SEMリサーチ

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SEO におけるサーバー選び

SEO の観点からレンタルサーバーの選び方を考察してみましょう。

 SEO におけるサーバー選びの注意点についてです。SEO とサーバーの選び方に何の関連性があるのか?そう疑問に思う方も少なくないかもしれません。しかし、SEOを考えるのであれば、サーバー選択にも注意を払う必要があります。

 注意すべき最重要事項は次の2点、(1)安定性の高いサーバーの選択、(2)利用されるIPへの配慮 です。以下、1つずつ解説をします。

(1)安定性の高いサーバーの選択

 個人や中小企業でも気軽に使える低料金のレンタルサーバーサービスはたくさん存在します。質の良いレンタルサーバーを提供しているところもあればそうでないところもあるでしょう。例えば深夜になるとサーバーの反応がとても重くなるサーバー、サポートにメールを送っても返事をよこさないレンタルサーバー会社、メールサーバーが使い物にならない、CGIが重すぎる、等々様々です。

 さて、検索エンジンに登録してもらう為に重要な事は何ですか?それはクローラーにWebページを巡回してもらう事です。クローラーは、ユーザーがブラウザでURLを指定した際に該当するファイルを要求するのと同様に、インデックスする際にファイル要求をサーバーに行います。

 もしサーバーがダウンしていてクローラーからのファイル要求に応えなかったり、サーバーの処理が遅い為にファイル要求に対する返答が遅かった場合はどうなるでしょうか。ユーザーが何度アクセスしても表示されないウェブページがあれば諦めるのと同様、クローラーもファイル要求に対して返答がなかった場合はそのままタイムアウト処理をして立ち去ってしまいます。つまりファイルをインデックスせずに立ち去るのです。

 スパイダーはサーバーにファイル要求をした後、ファイルが返ってくるまでいつまでも待っていてくれるわけではありません。一定時間が経過するとタイムアウトしてそのまま去っていきます。つまりウェブページをインデックスしてくれません。

 いわゆる”よく落ちる”レンタルサーバーや不安定なサーバーを利用していると、もしクローラーが訪れたタイミングで不具合があればインデックスされない恐れがあるのです。

 では、もしサービスの悪いレンタルサーバーサービスを利用していて、スパイダーが訪れた時にサーバーがダウンしていたり、スパイダーからのファイル要求に対して反応が遅ければどうなるでしょうか?当然あなたのウェブサイトはインデックスされないのです。

 クローラーはいつあなたのWebサイトを訪れるのか事前に予測する事はできません。従って、いつクローラーに訪問されても問題なきよう、安定性の高いサーバーを選択する必要があります。 SEO を重要視し、検索エンジンからのトラフィックがあなたのビジネスを左右するほどの影響力を持っているのであれば、インデックス削除により急激なトラフィック現象及び売上げ低下というリスクを回避する為にも、サーバー選びに慎重になる必要があります。格安のレンタルサーバーは月々のランニングコストを削減する事に貢献しますが、結果としてトラフィックを失っては非常に甚大な損害を生み出しかねません。

(2)IPアドレスへの配慮

 検索エンジン会社がスパムを実行しているWebサイト(Webページ)を排除する手段として、そのWebページが存在するURL (ドメイン)をインデックスから排除する場合と、そのWebサイトが運用されているIPアドレスを排除する場合があります。特に悪質な場合、例えばクローキング利用といった場合は後者のIPアドレスごとインデックスから削除されます。

 IPアドレス毎削除された場合、そのIPアドレスで運用されている全てのドメイン上に存在するWebページも削除されることになります。

 さて、ここでレンタルサーバーの話に移りましょう。独自ドメインによるウェブサイトを開設できるレンタルサーバーを提供している会社でも、その運用方法について(1)ドメイン毎にIPアドレスを割り当てるIPベース、(2)1つのIPアドレスに複数のドメインを割り当てる Non-IPベースの2つの形態があります。後者はバーチャルホスト(Virtual Host)とも呼ばれます。

 前者は1つのIPアドレスに対して1つのドメインが割り当てられます。つまり1IPアドレスについて1ユーザーが利用します。一方後者は1IPアドレスに複数ドメインが割り当てられます。つまり1IPアドレスを複数の人間で共有して利用することになります。

 注意をして頂きたいのは後者の Non-IPベースで提供されているサービスです。もし、ユーザーの中に悪質な検索エンジンスパム行為を行ったユーザーがいたとしましょう。そして該当ユーザーのWebサイトが運営されているIPアドレスそのものがが検索エンジン会社側のブラックリストに掲載された場合、同じIPアドレスに割り当てられている他のユーザーも検索エンジンのインデックスから除外される危険性があるのです。つまり、IPアドレスを共有しているユーザーの中に迷惑行為を行うユーザーがいれば、他の善良なユーザーのWebページもインデックスから排除されるという巻き添えを食らうことになるのです。

 さらに、一般的に検索エンジンスパムを行う悪意あるウェブマスターは低価格のレンタルサーバー会社を使い捨てのように利用します。スパムを行い検索エンジンからスパムとみなされたら別の安いレンタルサーバー会社に鞍替えをします。レンタルサーバー会社を乗り換えれば、自分のWebサイトに割り当てられるIPアドレスも全く異なるものになるからです。

 このため Non-IPベースで運用されているIPアドレスの中には、既に検索エンジン会社よりスパムIPアドレスと判定されて検索エンジンにインデックスされないIPアドレスが存在します。こういったIPアドレスは「中古IPアドレス」と呼ぶのですが、もし Non-IPベースのサービスを契約したときにこの中古IPアドレスが割り当てられると検索エンジンに登録する事ができないのです。

 実際過去にクライアントのサイトで何ヶ月たっても検索エンジンにインデックスされず、IPアドレスを変更する事でまもなく検索エンジンに登録されたケースが何度もありました。年間数千円程度で利用できる Non-IPベースのレンタルサーバーを選択する時は慎重に選択をしましょう。

(執筆 渡辺 隆広 ACWS Japan SEMアドバイザー)

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