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Google Everflux 現象 - UPDATE (2003/11)

Google の Everflux 現象について、2003年11月時点の状況をもとに説明します。なお、SEOに特別関心のない方は2003年8月までの状況をもとにした"Google Everflux 現象"の記事の方がわかりやすいと思いますので、そちらをご覧下さい。この記事は特別関心のある方向けです。

Everfluxとは

Everflux (読み:エバーフラックス)とは、Google の検索結果が日々流動的に変化している様を指す言葉です。Ever とは「いつも」、flux とは「流動/絶え間ない変化」という意味です。Webページ各々の掲載順位が「いつも」「流動的に」変わるわけです。

Google は今年の8月下旬頃から、従来のクローラー - Deepbot と Freshbot の2つを実質的に統合し、Freshbot が Deepbot の役割も兼ねるようになってきました。この結果、Google のインデックスは日々 Freshbot によりアップデートされる"周期的更新"(Rolling Update)に移行したため、同じキーワードで検索をしても日によって検索結果が変わるようになったのです。

Everflux が起こる原理

Everflux が起こる仕組みについてもう少し踏み込んで解説しましょう。

任意のキーワード検索時に日によって検索結果に変動があるということは、Google のインデックスに何らかの変更が加えられて、検索キーワードに対する適合率が変化したことを意味しています。では、どんな変更が加えられ、なぜ任意のキーワードに対する適合率が変化するのか。

Freshbot がカギになっています。Freshbot はGoogleインデックス情報をできるだけ最新のWebを反映するように毎日新しいWebページや更新されたWebページを探し回り、それらをインデックスに反映させていきます。つまり、Freshbot が何らかの情報をインデックスに加える度に、掲載順位は変動するということです。

Freshbot が新しいWebページを追加すれば相対的にその他のWebページの順位は入れ替わるでしょう。例えばあなたが列に並んでいて前から10番目だったとします。でも自分勝手なおばさんが10人ほど横から割り込んできたら、あなたの順番は20番目になりますね。これと同じです。また、既に登録済みのWebページでも最新の情報を反映すると検索アルゴリズムによる評価が変わり、当該キーワードとの関連性が変化することで順位が入れ替わることもあるでしょう。あなたが列に並んでいたところ、前の人が親切な人で「お先にどうぞ」といってくれたらあなたの順番ば1つ繰り上がります。

繰り返します。Everflux は流動的に順位が変動することを指しています。これが発生する原因は Freshbot が毎日新しいWebページを追加したり既存のWebページの情報をアップデートするからです。これが Everflux の大まかな仕組みです。

では次に、具体的にどの時点で Everflux が発生する可能性があるかさらに詳しく見ていきます。

Everflux が発生する個々の要因

具体的に Google のインデックスで何の処理がが発生した時に順位変動が起きるのかは、Freshbot のプロセスサイクルを知ることで理解できます。まず次の図をご覧下さい。

Freshbot サイクル

この図は Freshbot が行う一連の作業を図式化したものです。左から右に流れていきます。基本的に Freshbot は3つのプロセスを繰り返すだけです。

まず第1のプロセス。Webをクロールして、新しいWebページ情報を探していきます。インデックス掲載済みのWebページを訪れた時には前回訪問時と比較して更新されていないかどうかを確認します。更新されていればその情報を取得します。新規のWebページを発見すればその情報も取得します。

次に第2プロセス。クロールして取得したWeb情報は検索結果に反映します。この時日付入りで表示をします。

ところで、この「日付入り表示」の時点で順位が変動しますね。つまり

(1) Freshbot により新規Webページが追加された時 - 従来の掲載順に新たなページが加わるため、相対的にその他のページの順序も変動する

(2) Freshbot により既存ページの情報がアップデートされた時 - 最新の情報に書き換えられることで、検索アルゴリズムによるキーワードとの関連性評価が変わるため相対的に他のページより適合率が上昇し順位変動する可能性がある

この2つが Everflux の一要因であることがわかります。

Freshbot により日付入り検索結果は、検索サイト利用者に対して「この情報は最近取得した新鮮なものだよ」という「新鮮さ」をアピールする為に表示します。いいかえると、一定時間経過後は新鮮ではなくなりますので、ここで第3のプロセスに移るわけです。

第3のプロセスは条件分岐します。Webページによりいずれか1つが実行されます。どういった条件でどれになるかは解明されていませんので説明しません(※ Google のみ知る)。

まず「直前の状態に戻って継続表示」とは Freshbot によって最新の情報に書き換えられる前の状態、つまり相対的に1つ古い情報に戻って引き続き検索結果に表示されることを指します。

「Freshbot 再訪」とは、再び同一Webページを訪問して更新されていないかどうか確認します。更新されていれば第2プロセスに戻って日付入りで検索結果に表示します。

「継続表示」とは、日付は消えても引き続き検索結果に表示されていることを指します。つまり、Freshbot によって取得されたWebページが安定的にインデックスに掲載されることを意味します。昔の Deepbot により掲載されたのと同じ状態です。

最後の「消滅」とは、一定時間経過後にはインデックスから消えてしまうことを指します。これは第2プロセスで「新規追加Webページ」を表示していた時によくあります。なお、同じ新規追加ページでも「消滅」する時と「継続表示」する時がありますが、先述した通り条件はわかりません。

ところで、いずれに分岐しても、順位変動が起こる要因なります。つまり、このプロセスを経て次の要因により Everflux が発生します。

(3) Webページの情報が直前の状態に戻った時 - キーワードとの関連性が最新時のものと比較して相対的に変われば、順位変動の可能性がある(=第2プロセスの時点で順位が変動したなら、このプロセスで再び順位変動が起こる)

(4) Freshbot により表示されていたWebページが消滅した時 - 以前存在したページが消えるのだから、相対的に順位変動は発生する

この分岐を経た後は一番最初に戻ります。

話をまとめると、Everflux という現象は次の4つが毎日発生するために起きる現象であることがわかりました。

(1) Freshbot により新規Webページが追加された時点

(2) Freshbot によりWebページの最新情報が反映された時点

(3) Freshbot により掲載された新規Webページが消滅した時点

(4) Freshbot により反映されていた情報が無効となり直前の状態に戻された時点

この4つに加えて、(5)「ページ外要因がインデックスに反映された時」(6)「消滅したWebページをインデックスから削除した時」(7)「PageRank値が再計算された時」も順位変動に大きな影響を及ぼしますので、Everflux の要因になります。

このように様々な要素が日々複合的に絡むことでGoogleの順位変動は常に変化するのです。

Everflux の流れ

ここまで理論的な Everflux の説明をしてきました。イメージが沸かないという方もいるかと思いますので、具体的にあるWebページがどのような感じで掲載順位が変化していくのかを図にしました。

Google Everflux 現象

仮に、12月1日に検索キーワード「クリスマスツリー」で検索した時に1位に表示されているページ1があったとして、このページ1の順位の流れを追っていきましょう。

12月1日

12月1日に、ページ3とページ5がWebページの更新をして Freshbot がその情報を取得したとしましょう。すると、12月3日にはそれが反映されます(※ Freshbot はWebページ更新/追加後24〜48時間程度でインデックスに反映します)。図中の青色のページは Freshbot により最新情報にアップデートされて、日付入りで表示されていることを意味します。

12月3日

ページ3は、情報アップデート後に検索アルゴリズムで再評価を行った結果、直前時よりキーワードとの関連性が高いと判断されたため1位に表示されるようになりました。ページ5も最新情報をもとに再評価をした結果、以前よりキーワードとの関連性が高いと判断されて4位に表示されるようになりました。

ところで、ページ1,2,4は 12月1日時点では更新をしませんでした。しかし当該キーワードで関連性があると判断された他のページ(3,5)が更新され順位が変動したため、相対的に1,2,4も変わったわけです。よくSEO関連のMLや掲示板にて「私はページを何も更新していないのに、順位が低下した」と嘆いている方がいますが、理由はこの通りです。順位は相対的なものですから、あなたが何もしなくても他の人が更新すれば順位は変わります。

12月5日

今度は12月5日をご覧下さい。更新から一定期間経過した結果、ページ3とページ5に変化が起きました。ページ3は一定時間経過後に、インデックス内の情報が以前の状態に戻り、検索結果の日付も消えました(12月1日時点に戻った)。ページの評価も12月1日時点に戻ったため順位も3位に戻りました。

一方、ページ5は特にページを更新しなかったにもかかわらず、Freshbot が再訪問して再び日付入りで検索結果に表示されました。キーワードとの関連性には変化がなかったため掲載順位は12月3日と変わりません。(ページ5のように特にページ更新をしなくても Freshbot が頻繁に訪れて再度表示されることがあります。)

ページ1の順位をご覧下さい。12月3日は、ページ3が1位に表示されたため相対的に順位が2位に下がりました。しかし12月5日はページ3が3位に戻りましたので相対的に1位に返り咲きました。

12月7日

今度は12月7日です。1位に赤いページXが入っています。これは Freshbot が見つけてきた新規ページです。アルゴリズムによる評価の結果、キーワード「クリスマスツリー」と関連性が非常に高かったため、1位に表示しました。4位に入っているページYも同様にキーワードとの関連性が高かっため4位に掲載されました。

その他のページの順位をご覧下さい。ページ1はページX により順位が1つ押し下げられました。ページ4とページ5は、新規追加されたページXとYによって6位以降に押し下げられています。このように、前回まで存在しなかったWebページが割り込んでくるため、新規ページ追加時には特に順位変動があります。

以後の説明は省略しますが、図の通り新たなページが追加されれば順位は変わります。他のページや自分自身のページを更新すれば、キーワードとの関連性も変わりますので順位は変わるわけです。

Everflux による掲載までの時間について

冒頭で説明した通り、かつて Google が行っていた "Googleダンス"による月1回のインデックス更新は影を潜めました。現在は周期的更新により日々インデックスが更新され、この更新の中で PageRank の再計算の結果やページ外要因の情報が反映されている状態です。

では、仮に今日新たにWebページを掲載した時、それが Google インデックスに反映されるまでの時間はどれくらいでしょうか。

以前なら Deepbot を待てばいいので30〜60日程度という答えができましたが、現在は Everflux ですのでそうはいきません。

具体的にいつ登録されるのか明確な時間がわからないのが現状です。24〜48時間程度でインデックスに掲載されることもあれば、3日ほどかかることもあります。7日だったり2週間、3週間、それ以上の時もあります。個々のWebページについて Google がどのような条件で Freshbot による巡回を行い、それを収集し、「継続表示」(インデックスへの安定掲載)に移るのかそのメカニズムは解明されていません。

Google も Freshbot については様々なテスト運用を行っているようですので、今後も頻繁に変更が加えられることでしょう。それに応じて Everflux 現象の内容も変わっていきます。現在は不明な点が多いので、解明されたところでまたこの Everflux の話題を取り上げたいと思います。

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