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SEO:Google、nofollowリンクの仕様変更、「PageRankスカルプティング」無効に

米国で開催中のSMX Advancedにおいて、米GoogleウェブスパムチームトップのMatt Cutts氏が、rel属性のnofollow(以下、nofollow属性)を利用した際のPageRankの流れの仕様を変更し、同氏も過去に推奨していた、いわゆる「PageRank Sculpting」(ページランクスカルプティング)が無効になったことを明らかにした。

So today at SMX Advanced, sculpting was being discussed, and then Matt Cutts dropped a bomb shell that it no longer works to help flow more PageRank to the unblocked pages. Again — and being really simplistic here — if you have $10 in authority to spend on those ten links, and you block 5 of them, the other 5 aren’t going to get $2 each. They’re still getting $1. It’s just that the other $5 you thought you were saving is now going to waste. [Google Loses “Backwards Compatibility” On Paid Link Blocking & PageRank Sculpting, Search Engine Land]

PageRankスカルプティングとは

そもそも「PageRankスカルプティング」を知らない人も多いと思われるので、まずこの用語について解説する。

たとえば、目の前にホールケーキが1つあり、これをAさん~Dさんの4人で分けて食べようとする。仲良く食べれば1/4ずつのケーキがもらえるが、ここで「CさんとDさんにはあげないよ」(=nofollow)としてケーキをわければ、A~Bさんの2人は1人あたり1/2ずつのケーキを食べられるのでうれしいだろう。

これがPageRankスカルプティング。つまり、一般にページAからページBにリンクが張られた時、AからBに渡るPageRank(リンク)評価は、Aが持つアウトバウンドリンク(外向けリンク)数で割った値になる。たとえばページAのPageRankが100、アウトバウンドリンク数が20であれば、1本あたりのリンク評価配分は 100/20 = 5になる。しかし、nofollowを使ってこの半分のアウトバウンドリンクを制限すると、配分量は 100/(20-10) = 10 となり、制限を受けないページがより多くのPageRank評価を受けられる。

ウェブサイト上で発信しているあらゆるコンテンツ(URL)が等しく高い検索性を確保する必要は必ずしもない。たとえば「プライバシーの取扱について」「金融商品の規約」「ログイン後でなければ閲覧できないページ」など、必ずしも検索エンジンからのファインダビリティを要求しないコンテンツはいくつかある。こうしたページに対するリンクにnofollow属性をつけることで、それ以外のページへのリンク評価配分量を増やせれば、より重要なページの検索上位に表示されるチャンスを高められる。

たとえば日本国内のサイトなら、コトバンクBuzzurlといったサイトがPageRankスカルプティングを実装することでPageRankフローの最適化を行い、検索エンジンからの集客を強めている。もちろんこの手法は全く問題がないし、事実、Google Matt Cutts氏も自身のブログやYouTubeでの動画でたびたび推奨してきた。

ところが今回SMX Advanced で発表されたのは、このPageRankスカルプティングが無効になる、という話だ。

先ほどのケーキで説明すると、今回のルール変更は「4人いるからケーキを4均等するけど、CさんとDさんにはあげないので、ゴミ箱に捨てちゃえ」という話だ。つまり、(1) リンク1本あたりの配分量は、nofollow の有無にかかわらずアウトバウンドリンクの数で決める、(2) nofollow がついたリンクには従来通りPageRankを渡さないが、それは他に配分せず、破棄してしまう。nofollow の有無にかかわらずリンク1つあたりが受け渡し可能なスコアは変わらないので、PageRankスカルプティングという手法は無効になる。

GoogleはSEOのベストプラクティスに言及するとき、その内容は過去から常に一貫性を保っており、今回のように、従来推奨してきた手法を全く無意味にしてしまうルール変更は異例。Matt Cutts氏がなぜこのようなルール変更を行ったのか、その理由については現時点で明らかにされていない。

ただ、理由はいくつか推測できる。たとえば、PageRankスカルプティングとは訪問者 = ユーザのためのサイト構築手法ではなく、完全に対検索エンジンのための仕様。これは、

ユーザーにとって役立つかどうか、検索エンジンがなくても同じことをするかどうか、などのポイントを確認してみてください。[ウェブマスター向けガイドライン]

ウェブマスター向けガイドラインで自ら掲げている上記項目と相反する可能性がある。これまで何度も「ユーザ第1で考えろ」といってきたのに、PageRankスカルプティングはユーザにとって、ほぼ関係ない話。

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