SEMリサーチ

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検索エンジン各社は何故、「いいね」「+1ボタン」数を検索順位に反映させない?

小ネタ。検索エンジンやSEOが大好き系統の方から質問されることが多いのですが、「検索エンジンはどうしてFacebookいいねやGoogle+1 といったソーシャルの評価を直接検索順位に反映しないのですか?」

ここでは (1) 文脈の評価と (2) スパム問題に触れます。

(1) 文脈的評価は、例えば次のようなケースを考えてみます。

  1. 永田町にある高級料亭に「いいね」した
  2. 私の自宅の近所にあるファーストフード店のFacebookページに「いいね」した
  3. SEOのゆるキャラ・辻さんのFacebookページに「いいね」した

上記3つは同じ1つの「いいね」ですが、意味が全く違いますね。最初の高級料亭は過去にそこで会食をして素晴らしいところだったから「いいね」(料亭の品質に対する好意的評価)をしました。2つ目は単に割り引きクーポンが欲しかったからいいねした(取引のいいね)であって、別にそのファーストフード店が良いとは何とも思っていません、単に食事を安く済ませるためだっただけです。最後の辻さんのページにつけたいいねは、ま、かわいそうだからボタン押しておいてあげるかと同情しただけかもしれません。

要は、必ずしも対象ページの品質や信頼性に対する投票という解釈が適切ではないことが少なくないため、それらの情報に基づいて(品質や信頼性のランク付けをしたい)検索に直接反映することは必ずしも適切ではないということです。

実は2003~2006年にソーシャルブックマークサービスが登場し始めた頃に全く同じ議論がありました。『将来、検索エンジンはソーシャルブックマークの登録数に基づいて検索順位を決定する』と。現実には、ソーシャルブックマークにおける「登録」は、必ずしも対象サイトの品質評価を表していないことが多いですよね。

2点目。スパム問題。これはMatt Cutts氏が以前説明した通りで、ユーザー側で簡単に情報操作が行えるような機能をシグナル(検索順位を決めるための手がかり)として用いることは大変危険なのです。検索エンジンからのトラフィック流入がビジネスに多大な影響を与えるようになればなるほど、それを悪用するウェブスパマーは増大し、騙すための手段を永遠に追求し続けます。インドや中国、フィリピンにいけばたくさんのいいね生産工場がある通り、お金で簡単に解決できるようなシグナルは使えないのです。

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