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ユーザーの“脳”に伝わる広告とは? ~ ニューロマーケティングと Web マーケティング - セミログ

先日開催された Omniture Summit にて、ニューロマーケティングを活用した広告・ブランディングをテーマにした、Martin Lindstrom 氏の講演を聞く機会があった。非常に興味深い内容だったので、このニューロマーケティングとやらを Web マーケティングに応用できないか考えてみたいと思う。

まずニューロマーケティングとは一体何なのか。簡単に説明すると、人が何に基づいて物を買うのか、物事に興味を持つのかといった潜在的な嗜好を、人間の脳の反応を調査することで明らかにし、マーケティングに活用しようというアプローチである。

なぜ、わざわざこんな調査をしているのか。実は人が思考して導き出した考えが、脳が無意識に感じている感情とは違っているということがよくあるのだという。そのため、市場調査では「好き」という回答が多かったのに、実際世に出てみると全然ヒットしなかった…、ということが起こってしまうのである。

このニューロマーケティングの調査の中で、脳が強く反応する(興味を持つ、記憶に残る)要素が色々と分かってきたというのだ。我々が脳の調査を実際に行うことは難しいが、判明してきた事例を活用しない手はない。本稿ではこれらの要素をインターネット広告に活用する際の具体例を、以下の5つのポイントにまとめてみたので参考にしていただければと思う。

1.広告の内容がユーザーの目的や行動の流れに沿っている

ポータルサイトにバナーや動画の広告を出す場合に、そのページのコンテンツとの関連性があるかどうか、サイトの構成や雰囲気に合っているかというのは、ユーザーの意識に入り込むためにも重要な要素である。

関連しているサイトに広告を出せば、見てくれる人が増えるのは当然と思うかもしれないが、反対に関連性がないと、見てくれる人が増えないのではなく、『そもそも見てくれない』のである。

人は興味のないものは見もしないし記憶にも残らない。あれだけ目に入ってくるテレビ CM のどれだけを、ブランドと組み合わせて覚えているだろうか。インターネット上の様々な広告についても、ユーザーに意識されなければただの壁紙と変わらなくなってしまう。

ユーザーは何かしらの意図を持ってインターネットを見ているので(暇つぶしも含め)、ユーザーに認識されるためにはユーザー行動の流れに沿った広告を提示する必要がある。そして、ユーザーの関心を惹くことができれば、それだけ同じ画面上にある他の広告の印象を抑えることができるのだ。

またリスティング広告は、検索というユーザーの行動にマッチしているため、非常に認識されやすいといえるが、同じようなたくさんのテキスト広告が並ぶため、表示位置や広告文での差別化がより重要になる。関心を持たれなければ、クリックどころか読んですらもらえないのである。

2.印象に残る色やイメージやメッセージでブランドを印象付ける

色やデザインが目を引くというのは広告にとって重要な要素であり、強く脳にインプットされる。そして、人はブランド名やブランドのロゴを見た場合よりも、イメージカラー(ティファニーの箱の色など)であるとか広告の風景やキャラクター(マルボロの荒野にカウボーイなど)を見た場合のほうが、より強くブランドを意識するのだという。

こういったブランディングができている場合、会社名やロゴを出さなくても、ブランドを想起させるイメージを出すだけで十分に広告としての効果を発揮するのである。その意味で、テレビ CM や他の広告と統一感を持たせてブランドをイメージできる画像や映像をブラウザ上に表示することも、ブランディングのためには効果的である。

また、インターネット広告の場合は、ブランディングだけでなくサイトへの誘導が重要となるため、いかに色やデザインで目を引くか、クリックをしてもらえるメッセージを盛り込めるかという要素が必要になってくる。そして、もちろん誘導した先のサイトでも広告からのブランドイメージが統一されていて、かつ先に述べたように、ユーザーの興味の流れに沿ったコンテンツに導いてあげることが重要である。

3.広告を見たユーザー自身が体験しているイメージを持たせる

人は本能的に、他人の動きを真似たり、感情を共感したり、自分を相手の立場に置き換えたりするのだという。本の登場人物に感情移入したり、かっこいいものや流行っているものを見ると、それを身に付けた自分をイメージして欲しくなったり、笑顔で接客されると気分が良くなったりするのはこういった要因があるからだそうだ。

ということは、広告を見たりメッセージを目にしたりしたときにも、ユーザー自身がそれを体験しているようなイメージを持てると、それだけ共感しやすくなるといえる。そして、もちろん広告をクリックした先にはさらなるユーザー体験が待っている必要がある。その気になってサイトまで来たのに、見たいものが見つけられずに気持ちが冷めて離脱しまっては元も子もない。

広告とその先のサイトが連動していることが、広告の効果を大きく左右するのである。そして、満足な気持ちを感じることができれば、また体験したいという思いから記憶にも残りサイトにまた訪れてくれるのである。また、一般の人からの体験情報というのは自分と同じ消費者の視点であり、より具体的にイメージを思い描けるため、口コミ情報や他の人のレコメンド情報などは非常に影響力が強くなるのである。

4.広告でユーザーの個人的な不安をあおる(ただし不快な印象は与えない)

マイナスの感情(不安や恐怖)をイメージさせることも、同様に効果は大きい。過去に体験したり、見たり聞いたりしたような不安や恐怖の感情は、意識していなくても脳に刷り込まれていて、真っ先にイメージが喚起されるのだという。

今買わないと、今対応しておかないと後で大変なことになってしまうという不安をあおり、広告をクリックした先には解決策が待っているという流れだ。もちろんサイトにはきちんと解決策が提示されていることが大前提である。

リスティング広告などテキストの勝負だけでも十分効果的な手法だろう。ただ、例えば広告の画像や映像が不安を通り越して不快な気持ちを与えてしまうと、かえって敬遠されてしまう。境目は難しいが、何事もやり過ぎは良くないということだ。また内容以前に、強制的なポップアップ広告などは、広告を見る以前に不快感を与えてしまう可能性もあるので、広告の出し方についても十分な考慮が必要といえる。

5.視覚だけでなく聴覚にも訴える

視覚だけでなく五感全体に訴えかけたほうが、より脳への記憶は強くなるのだそうだ。特に嗅覚が一番強いのだそうだが、インターネット上で匂いを伝えるのは難しいので、考えられるのは聴覚である。視覚と聴覚、それぞれ単体でブランドが分かるロゴや音を見たり聞いたりした場合と、同時に体験した場合とでは、後者のほうが2倍以上強く脳が記憶するのだという。

インターネット上でも CM と同じ音楽を流したり、広告の中の人物が声で語りかけてきたりするのも、ユーザーに強く認識させるには効果があるようだ。ただ、テレビと違ってインターネットでは音声が出ることを前提にしていない場合もある(会社では大抵ミュートしているであろうし、急に音が出ると慌ててしまうかもしれない)ので、音が出ることを伝えるなどの考慮も必要であろう。

もちろん、広告から誘導した先のサイト内部でも同様のことがいえる。ただ五感全体に訴えかけることは Web だけでは無理なので、全体の広告やプロモーション戦略の中で展開し、それを部分的に Web でも共有するというのも1つの方法である。

以上、人間の脳に響く広告のポイントについて述べてきたが、特にインターネットの場合、広告はあくまで入口に過ぎないので、きちんとサイトに誘導して実際の購買につなげるためにも、広告から誘導したサイト自体も、広告との一貫性を保ち、ユーザーの流れを止めてしまわないようにサイトを最適化していくことが何よりも重要である。

執筆:株式会社アイレップ Web 解析グループ 柏崎貴史

cf.

Buyology

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