SEMリサーチ

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「SEO終了のお知らせ」という人はSEOの本質を理解していない

2013年最後の記事です。SEOが終了、時代が終わった、死滅だと言いたい人向けに。そう言う前にこの記事を読んでみて下さいな。

結論:検索エンジンを使って情報を探すという『検索の時代』が終わらない限り、SEOの時代も終わらないのです。

SEOの時代は終わった?終わってない?SEOは時代遅れ?

(今年はあまり見かけなかった気がしますが)毎年、定期的に「SEOの時代は終わった」「SEO終了のお知らせ」などと語る人が出てきて賑わいを見せるのですが、SEOは終わっていないし、この先も当分、終わらないでしょう。

SEOが終わった、終わってない論は、SEOを何と定義するかによって結論が変わります。しかし、「終わった」と結論づける人に共通するのは、SEOの意味や役割をはき違えているという点です。

SEOの定義や役割を勘違いされていることが原因か

例えばSEOを「検索エンジンを欺いて順位を上げるテクニック」と定義するのであれば、それは終わっています。あちこちで多数の死人を見かけます。数多くのアルゴリズムを欺く手法が今日のGoogleでは通用しません。しかし、そのSEOの定義は正しくありません。なぜなら、"その定義"はブラックハットSEO(Blackhat SEO、スパムSEO)の側面のみを指した言葉だからです。検索エンジンを欺いて順位を上げる行為は単なるスパム行為であり、良識ある業界関係者達も、Googleをはじめとする検索エンジン各社も認めていません。

SEOは検索エンジンを通じて情報を簡単に探し出せるようにするための技術

検索エンジン各社は、検索をより優れたものにするためのSEOには反対していません。例えばGoogleは『検索利用者に提供する体験や価値を高めることができるSEOであれば、歓迎する』(Matt Cutts, Google, 2004)といった意見を表明しています。検索品質の低下を招く「ブラックハットSEO」は絶対反対の立場ですが、「ホワイトハットSEO (Whitehat SEO)」は歓迎しています。また、SEMの本質を理解したマーケッターや専門家も、SEOは順位操作であるとは考えていません。

では、SEOとは何なのでしょうか。

本質的に、SEOとは、検索エンジンによる情報の発見性を高めるための技術です。あるいは、人間だけでなく、コンピュータ(検索エンジン)にもそのコンテンツの内容や価値を伝達するようにデザインする技術とも表現できるでしょう。ユーザーが必要な情報を、必要な時に、検索を通じて瞬時に見つけ出せるようにする、それを手助けするための行為がSEOであり、検索各社がウェブマスターに推奨しているSEOの考え方でもあります。ウェブマスターの視点で見れば、「発信した情報を、それを必要とする人に、検索を通じて届けるための技術」がSEOですから、この技術が不要(=届かなくていい)とは言えないでしょう。

インターネットという情報の海から、必要な時に、必要な情報へ瞬時にアクセスする手段は現状、検索エンジンです。その情報アクセスを支援するためのSEOは現在も、そして当分先の未来でも必要です。ですから、SEOの時代は終わってはいないのです。

SEOの時代が終わるシナリオ

もしSEOの時代が終わるとすれば、それは次の2つのシナリオが考えられます。第1に、Googleが優れた検索技術を搭載し、皆さんが書いた拙い文章でもその背後や行間、空気を読んで、関連性を評価出来るようになること。もちろん「ヒマ」と検索しても、その人の趣味や性別も推定して、ずばり検索意図に合致した検索結果を返してくれる「完璧な検索エンジン」が登場するシナリオ。第2に、検索エンジン以外の手段で瞬時に必要な情報を探し出せるツールが登場するシナリオ。いずれかのシナリオが現実となればSEOは終了します。しかし、いずれも数年のうちには登場しそうもありませんね。

結論:SEOは終了していない

何度も繰り返しますが、情報アクセスを検索に依存している限り、その情報を見つけやすくするためのSEOは必要、少なくとも現状の検索技術のレベルを考慮すると、サイト運営者が積極的に対応した方が検索結果はより優れたものに変えることができます。リッチスニペット、オーサーシップ、カノニカル、国際対応など、サイト運営者が明示的に検索会社にシグナルを送り情報理解の支援をすることで検索利用者が恩恵を受ける仕組みも数多く登場しました。正しいSEOが行われれば、検索会社も、検索利用者も、サイト運営者も、三者が恩恵を受けられるのです。

スパムは不要ですが、情報をコンピュータが処理しやすいようにすることは、検索技術が相当進化(後述)しない限り、人間が工夫をしてあげなければいけないのです。コンピュータは人間と同じように情報を解釈できないのですから、そのギャップを埋めるために検索会社は優れた技術開発に努めるし、サイト運営者は情報発信時に工夫(≒SEO)をする。きっといつの日か、サイト運営者が細かいこと気にしなくても検索エンジンが適切に解釈してくれるようになれば、SEOはいらなくなるでしょう。でも先述した通り、そんな未来はまだちょっと先だと思います。

最後に:マーケティングとしてのSEO

技術という言葉を繰り返し使いましたが、企業がSEOに取り組む上では技術だけで片付けてはいけませんので、最後に簡単に触れておきます。

企業がSEOに取り組むのであれば、その取り組みを通じて事業活動に何らかの成果(売上やリード獲得など)をもたらさなければなりません。従って、SEOの技術的な側面だけでなく、マーケティングとしてのSEOも十分に検討する必要があることは言うまでもありません。SEOを通じて、自社の事業活動にどのような価値をもたらしたいのか?を考える必要があるということです。ですから私は普段、SEOは(技術でもあり)マーケティングとしての位置付けも決める必要があるようアドバイスをしています。技術的なお話が多いSEOですが、マーケティングとしてのSEOの役割も考えてみましょう。

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いままで話題になっても、生暖かい目で見守りながらスルーしておいたこの「SEO終了のお知らせ」系話題ですが、年末ですのでちょいと書いてみました。

SEO終了と騒いでいる人は、まるで楽天市場のメールマーケティングの手法を例にあげて「だからメールマーケティングは全部スパム」と結論づけているような、一部の悪い事例だけ取り出して全否定しているだけなんですよ。

SEOの時代が終わった的な話をする人は、表面的な上っ面だけで全部を理解したつもりであれこれ言いたいだけで、情報検索(Information Retrieval)の世界を全然わかっていない人が多い印象(特に中途半端なSEさんとか)です。全体的にはSEOとは何かが理解されていないことに根本的な原因があるのでしょう。確かにここ日本は、よろしくない手法を用いるSEO会社が圧倒的に多いので、ネガティブな印象を持たれるのは致し方ないかもしれません。

本文で述べたSEOの定義や役割は、GoogleやMicrosoftなどが語るSEOに近いと思います。検索会社にとっても、検索結果をより優れたものにする助けになるSEOであれば歓迎、スパムはお断りという立場です。SEOが嫌いだという方は、そこで思考停止せずに、検索会社はSEOをどのように語っているのかというところから耳を傾けてみてはいかがでしょうか。

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