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米MSとFacebookが連携、Bingのソーシャル検索を強化 「いいね!」を検索上位に表示

<a href="http://video.msn.com?mkt=en-us&brand=msn video&playlist=videoByUuids:uuids:243216f7-9941-4f48-a2d0-2065e06a47b5&showPlaylist=true&from=bingblogplayer_en-us_bing&fg=Bing_Marketing_player_bing_blog" target="_new" title="Facebook Friends Now Fueling Faster Decisions on Bing">Video: Facebook Friends Now Fueling Faster Decisions on Bing</a>

米Microsoftは2011年5月16日、検索エンジン Bing(ビング)とソーシャルネットワーク最大手・Facebookとの連携強化と新機能の発表を行った。段階的に進めてきた、Facebookの「いいね!」(likes)とオーガニック検索の融合を強化し、「いいね!」を多数集めるウェブページを検索上位に表示するなどの改善を行う。

「検索とソーシャルの境界線を取り除き、新たな検索体験を提供する」

Microsoftは2009年6月のBingリリース以後、"Decision Engine"(意思決定エンジン)のコンセプトを掲げて、検索ユーザーが抱える様々な問題や課題の解決、そして意思決定を支援するためのサービスを提供してきた。たとえばクイックタブなどによるクラスタリング、ショッピングエンジンや旅行エンジンといった専門検索の統合と強化、インスタントアンサーなどだ。今回発表した新機能は、Facebookとの強固な提携によって実現した「友人効果」(Friend Effect)の導入により検索の世界を変えようという試みだ。

Microsoftと調査会社・Impulse Researchが共同で実施した調査によると、ユーザーの90%は意思決定の前に家族や友人からのアドバイスを求めており、また、ユーザーの80%は友人の承認(同意)を得られるまで決断を先送りしているという。こうした、友人のアドバイスによって決断が下されるという「友人効果」は様々な場面で重要であるにもかかわらず、旧来の検索エンジンはこの問題を解決していないと指摘。BingとFacebookの統合により、検索の世界に「友人効果」 - 現実世界で日常的に行われているプロセスを実現し、ユーザーの検索体験を改善することができると説明する。

『現実世界で私たちはどのように意思決定をしているのか?それは友達との会話を通じてだ。もし私が車を探しているなら、友人に尋ねる。もしレストランを探しているなら、友人に尋ねる。そう、日常の多くの意思決定は自分自身だけで行われるのではなく、友人と決めるのだ。我々はそれを、検索体験に持ち込もうとしている』(Microsoft Search Technology Center (STC)グループプログラムマネジャー・Paul Yiu氏)

Microsoftは今回、数多くの新機能を発表したが、大別すると「信頼できる友人」(Trusted Friends)、「集合IQ」(Collective IQ)、「対話型検索」(Conversational Search)の3つに分類される。それぞれのカテゴリごとに、機能を紹介していく。

信頼できる友人(Trusted Friends)

交友関係の深い、信頼できる友人の意見を検索結果に明示的に反映することで、検索の関連性を高めようという試みだ。第1に、これは数か月前からすでに実装されている機能であるが、オーガニック検索結果内に、友人が「いいね!」を押したリンクが含まれている場合、最大3名のユーザーのアイコンと共に、いいね!ボタンが押されたことを示すコメントが表示される。ユーザーは検索結果にあふれる大量の情報の中から、面識あるユーザーの意見を参照することができる。たとえば新しい液晶テレビを購入しようと情報収集を行っている時に、友人が意見しているサイトを見つけることは情報収集の効率を改善できるはずだ。

第2に、「いいね!」に基づいた検索結果のパーソナライゼーションが強化される。友人が「いいね!」を押したリンクが自動的に検索上位に表示されるようにすることで、検索結果に埋もれているリンクの中から友人の意見に基づいて検索順位が改善されるようになる。

もちろん、友人の興味・関心が自分といつも一致するとは限らず、自分が知りたい分野について詳しい友人がいないというケースも考えられる。こうした問題を解決するのが、次に紹介する集合IQ(Collective IQ)だ。

集合IQ(Collective IQ)

集合IQとは、Facebook全ユーザーの「いいね!」を集計して、話題のニュースや記事、Facebookページを検索結果に表示する機能だ。たとえば、レシピサイトについて検索した時、多くのユーザーが「いいね!」を押している人気レシピサイトを探し出すことができる。Paul Yiu氏は、5億人のFacebookユーザーの「いいね!」を集めた巨大なデータベースの活用により、有用なサイトを探す手助けがあると説明する。

また、Bingは企業などが開設するFacebookページの投稿情報も検索結果に含めるため、「いいね!」を集めた企業の各種プロモーションや特典も入手しやすくなるという。

「対話型検索」(Conversational Search)

検索という場を単純に検索ユーザーと検索サーバによるやりとりではなく、友人の意見を尋ねられるなど他のユーザーと情報を共有したりアドバイスを求められる場に変える機能だ。

具体的には、(1) ショッピングリストを友人と共有して、買い物のアドバイスを受ける、(2) 人物名で検索すると、詳細なプロフィール情報を表示する、(3) 旅行に行く前にスケジュールを共有したり、新しい目的地を見つけたり、その場所の詳細を得たり、その場所に住んでいる(住んでいたことがある)友人を探す、といったことが実現する。

Facebook「いいね!」機能がついた新Bingバー

Facebookを通じてもっと多くのウェブサイトやページを評価できるように、Microsoftは新しいBingツールバーもリリースした。このBingバーは、Facebookの「いいね!」ボタンを搭載しており、閲覧しているあらゆるウェブページに評価を行うことができる。

FacebookデータにアクセスできるのはBingだけ

ソーシャルメディア上で発信されたユーザーの意見を検索結果に反映させていくソーシャル検索の分野では、BingとGoogleが激しく争っている。Bingにとってのアドバンテージは、GoogleはFacebookデータの奥深くにはアクセスできない点だ。Facebookの「いいね!」を活用できるのは Bing だけであり、それを軸に検索の強化を進めている。comScoreの最新調査によると、Bing のシェアは15%に達しているが、Yahoo!のシェアを奪っているにすぎず、Googleを支持するユーザーの牙城が崩せているわけではない。

Facebook Friends Now Fueling Faster Decisions on Bing

http://www.bing.com/community/site_blogs/b/search/archive/2011/05/16/news-announcement-may-17.aspx?wa=wsignin1.0

Bing Makes Search Social with Help from 500 Million Friends

http://www.microsoft.com/presspass/features/2011/may11/05-16BingSocial.mspx

Bing Now Helps You Make Decisions With Your Facebook Friends

http://www.microsoft.com/Presspass/press/2011/may11/05-16BingFriendsPR.mspx

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「いいね!」に基づいた検索結果のパーソナライゼーションやカスタマイズが成立するのは、(1) その「いいね!」がコンテンツに対する評価であり、自分の仲の良い友人にも勧められるという意味を持っていて、(2) こうやって堂々と検索結果に影響すると宣言した後も、「いいね!」が意図した通りに利用されて、しかも (3) Facebookでつながっているユーザーが、上記の"マイクロソフトの文脈で言う友人関係である" といった条件が必要です。つまりサービス設計側の思惑通りのユーザーが利用してくれている場合は、彼らが思い描く世界のように、きっと検索は便利になっていくのかも知れません。

でも、本当にそうなるの?たとえば今の企業のFacebookの使い方や、Facebookユーザのつながりの状況を考えた時に。スパムの問題は将来的にテクノロジーで解決できるかも知れませんが、LIKES や友人の信頼性の問題はどうしようもないと思うんですよね。もちろん、ソーシャル検索が役立つ場面は確実にあるのですが、現在のようにジェネリックサーチ全体に適用しようとするのはちょっと疑問。

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