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[大学]の検索結果から考える URL と SEO

Yahoo! 検索で『大学』と検索してみてほしい。1ページ目には、大学公式サイトのほか、title 要素に「大学」を含み、大量の外部リンクを集めた一部の情報サイトが表示されている。その中で、ある不思議なページが上位表示され続けている。

長期間5位以内に表示され続けているのは、ある予備校のサイトの大学入試情報ページである。このページは title 要素に「大学」を含んでいないなど、本格的な SEO は行われていないと推測される。

2009年11月22日現在、上位30位までの間で title 要素に「大学」を含まないサイトはこのサイトだけである。そしてこのサイトは、弊社の記録では2年以上前から5位以内を維持しているのである。

Yahoo! 検索では、公式サイトが上位表示されやすい傾向がある。「大学」という検索でも膨大な数の大学公式サイトが並んでおり、大学の公式サイト以外を上位表示させるのは容易ではない。その中で予備校のWebページが数年にわたり上位表示されている理由について説明しよう。

予備校の情報が表示される原因

上位表示されている予備校の大学入試ページは、Web サイト内および Web ページ内部では SEO を考えた構成が取られていない。また、検索エンジンから評価される外部サイトからのリンクも、他ページと比較して大量のリンクを集めているわけでもない。

しかし、このサイトには他には無い大きな利点がある。10年以上前から同じ URL で価値あるコンテンツを公開し続けていることである。この Web ページを、過去の Web の情報を確認できるサイトで調査すると、1998年から同じ URL で大学入試の難易度など、非常に価値があるコンテンツを公開し続けてきたものと推測できる。

入試シーズンになると自然とリンクが集まるコンテンツを毎年同じ URL で公開しつづけ、10年に渡ってリンクが集まり続けた結果、他サイトのように内部の最適化や大規模なリンクを集める施策を行わずとも、検索エンジンからの評価に繋がっているものと推測される。

今回の Web ページは、他の検索エンジンの「大学」検索でも高い順位となっているわけではない。しかし、この Web ページが外部リンクを効果的に受け続けることは、Web サイトの全体の SEO 評価に結びついていると考えられるだろう。

同じ URL を使い続ける利点

今回挙げた例以外でも、同じ URL を使い続けることには様々な価値がある。直接の SEO の価値以外にも、ブックマーク機能を使うユーザーが混乱しない、関係サイトからのリンクの張替えの必要がないなど、複数の利点があるだろう。

SEO 観点だけで考えるのであれば、URL 変更を行ったとしてもリダイレクトを適切に行うことで、その SEO 価値を活かし続けることは可能である。ただ、リダイレクトを行った場合、いくらかのリンク価値は減衰すると考えられる。サイトのリニューアルや移転などでの URL の SEO ベストプラクティスは、適切なリダイレクトではなく、URL を変更しないことである。

しかし、同じ URL を使い続けることは必ずしも最適ではない場合もある。検索エンジンから評価されづらいサイト構造や URL のルールを使い続けることは、長期的なプラスにならないだろう。また、リニューアルなどでサイト構造が変わったにも関わらず、リンクが集まった重要なページだけ URL を変えないということは、運用ミスを招くことも考えられる。

重要なコンテンツを公開する URL は変更を行わず、同じ URL を使い続けるのが SEO 観点では最適である。もしも変更を行う場合には、2度と変更しないで済むように、サイト構造と SEO 観点の両方で最適なものにすることが必要であろう。

資産としての URL を失わないために

毎年のようにリニューアルを行い、デザイン改編とともに、URL 構造の変更を繰り返すサイトがある。組織や体制の改編の度に公開されているコンテンツの URL も変更されるサイトがある。それらは、Web ページの SEO 価値を定期的に捨てているとも言える。

もし URL 構造が、Web デザインや担当組織など変動しえる内容を元に考えられたものではなく、変わらない内容、例えば想定顧客層などを元に分類・整理していたのならば、長期間に渡り URL を変更する必要はないだろう。そのことは、冒頭で説明した Web ページのように、貴方の Web ページの力を着実に溜めていくための力となるだろう。

検索エンジンが Web ページを評価する価値の多くは、ドメイン・URL に対して紐づけられる。その価値を最大化するために、自分のサイトが10年後になっても使える URL・サイト構造になっているかを考えてみてはいかがだろうか。

執筆:株式会社アイレップ SEM 総合研究所 辻 正浩

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