SEMリサーチ

企業で働くウェブマスター向けに、インターネット検索やSEOの専門的な話題を扱います

SEM業界で働く上で最初に勉強して欲しいこと (2) 「検索利用者と検索サービスを理解すること」

2. 検索サービスを理解すること

自分が仕事をしている業界の市場環境、そこに関わるヒト、モノ、その他の資源について深く理解する必要があることは、どんな業界でも同じです。適切な商品やサービスを最終消費者に届けたり、お客様と十分なコミュニケーションをとるためには欠かせません。

これは同時に、検索領域で発達した技術と手法を用いる上で「やっていいこと」と「やってはいけないこと」を判断するためのモノサシを自分で持ち、養うためにも必要なことです。

例えば、SEOというサイト最適化技術を極めていくと、任意のウェブページを、狙ったキーワードで難なく特定の検索エンジンの検索結果に表示させることが可能になります。あるいは、検索エンジンが提供する各種機能やサービスを、ある程度、外部から操作してしまうことも技術的にできるようになります。

しかし、技術的に実現可能であることと、それを現実社会で実行に移していいかは全く別の問題です。特にSEOの場合は、一定の倫理観や感性などが要求される仕事ですが、そもそも検索ビジネスや検索サービスの話を理解していないと、自分でやっていいことと悪いこと、あるいは考える必要があること/必要がないことといった区別が全くできなくなります。

たとえば昨年話題になった、Yahoo! JAPAN の検索サービスにおける、関連検索ワードやキーワード入力補助を悪用したスパムサービスが典型例です。これは技術的には可能ですが、検索サービスが誰に何のために提供しているのか、検索会社に機械的に無意味なクエリを連続的に送り続けることはどんな意味になるのか等を理解していれば、事業として決して実行には移さないでしょう。ところが、そもそもの話として「何故いけないのか」というのを理解していない人が、業界内にも意外と多いのが現実です。このケースでは、実際に多くの広告主が希望している、マーケットがあるという側面もあるようですが、単に広告主側の理解不足であり、求めに応じて何でもやっていいわけでは決してありません。むしろ、広告主に対して何が問題かを説明してあげなければいけない立場です。

さて、「Yahoo! JAPAN がYahoo!ショッピングの検索結果をウェブ検索に混ぜることはおかしい」「検索エンジンがアルゴリズムを公開しないことはおかしい」「入札金額をあげてもアドワーズ広告の掲載順位が上がらないことはおかしい」とか、私から見れば「お前がおかしいよ!」といいたくなるようなことを平気でいう人がいるのですが、こういう疑問が出てしまうのは、検索サービスに対する理解が全然ないことに起因します。検索業界にそれほど詳しくない方が指摘するのはやむを得ないと思うのですが、業界にいる人が上記のような疑問を持つ、あるいはこうした疑問に応えられないとしたら、それはちょっと恥ずかしいと思ってもらったほうがいいです。リスティング広告やSEOの運用に携わるのであれば、少なくとも、検索サービスのことをよく理解しましょう。

キーワード入力補助や関連検索ワード、ユニバーサル検索、地図検索というのは、業者のために追加された機能ではありません、利用者のために提供されているのです。また、検索サービスは、広告主の一方的な希望だけを押し込んでも他のみんながハッピーになれません。検索サービスに関係する「検索利用者」「検索会社」「広告主」の三者がハッピーになるためにはどうするか、という原理原則を守った上で、どういったマーケティングが効果的かを考えていくアプローチを考えてみたらいかがでしょう。

3. 検索利用者を理解すること

すでにSEM業界で働いている人であれば、毎日のように検索キーワードの検索回数やインプレッション、コンバージョン、CPA、etc. 様々なデータを見ているに違いありません。でも、その画面とにらめっこしていて本当に検索利用者のことを理解したと勘違いしている人も少なくありません。もちろんマーケティングの効果検証としてそれらのデータと向き合うことは重要ですが、もう少し広い意味で検索利用者のことを理解しようとしてみましょう。特にこれからこの業界に入る方は。

皆さんの職場の同僚だけでなく、友人、自分の両親、あるいは親戚、可能であれば全然知らない人が、どんな風に検索エンジンを利用しているかを観察したことはありますか。世間一般のユーザーは、検索エンジンをどの程度使いこなせるかを知っていますか?

私は時折、図書館や電車、ほか色々な場所で、誰かが検索している場面を見かけた時、その検索を観察していることがあります(※それを見ていても不審ではないような場面です)。土日は都内や大学の図書館で仕事をすることがあるので、特に大学生が検索をしている場面、友達とあれこれ探している場面というのは目にするのですが、そういった検索の場面を見ていると、いつも新しい発見があります。実家に帰って自分の親が何かを探そうとして検索しているのを見ると、いつもイライラしますが(笑、同時に、ああ、検索エンジンはあれこれ検索機能を提供しているけれども、現実にはこの程度しか役に立っていないんだということがよくわかります。

もし周りに、検索がヘタクソな人や、一応PC利用歴は長い人の検索している場面を見る機会を得るといいでしょう。現実の検索利用者を見ると、たとえば先日のGoogle +1 やGoogleインスタントプレビューなどの新機能が、実際にどの程度の影響になりそうかを簡単に予想できるようになりますし、それと同時に実際のSEMへの影響度も推し量る感覚が身に付けられます。

次は「検索アルゴリズムはブラックボックスという前提を捨てろ」です。

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