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MS Bingの検索技術:カテゴリー検索とウェブグループ

GoogleやYahoo!、Live Searchといった検索エンジンは、検索クエリに対して適合性が高いと判断した10件のリンク(ウェブページ)を検索結果に並べて表示するというアプローチをとっていました。しかし、マイクロソフトの最新検索エンジン・Bing(ビング)はウェブグループ(Web Groups)機能によって検索結果をあらかじめ割り振ったカテゴリに分類して表示するアプローチを採用しています。同社はこれを「カテゴリー検索」というコンセプトで呼んでいますが、検索結果をトピック(テーマ)によって整理・整頓して表示することで、利用者が検索に求めている目的を効率よく発見することを助けようとしています。[関連:マイクロソフト、検索エンジン「Bing」を発表]

ウェブグループについて、もう少し詳細に説明をします。私たちが利用する検索クエリの多くは、その属性によって共通の関連クエリを持っていることがあります。たとえば、「都市名」のクエリは、「ホテル」「地図」「アトラクション」「天気」「空港」「レストラン」のワードを伴うことが多く、同様に「映画」のクエリは「予告編」「サウンドトラック」「DVD」「出演者」「批評」「引用コメント」を伴いますし、「ゲームタイトル」は「発売日」「予約」「攻略」「公式」といったワードを伴うことが観察されています。

そこで、要求された検索クエリのトピックを分析して、数十万件もの検索結果リストをあらかじめ用意したカテゴリに分類して、整理して表示することで、検索タスクで求めている情報に効率よくたどり着けるようにしようとしたわけです。それがBingで採用されたウェブグループによるカテゴリー検索です。

たとえば「nintendo ds」と検索してみましょう。次のような検索結果が表示されます。

Bing クイックタブ

赤い枠で囲った部分がクイックタブ(Quick Tabs)と呼ばれる機能です。今回はクエリが「nintendo ds」(携帯ゲーム機)ですが、トピックがBingがカバー済みのカテゴリに一致したため、"Shopping" "Games" "Downloads" "Accessories" "Repair" "Controller" "Images" と目的に応じた分類が行われています。これらのタブをクリックすると、右側の自然検索結果が該当するトピックに合致するページ一覧に変化します。

ちょっと検索に詳しい方であれば、検索結果をカテゴリ分類する位のことは、かつてのAlltheWeb(その後Overture→Yahoo! Inc)やMooter、Frouteなどがすでに行っていることと思われるかも知れません。しかし過去の検索エンジンのクラスタリングは、検索結果を分析して動的にカテゴリを生成していたために、見当違いのカテゴリや検索タスク達成の効率化の観点からは利用価値が低い分類が行われてしまうという欠点がありました。Bingのウェブグループはそうした問題を解決しています。

ちなみにkyotoと検索すると、都市(観光地)クエリと判定して「Images」(写真)「Restaurants」(飲食店)「Map」(地図)「Weather」(天気)「Resorts」(リゾート)「Attractions」(アトラクション)というカテゴリが登場しますし、Bill Gatesなら人物クエリと判定して「Biography」(バイオグラフィ)などが登場します。

マイクロソフトによると、ウェブグループによる分類は「自動車」「旅行」「人物」「スポーツ」「健康」「エンターテイメント」(テレビ、映画など)、小売店(携帯電話やデジカメの販売など)、「イベント」に関連するクエリが対応しています。このウェブグループは、同社が昨年買収したPowerset(パワーセット)の技術も利用されています。

話を戻して、ウェブグループの機能について検索結果ページも見てみましょう。

Bing カテゴリごとにウェブページを分類表示している

従来の検索エンジンであれば、クエリに一致したページを関連性が高い順に並べていただけの自然検索結果のエリアも、Bingは整理して見やすく、探しやすいように表示していることがわかります。「Nintendo DS Games」という見出しをつけて、その下に関連するページを3つ、続けて「Nintendo DS Downloads」という見出しと、関連するページを3つ、「Nintendo DS Accessories」という見出しと関連ページを3つ~といった具合に、検索結果をトピックや目的毎に分類し、それぞれに含まれるページを少し表示するとうい形式をとっています。ちなみに、それぞれのカテゴリの最後にある「See more results」をクリックすると、該当カテゴリの検索結果一覧を表示できます。

この整理された検索エクスペリエンスの提供は、次のようなメリットがあります。たとえばGoogleで「クレジットカード」「キャッシング」「FX」といったキーワードで検索すると、検索結果が比較系アフィリエイトサイトで占拠されていることがわかります。それらの商品・サービスを提供する企業の公式サイトが全く表示されず、アフィリエイト系サイトばかりが出てくることが一般の検索利用者にとって役立つといえるでしょうか?クレジットカードと検索する利用者は、もちろん最も有利な条件で利用できるカードを探している人もいるかも知れませんが、申込をしたい人、どのカードを選ぶのがよいのかの情報を知りたい人、クレジットカードの種類を知りたい人など、さまざまな検索意図(query intent)を持っているでしょうし、同じ「クレジットカードに申し込む」意思を持っていても、さまざまな購買フェーズのユーザがいるでしょうから、一方的に偏った検索結果を提供することが好ましいとはいえません。

Bingのカテゴリー検索というアプローチはこの問題を解決します。「クレジットカードの比較系アフィリエイトサイト」はたとえば"比較"(Compare)などのカテゴリに全てまとめて納められてしまい、先述した通り検索結果には3件ほどしか表示しませんから、検索結果が過剰なSEOを行っているサイトばかりに占領されてしまうことはありません。同時に、さまざまな用途・目的から、ユーザに役立つ情報提供やサービス・商品を提供している企業やサイトが検索結果ページに現れるようになりますので、利用者にとってのメリットも大きいでしょう。(関連:BingとSEOの影響

従来の検索エンジンの「10本の青いリンクを羅列する」方式ですと、検索目的によってクリック→ブラウザ戻る→クリック→キーワード追加・変更→クリック→~と何度もクリックをしたりキーワード変更する手間がありますが、ウェブグループ機能の搭載によって、こうした無駄なクリックやアクションを削減することにもなります。

ちなみに画面左側のナビゲーションのエリア(Quick Tabsが表示されるところ)をエクスプロールペイン(Explore Pane)と呼ぶのですが、このエリアに表示される情報は検索タスクの内容によって動的に変化します。たとえばイメージ検索の場合はこのエリアに「画像の大きさ」「レイアウト」「色」「種類(写真、イラスト)」「人物」(顔だけ、など)といった検索絞込み条件のリンクが表示されますし、Bing Shopping であれば商品カテゴリ、価格、ブランドなどの絞込み条件が表示されます。このエリアに表示される内容は、検索タスクによって、その目的を効率よく達成するのに役立つ機能に変化していきます。

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