領域。
  • HTTPS:HTTPS移行時にはリダイレクトの設定をよく確認すること。
  • メタ要素:クリックスルーに関係する文言が表示されるように調整するとよい
  • 検索結果の変化その1:自然検索流入は減っている~モバイルへの移行、検索結果画面の構成変化などが影響。
  • 検索結果の変化その2:フィーチャースニペット(強調スニペット)の影響でクリックスルーが減少。

所感:統計データを元にアクションを考えるセッションだったはずじゃないの?

その他、総括:コンテンツの長さやキーワード云々のところは、その数量は過多が問題なのではなくて、検索利用者の来訪意図や求めている事柄を十分に考慮してページを制作せよという趣旨であることは言うまでもありません。ダイレクトアクセスに関して、Chrome や GA のデータを検索順位の参考にしていると思う人と挙手する人が多いことは意外。前者はともかく後者は違うんじゃないの?

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本セッションに限らず、今回のイベントは講演のタイトルと内容が合っていないものが多くてがっかり。

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