SEOのプロ渡辺隆広氏に聞く、「年末年始でこれだけはやっておきたい6つのこと」(エンジニアtype)
このインタビューの中で、(企業がSEOに取り組む場合)「マーケティング目標を明確にせよ」という話をしたのですが、その点について少し。新年を迎えることですし、改めて考えて下さいという提案も込めて。
検索順位を上げる技術は重要だけど・・・
私は元々、2000年頃(SEO初めて3年目)に「マーケティングの理解がない人間がSEOをやっても将来はない」ということに気がついて大学院に行きました。順位を上げるだけなら少し勉強すれば誰でも技術を身につけることはできるけれど、企業が事業成長のために活用するのであれば何の課題や問題を解決するためにSEOに取り組むのか、どのように戦略立ててそれを実践できるかまで考えられなければ、SEOの(順位を上げる)技術なんて役に立たないと、当時、悟りました。そのような経緯もあり、特に企業がSEOを取り入れたいという時には、そのお客様とマーケティング目標を明確に設定するように気をつけています。よくある「キーワード○○○で1位にしたい」といった話はしません。
SEOを通じてどんな理想を描いているの?
順位を上げること自体は目的ではなくて、検索結果での露出度(Visibility)や発見性(Findability)を高めることによって、何か達成したい事柄があるはずですので、その理想系を明確に描くように配慮しています。例えば・・・
- 全世界のより多くの人々に、正確な医療情報を提供する(米国の政府機関)
- ユーザーが直面した問題や障害を即座に解決する(某PCメーカー)
- 顧客の旅行計画を一緒に組み立てる(某旅行代理店)
- 外国企業とのコンタクトポイント創造(某B2B企業)
- 検索結果の乗っ取り Amazon化計画(某通販企業)
- メディアの橋渡し(某外資系企業)
「ミッション」を設定するのです。SEOを実施する前と後で、どのような変化を期待するのか、自分の目に映る世界をどう変えたいのかを簡単に表現せよということです。
例えば1.のケース。例えばパンデミック(非常に多くの数の感染者や患者を発生する流行を表す言葉)が発生した状況において、人々は正しい予防法や対処法を得るためにインターネット検索を行います。しかしネット上には医学的裏付けの一切ない偽の予防法や、事実と異なるデマ情報がウェブやソーシャルメディアを通じて拡散しており、正しい情報を手に入れることが困難なことが往々にしてあります。
米国の某政府機関は、インターネットを通じて公式な(医療機関としての)情報を開示し、それを求める人々に、求めるタイミングで届けられるようにすることをSEOのミッションとしています。機関が使用する情報プラットフォームを最適化し、このプラットフォームを通じて発信したあらゆる情報が検索エンジンを通じて発見可能になるように努力をしています。2009年に発生したパンデミック2009H1N1において、この政府機関が発信した情報は、発信直後(数秒後)から、その新型ウイルスのことを知りたがっているであろう人々が使用するあらゆるキーワードで、Google検索結果の5位以内に表示されていました(2009年4月~5月)。
政府系の機関が発信する情報であるから検索上位に表示されやすいのではありません。検索での発見性を高めるための努力を最大限に行っているからこそ、こうしたことができるのです。
例えば3.旅行代理店のケースですと、インターネットユーザーの旅行関連の検索行動やその特性を分析した上で、検索を通じてその潜在顧客とどのようなコミュニケーションを図りたいのか、彼らにどんな価値を(検索を通じて)提供したいのか、SEOを行った上で自社の事業や顧客がどのように変化するのかをできるだけ可視化するようにします。それが明らかになれば、「何のキーワードをターゲットにすべきか」「どんなコンテンツを提供すべきか」「SEO実施後の効果測定」といった項目を、SEOが事業成長に貢献できているかという視点と一貫性を保ちつつ、適切なSEOの戦略を決めていくことが可能になります。
もしも「海外旅行で1位にしましょう」「1位になったら毎月20万円です」といった、『キーワードの順位売り』をしたとしましょう。商品は非常にシンプルですが、本当に顧客にとってそれは意味があるのかという疑問が残ります。1位になって売上げが増えることは無論あるのですが、それ実は大きな機会損失があるんじゃないのでしょうか。
6. のケースは、(自然)検索結果を自社サイトへアクセスするためのインフラストラクチャとして定義されている事例です。様々なメディアを駆使して自社のキャンペーン展開を行っているのであれば、いつ、誰が、どのメディアに接触して興味を持ってくれたとしても、その瞬間に想起したどんな検索キーワードであっても自社サイトへ誘導出来るようにすることを使命としてSEOの実施計画を立てています。これは1つ1つのキャンペーンについて、いわゆる「○○○で検索」で指定した○○○のキーワード以外で、そのメディア接触時に印象に残り、後で思い出して検索する時に思い浮かべる可能性があるキーワードを全て洗い出して行きます。
「○○○で検索」としていても、実際の消費者は○○○を正しく入力しないこともありますし、広告のより印象に残った情報のかけらを元に検索をしてくることもあるわけで、そういったところも押さえておけば、「自社に興味を持って検索してくれたユーザーを必ず検索を通じて案内できるようにする」という目標の達成率も高くなります。
SEOは、ウェブサイトの価値を高めるための手段でもある
SEOで検索による発見のしやすさ、見つけやすさを高めるのであれば、同時に来訪者にどんな情報を提供すべきなのかも考えなければなりません。しょうもないコンテンツしか提供していないのにキーワードの順位だけ上げたいんですというのは、サイト運営者のエゴでしかありません。順位を上げて露出度を高めるなら、それを通じて顧客に何を提供したいのかもセットで考えるべきです。だから、企業のウェブマーケティング戦略におけるSEOの位置づけは明確にされるべきです。
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それ相応の優れたコンテンツあってこそ、その狙いたいキーワードで順位を上げる意味もでてくるわけですから、だったら顧客にどんな価値を提供したいのかを描いて、それにあわせてSEOも考えていくほうが理に適っていると思います。