SEMリサーチ

企業で働くウェブマスター向けに、インターネット検索やSEOの専門的な話題を扱います

Facebook公認の "Facebook for Social SEO"は鵜呑みにしないこと

先日、SEO企業の米BrightEdge とFacebookが共同でFacebook PageのSEOに関する文書"Facebook Best Practices for Social SEO"を公開しました。一般的なFacebook の運用方法や、検索エンジンに掲載されやすくするためのチップスが掲載されています。Facebook が公式にリリースした文書ですから、参考にされた方もきっと多いのではないでしょうか。

しかしながら、"Optimizing Facebook for SEO"のレポートをよく読むと、間違った知識を与えかねない箇所がありますので、その点について解説をしたいと思います。なお、Bing(米国版)への最適化のみを前提とするなら、このレポートはおおよそ正しいです。しかし世の中の大半のマーケッターはGoogleとBingを考えるはずです。実際、日本語の記事を見ると両者がごっちゃになっている方が少なくありません。

この問題は技術的に非常に複雑でややこしいため、間違っても仕方がないと思います。しかし、Facebook公式としてリリースするのであれば、誤解を生まないように前提条件をきちんと記載するか、もう少し丁寧に説明をすべきだと思います。

ということで本題。

対象の検索エンジンは Bing ? それとも Google ?

まず第1に、Facebookと提携しており詳細データにアクセス可能な Microsoft Bingと、そのアクセス権限を持たないGoogleとでは、Facebookのクローリングやインデクシングの方法が大きく異なるという点を理解して下さい。

この文書、GoogleともBingとも書いておらず、一般的な検索エンジン向けのオプティマイズの手法について説明しているのですが、技術的な観点で述べるのであれば前提としている検索エンジンを明記すべきです。特定の検索エンジン名称を使いたくなかったに違いありませんが、何の注意事項も記載しないのは不親切です。

本記事をお読みの皆さんの大半はGoogleを前提とした話に興味があるに違いありませんのでそちらを中心に説明します。

「いいね」や「シェア」データにGoogleはアクセスできない

まず重要な項目を並べます。ポイントは、いいね!やシェアへのアクセス権限です。

  1. Googleは個人ページの「ウォール」ページにアクセスできないので、そのページ上のリンクもクロール出来ません
  2. Googleは個人ページの「ニュースフィード」ページにアクセスできないので、そのページ上のリンクもクロール出来ません
  3. Googleは個人ページの「基本データ」が公開設定されている場合、Googleはクロールすることができますし、そのページに掲載されるFacebookページ へのリンクもクロールすることができます
  4. 「ウォール」ページがクロールされませんので、外部ページに対してつけられた「いいね!」がリンクとしてカウントされることはありません。つまり、「いいね!」数の増加と検索エンジンの評価に直接的な関係はありません
  5. 同様に、シェアのデータにアクセスすることも出来ません。つまり、シェア数の増加と検索エンジンの評価は直接的な関係はありません

**注意:話が拡散しないよう、検索エンジン最適化の観点から論点とすべき点にフォーカスしています。「いいね!」や「シェア」が増えた方がソーシャルマーケティング的にいい等の当たり前の話は省略します

第1に、「いいね!」(Likes)で発生したリンクには、クロールできるものとできないものがあります。Facebookページ に対する「いいね!」で発生するリンクは、個人ページの基本データ(例:筆者のFacebook)に表示されます。従って、この基本データのページがGooglebotに公開されている場合はリンクとしてカウントされることになります。もしユーザー側の設定で非公開になっている場合はGooglebotもアクセスできませんので、リンクとしてカウントされません。ちなみに私は非公開設定にしているので、私がいいね!したFacebookページ はリンクとしてカウントされません(*私がアカウントを開設した時点では、デフォルトで非公開でした。現在のデフォルトはどうなっているのでしょう?)。

基本データの公開状態を確認するには、Facebookにログインして右上の「アカウント」をクリック→「プライバシー設定」をクリック→画面上部の「Facebookでのつながり」の少し右側にある「設定を見る」をクリック→「いいね!」やその他のつながりの公開範囲を確認します。「すべてのユーザー」に設定すると、いいね!したFacebookページの一覧が公開されるようになります。

(「外部ページへのいいね!はクロールされない」のですが、この点は後半に述べます)

公式文書にはFacebookページ へのリンクの価値について次の説明が記載されていますが、

3. Get links to your Facebook Page by driving social engagement and "Likes"

Search engines analyze the link graph the number and quality of links to a given page in order to determine the authority of that page. When your Facebook Page gets , you will accumulate links from public user profiles that are visible to spiders. You should also have a regular stream of posts so that your page constantly appears in newsfeeds for these users. Also, you should design your content to drive social engagement as this will greatly help boost your authority and therefore how well your Facebook Page ranks.

その通りです。しかし所詮 Facebook.com における内部リンクの話ですので、ユーザー数の増加に比例して当該Facebookページ の評価があがるわけではないことに注意して下さい。内部リンクと外部からのリンクの重み付けは異なります。

一方、個人ユーザーのニュースフィードはBingはアクセスできますがGoogleはアクセスできませんので、上記引用の後半部分の説明は誤りというか、「Googleを除く」という注意事項を記載すべきです。

同様に、レポート後半の "More advanced ways to optimize Facebook for Search"の最初の項目も、Googleには関係がないお話です。

Use Facebook Shares and Likes to improve rankings of any page on your website

Search engines use Shares and Likes as key signals of authority for deciding which pages are most relevant for any keyword and phrase used by people searching on the web. By getting Shares and Likes for a page on your web site, you are greatly increasing the chances that your Facebook Page will move up the ranking when search engines pick up on the links created by these Shares and Likes in public user profiles. In fact, according to some industry analysis, the number of Shares is the #1 social factor correlated with good rankings1.

**注意:しつこいですが、"シェアやいいね!が増えることが良いという当たり前の話は、ここでは省きます

冒頭の1行目「検索エンジンは、シェアやいいね!をオーソリティのシグナルとして用いている」は、Bing限定のお話です。Googleはどちらのデータにもアクセスする権限を持っていないので、Googleのランキングには関係ありません。

FacebookとBrightEdgeはこの主張にあたり SEOmoz のデータをエビデンスとして提示していますが、そのSEOmoz の分析が間違っている(Google・Matt Cutts氏が否定済み)のでお話になりません。しかもこのSEOmoz のデータはGoogleランキングファクターに言及したものです。GoogleとBingの話をごちゃ混ぜにするのはいかがなものでしょう。本当に理解している方が書いたのか疑ってしまいます。

外部ページに対する「いいね!」はアクセスできない

先に述べた通り、Facebookページ に対する「いいね!」は基本データのページ上に反映されますが、facebook.comの外、外部ページに対する「いいね!」は、それがいくら積み重なってもGoogleにおける直接的なリンク評価(ソーシャルシグナル)にはなりません。外部ページに対する「いいね」は通常、ニュースフィードに反映されますが、クローラを遮断されたエリアです。

つまり、何らかの仕掛けで数多くのユーザーのウォールやニュースフィードに自社サイト(またはFacebookページ)への「いいね!」や投稿を増やしたとしても、それはGoogleの検索順位には一切、直接的な関係はありません。

何を達成するためのSEOベストプラクティスなのか

この公式レポートは非常に基本的な事項について記載しているのですが、このベストプラクティスを通じた SEOのゴールが明確になっていない点も問題です。あるいは、「何の課題を解決するアドバイスを提供しようとしているのか」がよく見えないのですといった方が適切でしょうか。

BrightEdge は先に世界トップ200ブランドの70%がFacebook公式ページのSEOに失敗というレポートを出しており、ブランドキーワード検索時にFacebookページが検索上位に表示されないことの問題点を指摘しています。となると、このレポートは、SEOの対象キーワードをブランドキーワードという前提でお話しているのでしょうか。

それならばレポートで紹介されているように、Facebookページ の名称は企業名と同一にした方がよいですし、記事投稿する時にブランド名称を記載することは良いことでしょう。ソーシャルプラグインやコネクトを使って、ウェブサイトとFacebookページ の連携を図ることも良いことです。

でもそれって、どちらかというとFacebookページ 開設時に当然行うようなプラクティスの集合で、別にあえてSEOと言わなくてもいいくらいに初歩的なことですよね。しかも現実的に一番重要なことはFacebookページを社名にすることと、ウェブサイトとFacebookページを相互にリンクすることで必要十分だったりします。

このレポートは、

  1. 企業名・製品・サービス名などのブランドキーワードで確実にFacebookページがGoogle検索結果の表示されるようにしたい
  2. 一般キーワードなど(通常ウェブサイトでターゲットとするような)でFacebookページがGoogle検索結果の上位に表示されるようにしたい

冒頭でソーシャルSEOに取り組む必要性として「レピュテーション管理」や「ブランドビジビリティの向上」「エンゲージメント」を掲げていることから推測するに、前者を前提として話を進めており、後者は想定していないと思います。それなら、このSEOの方向性についてきちんと説明を提供してあげないと、勘違いをする人が出てきてしまいます。

Facebookページ でSEOをする目的は?

そんな勘違いをしてしまった方へのアドバイスです。そもそものお話、検索トラフィックを最大限に伸ばしたいならFacebookページ よりもウェブサイトで行った方が遙かに効率的なわけですし、Facebookページ などいらないのです。

SEOしたくてFacebookページ 開設したんじゃなくて、ソーシャルメディアの中に飛び込んで、顧客との関係性を構築するとか何かが主な目的だったはずですよね。検索マーケティングとは違うことしたいはずなのに、その上でFacebook SEO の意義は何でしょうか。企業名やFacebook掛け合わせキーワードできちんと企業のFacebookページ が検索できるようにしたいという程度のニーズであれば問題ないと思います。しかしそれ以上を望むなら、その理由や目的を明確にしてから取り組みを検討してみたらいかがですか?(私にはもっともらしい理由が当てはまるケースが思い浮かびませんが)。

繰り返しますが、検索トラフィックを獲得したいなら通常のウェブサイトでSEOを意識・実行した方が成果・費用対効果の両面で優れています。Facebookページ にもトラフィック流したいなら、ソーシャルプラグインやコネクトでウェブサイトに埋め込んで、ソーシャルメディア向けのマーケティングを普通に展開すれば、それで十分ではないのでしょうか?

かつてSecond Life がもてはやされていた時代にSecond Life Optimization が登場したように、Facebook にあわせて Facebook SEO なるものも登場してきました。流行り物に飛びつきたい気持ちはよくわかるのですが、その前に自分の会社は何をしたいのか、Facebookページ にどこまでのファインダビリティ(ユーザーが見つけ出せるようにすること)を求めるのかを決めてから検討しましょう。先に説明した通り、企業名程度で検索上位に表示したいなら、1時間もあれば最適化作業できますので担当者自ら片付けた方が楽です。

ウソにだまされないように注意

「いいね!」や「シェア」の数とGoogleランキングには直接的な関係性は少なくとも現時点(2011年6月)でありませんので注意して下さい。MicrosoftはFacebookの詳細なデータにアクセスできるのでそれをBingと組み合わせることができますが、Googleにはその権利はないので技術的に不可能です。「いいね!を集めるとランキングが上がるんです、だからFacebookページ作って、うちに運用させてもらえば1万いいね!集めます」なんて営業電話があったりするのですが、信じないように注意して下さい。

Facebook Best Practices for Social SEO

http://www.brightedge.com/facebook-social-seo

#

Facebookが出すドキュメントなんだから、Microsoft Bing前提 になっているのも当然といえば当然ですが、世界の検索シェアの過半数はGoogleです!

[UPDATE] 趣旨にあわない箇所と曖昧な説明を加筆・修正・削除しました (2011/06/25 11:45)

*補足(1):Googleがクロールできるページかどうかを確認するには、Facebookからログアウトして、対象のページにアクセスしてみて下さい。そこに表示される情報がクロール/インデックス対象となります。たとえば、ニュースフィードはURLが ?sk=nf となると思いますが、ログアウトして facebook.com/?sk=nf にアクセスしても表示されませんので、Googleはクロールできないことを示します。

*補足(2):あるいは、facebook.com/robots.txt のクロール設定を参照すると、Googleが許可された範囲がわかります。ただ、ここに記載されていないディレクトリでもインデックスされないページ(ディレクトリ)があります。

*補足(3):Facebookページにユーザーが投稿した外部サイトへのリンクは、クロールできる模様です。Facebookページ絡みのところはGoogleがアクセスできる範囲が比較的広くなっています。

COPYRIGHT © 1997-2021 渡辺隆広(わたなべ たかひろ) ALL RIGHTS RESERVED.

お問い合わせ(お仕事の相談、講演依頼など)

SEMリサーチ(www.sem-r.com)に掲載している文章及び図版の無断使用及び転載を禁じます。著作権侵害行為には厳正に対処します。

免責事項:SEMリサーチは、本記事中で触れている企業、商品、サービスの全て(情報)について、有用性、適合性、正確性、安全性、最新性、真実性に関する一切の保証をしておりません。各自の判断でご利用下さい。