SEMリサーチ

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SEO for スマートフォン [1] Google のモバイルに対する考え方

ビジネスのあらゆる面でスマートフォンに対応せねばと考えている人は少なくないと思いますが、SEMの領域でこのクロスデバイスにどのように対応していけばいいのか悩んでいる方もいるのではないでしょうか。今年も残りあと1ヶ月ですが、来年からきちんと取り組んでいけるように、何回かに渡りスマホと検索・SEMの話を取り上げたいと思います。まず最初は、業界関係者でも十分に理解されていないところから。

SEO for スマートフォン - 全体最適化のアプローチ

デスクトップPC、スマートフォン、従来型携帯電話、さらにはブラックベリーなど、複数デバイスごとに異なるURLで運用している場合、SEOの全体最適をどのようにすべきか悩ましいところです。マーケティング的な側面の難しさと、検索技術の難しさの両面があるのですが、今回は後者についてあらためて整理していきます。

※ レスポンシブWebデザインを採用した場合の話は次回

まず、Google の思想を理解しておきましょう。

例)

a) PC版  www.example.com

b) Android版 sp.example.com

c) iOS版 iphone.example.com

上記 a-c のように、デバイス毎に別URLで最適化されたサイトが用意されている場合、Google は検索サービスにおいて、これらサイトをどのように扱いたいと考えているかを理解しておく必要があります。

Google はこのようなケースでは、a-c 1つ1つのサイトを独立したものとして扱うのではなく、a-c まとめて「1つの実体」(entity)として扱いたいと考えています。つまり a-c は掲載情報は同一であるがデバイスにあわせてUI(デザイン、レイアウト、フォーマットなど)が変更されただけの『バージョン違い』に過ぎない、だからバージョン違いは区別せず、まとめて扱いましょうという考え方なのです。

後述するように、検索者の利用デバイスにあわせて最適なバージョンを提示するためにa-cの関係性情報は保持するのですが、インデックスにおける扱いは情報単位として1つの実体として扱うよう試みます。

この話は、プラットフォーム別に提供されているソフトウェアで考えたらわかりやすいかもしれません。たとえば、ある画像処理ソフト(仮に AAA とする)が Windows版とMacOS版の2つのバージョンが提供されており、機能・品質ともにほぼ同一だったとします。この場合、2つの違うソフトがあると解釈するのではなく、1つの画像処理ソフト"AAA" が存在し、それは2つのバージョンで提供されていると捉えるのです。

さて、このような「対応デバイス違いのサイトは情報単位で1つとして扱う」というアプローチを採用することは、検索サービス提供において次のメリットがあります。

  1. 関連性の高い検索結果を表示できる

    ユーザーが検索サービスに求めている事柄は、検索クエリと適合性の高い情報(コンテンツ)です。レイアウトやフォーマットではありません。従って、(ほぼ)同一情報が掲載されているであろう a-c は1つとして扱う方が合理的ですし検索利用者の利便性を損なうことはありません。もし a-c を別個に独立して扱うと、検索結果にバージョン違いのウェブページへのリンクが並んでしまうことになります。

  2. デバイスの垣根を越えて、情報に対する適切な重み付けが可能になる

    デバイス毎に異なるURLで運用すると、掲載コンテンツは同一であるにもかかわらず、検索エンジンからの各々のサイト(URL)の評価(重み付け、スコアリング)に偏りが発生することは容易に想像できます。利用者も多く、検索アルゴリズムも適応しているPCプラットフォームで受けるURLの重み付けと、利用者急増中とはいえスマホ対応サイトのURLが受ける重み付けは、乖離することでしょう。しかし、同一のコンテンツが掲載されているのであれば、その評価はデバイスの垣根を越えて均等に与えた方が、どのデバイスを利用しているユーザーに対しても優れた検索体験を提供できるに違いありません。 a-c をひとまとめにする、つまりインデックスプロパティを a-c で共有することで、適切な評価を受けることが可能になります。

  3. 検索者の利用デバイスにあわせた対応サイトに誘導できる

    ユーザーは特定デバイスのデザインを探すのではなく関連性が高い情報を探しているといっても、今まさに利用しているデバイスに最適化されたバージョンが存在するならそのバージョンにアクセスしたいと考えるユーザーもいることでしょう。

    Googleは、情報単位として a-c を1つの実体として扱う一方で、a,b,cそれぞれの情報も保持します。それを利用して、ユーザーが検索時に利用しているデバイスにあわせて、検索UIを最適化したり(例 iPad 検索アプリ)、検索結果に特定デバイスに対応したことを示すアイコンを表示する(例 スマホ検索時に、スマホ対応サイトにアイコン表示)などの工夫をしています。こうした工夫は、検索結果の関連性を損なわず、どのバージョンのサイトにアクセスするかの選択権をユーザーに委ねることを可能にしています。

以上のように、URLの単位ではなく、実体としての情報単位で扱う方がGoogle、検索利用者双方にとって望ましいのです。サイト運営者にとっても、URLの違いにかかわらず情報に対して適正な評価が受けられるようになるため検索マーケティング的にもメリットがあるのですが、ただし、サイト運営者はGoogleにこうした処理を確実に行ってもらうためにはサイトに少し修正を施す必要があります。それがrel=canonical と alternateを使った、関係性の明示です。

実は、Google はサイト構造や内部リンクを分析して、各デバイス対応サイトごとの関係性を検索アルゴリズムで自動的に識別することがある程度は可能なのですが、完璧ではありません。確実性という面では、少し手間がかかっても、最低限 canonical で Google に伝達した方が好ましいでしょう。


続き:『SEO for スマートフォン [2] レスポンシブWebデザイン




おまけ:日本には、docomoau が従来型携帯電話向けに Google を採用した検索サービスを提供していることはまだ覚えているでしょうか。かれこれ5年以上の月日が経過しましたが、この間に検索品質はどれほど改善されたといえるのでしょうか。

日本のケータイウェブの世界の検索品質改善が進まない原因として、「ウェブページの重要度や信頼度を推し量るためのシグナル(手がかり)がない」ことが挙げられます。

元々 PageRank というのは、ウェブの世界のある性質 -- 世界中のウェブがハイパーリンクでつながっており、リンクの集中しているサイトは人気が高い -- という点に着目して生まれたアルゴリズムです。PageRank が生まれたからみんながリンクを張ったのではなく、リンクを張りあうという文化があったからこそ PageRank の発想が生まれています。検索アルゴリズムは、ウェブの世界をよく理解して、そこから人気や重要度を推し量るために有効な、様々なヒント・手がかりを抽出して活用する - こうしたアプローチをします。

しかしケータイの検索の世界はどうだったかというと、Google が入り込んできて、リンクの文化がない世界に PageRank を持ち込んだ。でもリンクが有効な手がかりにならない世界に PageRank を持ち込んでも機能するはずはありません。

# こんな状態ですから当然ケータイSEOも成立しづらい

で、今のスマートフォンの世界。スマートフォンのサイトだけ探し出して、スマートフォンサイトだけのインデックスを作成しても、上手くいかないでしょう。ケータイの世界と同様、スマートフォン対応サイトの中から重要度の高いページを見つけ出すシグナルがありませんから、少なくとも現状も、そして少し先の未来でも不可能です。しかしバージョン違いで、多くの企業が保有しているであろうデスクトップPCサイトとの関係性を把握して、それと連動させていけばデバイスを問わず、(従来PC向けと)同等の検索結果を出すことができます。Googleも学んだわけです。

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