とあるSEO/SEM関連ムック本を読んでいて、とあるSEO/SEM業界の著名人が「SEO対策にならないのでFlashだけで構築したサイトは作るべきではない」という発言をしており、「それはWEBマーケティングの価値やネットの可能性を矮小化してるでしょう~」と思い、マーケティングの全体構造からメディアの役割を書いてみました。[マーケティングのフェーズ別、メディアのミッションと目的]
オンラインビジネスやマーケティング全般の雑誌ならともかく、このケースはSEO系の雑誌で読者がSEOの情報を求めているのですから、検索マーケティングの世界における一般的なベストプラクティスを述べるのは当然でしょう。それに、あらゆる条件下でフルFlashを否定しているわけでもなく、たとえば東京マラソン2009のサイトがダメだとはいわないでしょう。単に自分の思い込みで勝手に間違った方向へ拡大解釈しているように思えます。
また、技術的にはフルFlash(=swfでのみ構成されているサイト)を回避しても十二分にブランディングと検索性の両立させるサイトを作成することはできます。フルFlash回避=ブランディング(サイト)否定、にはならないのですよ。SEOは手段であって目的ではありません。ブランディングを目的にして、でも検索性も担保したいという場合に、SEOという技術的手段で回避すればいいだけ。実装をどのように行うかは、その検索性の具体的な目標にあわせて決めるのです。
揚げ足取りして「~可能性を矮小化」とか偉そうなに語ってますが、少なくともこの件については、SEOという技術の扱いに対する理解不足にしか思えません。
それはさておき。
SEOで推奨される事項というのは基本的にベストプラクティスの1つで、他の様々なビジネス要件によって柔軟に対応させなければいけません。Flashの扱いについても、SEOの世界では一般論として(フル)Flashは回避することが推奨されますが、目的やKPIによってFlash使用が望ましい、問題にならないケースも当然あります。インタラクティブなもの、視覚的に訴えることが必要で、その重要性が高いのに「テキストで作れ」というのはナンセンスです。
ただ、いつもコラムなど書いている立場の人間として申しますと、まず第1に(特に紙媒体)誌面の都合で説明を簡潔にしなければいけない場合があり、タカヒロさんが仰せられるようなことを説明しているとその話で誌面が埋まってしまうこと。第2に、SEMが主題の媒体ですと、読者がSEOのテクニカルな情報を望んでいることが多いので、SEOあるいはサイト制作の世界の中での最善策を提示するように調整します。こうした媒体や読者層に、ビジネスやマーケティングの全体構造の話に言及しつつSEOの説明をしても話が広がりすぎて論点がずれてしまい、かえって意図が伝わらない、読者が理解できないことも多いのです。
タカヒロさんのように全体をよく理解されている人や総合代理店の人に説明するとか、ターゲットの読者が自動車や飲料系メーカーのWeb担当者といった具合に、相手が見えている、範囲が特定できる場合なら全体の話を踏まえつつ説明した方が望ましいでしょうけれど。
セミナーや講演なら、アディダスや資生堂、トヨタのレクサスなどのサイトを例に出しながら、目的や役割を優先してサイトの設計やSEOの範囲や要件を決めよ、という話、あるいは、最近なら米HPのキャンペーンサイトを例にとって、ブランディング領域の要件をすべて満たしつつSEOの要件も取り入れる方法まで言及します。
【追記】 (2009/12/01) FlashやAJAX技術によるインタラクティブ性を維持しつつ検索性も担保しているケースは、米DellやHPなど大手PCメーカーのブランディングサイトで時折見られますので、興味がある方は参考にするとよいでしょう。技術的にすばらしいことをしているのではなく、サイト構築過程において守るべきSEOのガイドラインが遵守されていることが大きいように伺えます。