米Googleは2011年2月17日、交友関係(ソーシャルサークル※)に基づいた検索結果を表示するソーシャル検索(Social Search)を強化したことを公式ブログで発表した。英語圏で順次、適用される。
日本ではほとんど注目されてこなかったGoogleソーシャル検索だが、2009年に発表、翌年より欧米にてソーシャル検索ベータ版として提供してきた。
同社はFacebookやMySpace、Flickr、Twitter、Google Reader、Gmailコンタクトリストなど、交流関係情報が取得可能なあらゆる公開データ(ソーシャルサイト)をクローリングすることでソーシャルサークルのデータを生成。ユーザは、自身のGoogle Profile アカウントと他のソーシャルサイトをリンクさせることでGoogleソーシャル検索を利用することができた。ただし従来の同社ソーシャル検索は、自然検索結果の最下段にのみ表示されること、ソーシャル検索の対象は、ソーシャルサークル内のユーザが"作成・公開"したコンテンツのみが対象であるなど、比較的限定されたものだった。
今回の発表は、そのソーシャル検索を一歩推し進めたものだ。第1に、ソーシャル検索の結果が自然検索結果の中に融合され、検索キーワードとの関連性に応じて、Googleが適当と判断する場所にソーシャル検索結果が表示されるようになる。ただし、あくまで自然検索結果の中にソーシャル検索結果が混在するようになる表示位置に関する変更にとどまり、自然検索結果全体のランキングアルゴリズムにソーシャルサークルが発するシグナルが組み込まれたわけではない模様だ。
第2に、従来はソーシャルサークル内のユーザが「作成」したコンテンツに限定されていた検索結果が、Twitter等により発信・共有されたリンクにも拡大した。友人がTwitterでツイートしたリンクが検索結果に表示される場合は、shared this on Twitter といった記述が併記される。
第3に、ユーザ側のプライバシーコントロールを強化した。従来は公開されたGoogle Profileが必要だったが、非公開にしたままソーシャル検索が利用可能となった。
グローバル市場において戦う米Googleと米Microsoftは、それぞれ独自の路線でソーシャル検索を着々と開発している。米Microsoftは米Facebookと排他的契約を結び、BingとFacebookの「いいね」を連携した検索サービスを推し進めている。また、今回のGoogle同様に、Microsoftはすでに「いいね」がクリックされたページを自然検索結果の中に統合してきている。
対するGoogleは、特定の交流ネットワークにとらわれず、オンラインで取得可能なあらゆるデータからユーザのソーシャルな関係を把握し、それを検索結果に反映させる仕組みを整えようとしている。
どのようなソーシャルグラフのデータを利用するかは重要な課題の1つであるが、小さければ有効に機能しないかもしれないが、逆に大きければ良いというものではない。どの検索領域にフォーカスするかによって、活用すべきソーシャルグラフのデータは異なる。飲食店の情報検索の品質を向上するのに、Flickrの交流関係は役立つのだろうか?
一般的にソーシャル検索は、特定領域の課題解決には有効であるが、これを汎用的に広げるほど効果に疑問が出てくる。現実社会には、いくつもの"人間関係" が存在する。仕事関係のつながりから発信されたシグナルは、果たしてどの検索の場面でも有効なのだろうか?友人が共有したリンクは、本当に満足できる内容を有しているのだろうか?
リンク解析を通じたランキングアルゴリズムの限界が来つつあることは確かであるが、ソーシャル検索はその問題を解決してくれるほど万能なわけでは決してない。ソーシャル検索自体は今後の注目の検索技術であることに間違いないが、かつて米Yahoo!がソーシャル検索の概念を世の中に出した当初から専門家が指摘してきた「課題」は未だに解決されていない。ソーシャル検索は本当に一般検索(Generic Search)において有効に機能するのだろうか - この「課題」を両社はどう乗り越えていくのか。
cf.
#
補足。ソーシャルサークルに基づいて、個々のリンクのブースティング(順位上昇)はあるようですが、それはパーソナライズ検索の文脈の中で考える話。つまり、ユーザによって見ている検索結果・順位は変わっていく、ということです。