SEMリサーチ

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キーワード選定と調査:セグメンテーションとアロケーション

検索エンジン最適化(SEO)、ペイパークリック広告(PPC) いずれの実施においても重要なのはキーワードの選定。綿密なキーワード調査と戦略組み立てが、あなたの SEMパフォーマンスを左右することになります。

SEM の全ての始まりキーワードです。キーワードの選定がSEO や PPC といった SEM の効果を大きく左右します。なぜなら、ユーザーがキーワードという言葉を検索エンジンに発することにより、初めてSEM実施企業はそのユーザーにアプローチする機会を得られるからです。

キーワードが企業と顧客の橋渡しをするという事実は、SEM において次の2つのプロセスが重要であることを意味します。1つは多様なキーワードを発するユーザーの中から、どのキーワードを発するトラフィックを自社サイトまで誘導するかという「キーワードセグメンテーション」を必要であること、もう1つはその選択したキーワード毎にどのWebページに到達させるかという「キーワードアロケーション」が必要だということです。

キーワードセグメンテーション

企業はWebサイトを開設する際に何らかの目的を持っているでしょう。例えば資料請求、商品やサービスの販売、メルマガの購読、その他何らかのアクションをし、新たな顧客を捕まえるという目標を持っているはずです。Webサイトの開設目的と訪問した顧客にどんなアクションを望むかを明確にした上で、希望通りのアクションをするユーザーを誘導するためには何のキーワードを選択する必要があるかを考えます。Webサイトで提供する情報に関心を持ち、期待するアクションを起こしてくれる確率が高いユーザーを選定するのです。

例えば「化粧品のサンプルを請求してくれる顧客」を検索エンジン経由で誘導したいとしましょう。この場合、化粧品のサンプルを請求してくれそうな顧客は、検索エンジンでどんなキーワードを入力して情報を探している人たちだろうと考えるのです。

キーワードによって、見込み客をある程度選別することが可能です。なぜなら検索エンジンを利用する人たちは、入力したキーワードに何らかの「意図」を含めているからです。検索サービスは情報探索の為のツールであり、何か目的を持って情報を探しています。クリスマス ケーキ 東京都」というキーワードを入力した人は、きっと東京都内でクリスマスケーキを届けてくれる、あるいは販売しているお店を探しているんだろう、という推測がつきます。少なくとも同キーワードを入力した人が「沖縄で安いホテルを探している」とは思えませんね。

つまり、キーワード毎にユーザーの意図を汲み取ることで、自社で提供する商品やサービスに関して関心の高そうな顧客を選別していきます。従って「化粧品 サンプル」「化粧品無料サンプル」「無料サンプル化粧品」「化粧品 サンプル プレゼント」といったキーワードが妥当でしょう。

ところで、誤ったキーワードとは何か。例えば「手作り化粧品」。これは手作りの化粧品を探している人たちで、少なくとも「化粧品」には関心があるのでその意味で「化粧品つながり」のユーザーです。しかし、このキーワードを利用しているユーザーを誘導してきて、果たしてどれだけの人がサンプルを請求してくれるでしょうか。1万人も誘導してくれば1人くらいはいるでしょうが、非常に費用対効果が悪いですし割にあいませんね。

私が今までにコンサルタントを担当してきた中で(その会社は化粧品だったのですが)「壁紙で1位にしてほしい」と言われたことがあります。理由は壁紙というキーワードの検索回数が多いからです。しかし検索回数が多いからといって、そのユーザーが化粧品サンプルを請求してくれるとは思えませんよね。実はこのように「とにかく検索回数が多いキーワードでなきゃだめだ」と主張する企業担当者は多いのですが、これは間違いです。検索回数が多いこと自体はキーワード選定の上で大切ですが、その数字だけで決定することは非常に危険です。まずキーワード自体に含まれる意図を汲み取り、訪問客を顧客に転換することが可能かどうかを判断すべきです(このお話は別のコラムで後日触れましょう)。

キーワードは最初は思いつく限り箇条書きしましょう。消去することは後でいくらでもできます。まずはブレインストーミングを繰り返してとにかくあらゆるキーワードを並べます。

キーワードアロケーション

キーワードアロケーションとは、PPCやSEOでターゲットとすると決定したキーワードについて、それぞれ検索された際にどのWebページにユーザーを誘導させるか、そのキーワード - 到達Webページ(エントリーポイント)の対応を決めるということです。

わかりやすい例を挙げましょう。用語解説のページに次の4つがあったとします。

SEMとは

SEOとは

PPCとは

PFIとは

以上4つのSEM関連の専門用語は、その言葉の意味を知りたくてキーワードとして「SEOとは」「SEMについて」といった具合で検索されることがあります。ユーザーが「SEOとは」と検索している時、上位に表示されるべきページとして適切なのは、

(a) SEO の用語について解説しているページ

(b) SEM の用語について解説しているページ

(c) PPC の用語について解説しているページ

上記 a 〜 c のどのページにたどり着かせてあげるのが、ユーザーにとって親切だと思いますか?

ユーザーは検索エンジンで「SEOとは」と入力しているのですから、検索エンジンの上位に表示させる、あるいは PPC 広告をクリックした際に誘導する到達ページは (a) のページが親切ですね。 (b) や (c) のページにたどり着かせても、ユーザーは (i) 自分が探している情報とは異なるページにたどり着いたからバックボタンを押してSERPに戻る (ii) 同サイトから SEO の説明のページがあるかないかを探す のいずれかの行動を起こします。しかし8割のユーザーはバックボタンを押して帰ってしまいます。

つまり、

検索キーワードが「SEOとは」なら (a) のページに誘導

検索キーワードが「SEMとは」なら (b) のページに誘導

検索キーワードが「PPCとは」なら (c) のページに誘導

が親切ですね。ユーザーも自分が当に必要とする情報に迅速にアクセスすることができます。

商用サイトでは特にこれが重要です。商品カテゴリーや商品名、あるいは型番で検索された時には、ユーザーの必要としていると思われる情報は微妙に異なります。商品カテゴリーで探す人はとりあえず下調べの段階でしょうが、型番で来る人は自分が既に所有している商品に関する情報が欲しいか、あるいは既に購入する機種が決定していて探している人でしょう。すると、それぞれのユーザーは別のページに誘導するようにした方が望ましいのです。

これは特に"SEOもできます"と主張するWeb制作会社に多く見られる傾向ですが、ユーザーが希望するキーワードについて具体的にどのページに誘導するのかを考えずに、Webサイト全体で(つまり、Webサイト内の全てのページを)同一キーワードで最適化させようとする方々が非常に多いのです。しかし先述した通り、キーワード毎にそれに対応した最も適切なページに誘導する必要性があることを認識して下さい。

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