検索会社からの情報発信が進むサーチマーケティング業界
Web サイトへのトラフィックに多大な影響を与え、サイト運営者側からの検索エンジン経由の集客に関心が高まった2000年以降、Google をはじめ主要な検索エンジン会社はサーチマーケティング業界に対し、積極的な情報発信を行いサイト運営者や広告主と積極的なコミュニケーションをはかるようになった。
当初は匿名ながらも、米国の検索関連フォーラム「WebmasterWorld」にて Google 社員を名乗る GoogleGuy という匿名の人物がフォーラム参加者からの様々な疑問や質問について、それまで完全ブラックボックス化されていた Google の検索に対する考え方からテクニカルな問題まで、可能な範囲で回答をしていた。それに呼応して匿名ながら Yahoo! や Microsoft 社員も匿名 ID にて検索連動型広告やローカル検索などサーチ全般について頻出する疑問・質問や新機能についての情報発信を行うようになってきた。
今日では Blog というツールの登場により、各社それぞれ公式 Blog を持ち、サーチマーケッターが役立てる情報を発信している。日本でも Yahoo! 検索 project がインデックスやアルゴリズムの更新時にそれを発表したり、Google 公式 Blog で様々な話題が取り上げられていることからも理解いただけるだろう。
とりわけ非公開が大部分を占める Web 検索(自然検索)のランキングアルゴリズムにつても、Webmaster Central Blog や GoogleWeb マスター向けヘルプセンターなどを通じて、相当のボリュームのテクニカル情報を含む、検索エンジン対策に関心あるサイト運営者向けの情報が発信されている。
このように検索エンジン会社がサイト運営者との積極的なコミュニケーションを行う背景には、次のような理由がある。つまり、どのような作法に従うことで検索エンジン(=Google)がそれを適切にインデックスし評価するか、そして何を検索エンジンが嫌い、検索エンジンスパムと判定するか情報開示を通じてサイト運営者に伝達・教育することにより、パブリッシャーが作成する有益なコンテンツを効率よく検索エンジンでも認識し、ランク付けできると共に、検索可能領域(カバレッジ)も拡大させることができる。
さらに、何のキーワードと関連づけるべきかが(アルゴリズムで)判断しやすい環境が整えば、適切なキーワードとコンテンツをマッチさせることが可能になり、それは検索エンジン利用者に対し関連性の高い検索結果の提示というメリットをもたらすことにつなげられる、というわけだ。
以上の通り、検索エンジン側からも多くの情報が提示されるようになってきたわけだが、とりわけ本コラムの主要読者である日本の方々にとって最近注目すべきツールは、Yahoo!JAPAN から提供が開始された Yahoo! 検索サイトエクスプローラー(以下、サイトエクスプローラー)だろう。ここに以前から提供されている Google の Web マスターツールに加えて、正式発表こそされていないが Microsoft からも Web マスターセンターが提供されており、世界の主要検索エンジン3社のサイト管理ツールが揃ったことになる。
(以下、サイトエクスプローラー、Web マスターツール、Web マスターセンター3つを総称的に指す言葉として「サイト管理ツール」とする)
サイト管理ツールだから、実現できること
さて、サイト管理ツールは一体何を提供してくれるのか。「自分のサイトのインデックスやバックリンクの状況を確認したり、robots.txt の文法チェックができる」程度のことは、あちこちのニュースを読んでいると何となく想像ができよう。
しかし、各社似たようなツールであり同等の機能を提供しつつも、それぞれ独自機能を持ち、かつ(狙ったキーワードで検索上位に表示するという意味での)「SEO」に関心はなくとも検索エンジン経由の訪問者を否定しないのであれば、ツールの設定だけはした方が良い、という機能も実はある。そこで、 Google と Yahoo! の特徴的な機能について解説していこう。
動的URLの処理指示ができるYahoo! 検索サイトエクスプローラー
Yahoo! 検索サイトエクスプローラーのユニークな機能は、検索結果表示における動的URL(引数を持つURL、あるいは「;」「&」「?」の文字列を持つURL)の処理を設定できることだ。トラッキングやセッションIDなどの事由により引数を持つURLがある場合、そのまま放置するとインデックスや検索ランキングに悪影響が出る可能性がある。たとえば、実質的なコンテンツが同じであるにもかかわらず引数だけが異なるページが多数存在する場合、検索エンジン(YST)側で重複コンテンツと認識できなかった場合に、どちらも該当検索キーワードに対し等しく関連性を持つため(実際にはバックリンクなど他の要因により完全競合とはならないかもしれないが)、検索順位を互いに争う状況が発生する。あるいは、引数が異なるページにバックリンクが集まるためにリンクの分散といった問題も発生する。
そこで、Yahoo! 検索サイトエクスプローラーにてあらかじめ非表示にしたり値を固定する引数を設定しておくことで、URLが自動的にリライトされ効率的にYSTにインデックスさせることが可能となる。たとえば、netshop?product=1&sid=98yadh765 というURL文字列が存在した時、「sid」を非表示にすることでnetshop?product=1とすることができる。
Yahoo!検索においては、日常的なインデックス更新や小~中規模のアルゴリズム更新のタイミングにおいて、突然一部のウェブページの検索順位が大幅に下落するケースがあるが、その中のいくらかの要因はこうした同ドメインまたは同コンテンツ間における内部競合が原因と推定されるケースである。URLにおける引数の処理はサイトのシステム構築段階において基本要件として定義し、そもそもこうした検索エンジン上での問題が起こらないようにしておくのがベストであるが、その対処が無理だった(すでにシステムが構築されてしまっている)場合で、サイトエクスプローラー側の設定で解決できる問題であるなら是非活用した方が良いだろう。
ちなみにGoogleウェブマスターツールでは同様の機能を実現するツールは提供されていない。しかし、Googleではこの問題が解決できないのではなく、検索アルゴリズムによって自動的に処理してくれるので、あえてサイト運営者側が何かのアクションをしなくても問題なくインデックスされるようになっているので心配する必要はない。ただし、問題発生リスクを100%排除するためには、不適切な動的URLが生成されないようにすることが望ましい。
Googleからの連絡が届く「メッセージ センター」
個別の機能に目が向いてしまいがちなGoogleウェブマスターセンターであるが、「メッセージセンター」にも注目しよう。メッセージセンターとは、Googleがサイト管理者に対して何か連絡事項がある時に利用されるツールだ。具体的には、あなたのサイトに品質ガイドライン違反に該当する箇所、あるいはその恐れがある場合に、このメッセージセンターを通じてGoogleからの連絡が行われる。
たとえば、あなたがリスクを問わず検索順位上昇を目的とした、隠しリンクスパムと判断されかねないグレーな手法を用いたとしよう。それがGoogleのサーチクオリティ担当の判断によりガイドライン違反と判断された時、Googleはサイト運営者に対して、「警告」のメッセージを送る。幸い(?)にも、たとえ明白な検索エンジンスパムを行ったとしても今日のGoogleは突然インデックスから削除するわけではなく、あなたがガイドラインに違反していることを指摘し、○日以内に問題の箇所を修正しない場合はインデックスから削除する旨を通知してくれる(※ガイドライン違反の内容によって、警告の内容は異なるが、おおむね、その箇所を修正しなければインデックスから削除する、という趣旨のメッセージが届く)。
サイト上に電子メールアドレスが記載されていても、警告メッセージの送信主が本当にGoogleであるかを証明できないので、このメッセージセンターを通じて連絡をとってくる。たとえGoogleウェブマスターセンターのアカウントを開いていなくてもこのメッセージセンターを通じて届く(メッセージがストックされる)。ただ、サイト運営者がこのメッセージを見るためにはアカウントを持たなければいけないので、結局は利用した方がいいということだ。
「私はスパムみたいな怪しいことはしてないから関係ない」という人がいるかもしれない。しかし、確かに検索エンジンスパムは明確な意図と悪意がなければ実現できないが、サイト制作上の不手際やコーディングのミス、あるいはアクセシビリティー上良かれと思ってやったことが結果的にガイドライン違反とみなされる場合もあるので、あなたがスパムをやっているという自覚がある・ないにかかわらず、きちんと検索エンジン(Google)にインデックスされることを望むのであれば、万が一のためにメッセージセンターはチェックする(つまりGoogleウェブマスターセンターは使ってみる)ということをしたらいかがだろうか。
執筆:株式会社アイレップ 取締役 SEM総合研究所 所長 渡辺隆広