SEMリサーチ

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ニュースリリース配信サービスは外部リンク構築手段として有効か?

日米問わず勘違いしている人が多いこの話題ですが、SEOの文脈で言及される「ニュースリリース配信サービス」のメリットとは、多くのブロガーやジャーナリスト、あるいは一般ユーザーがその話題に接触し、興味を持ってくれた彼/彼女らに記事を書いてもらう(サイトをリンクで紹介してもらう)より多くの機会を作り出す点にあります。当然ながら、誰も興味・関心がないリリース、ニュースバリューのないリリースはどれだけ広範囲に、高頻度で配信をしても全く意味がありませんから、記事の書き手とのコミュニケーションをどうデザインしていくのかという、広報・メディアリレーションの基本を踏まえた上で行わなければいけないことは言うまでもありません。

ところが現実に目を向けると、ニュースリリース配信会社の中には、「当社は○○○もの媒体に貴社のニュースリリースを配信しますので、配信するたびに○○○本以上ものリンクを獲得できるのです」とか、「当社のサイトはSEOされていますので、当社に掲載すると順位が上がります」とか意味不明なことをうたい文句に営業をしている会社さんというのがあります。一方でそのクライアントになる企業側からは、「どのリリース配信サイトがSEO的に一番リンクが効果あるのか?」といった相談が寄せられるわけです。

Note: I wouldn't expect links from press release web sites to benefit your rankings, however. [Matt Cutts, Google, December 2012]

こうした人々は、要は、ニュースリリースの配信自体が生み出すリンクそのものに価値があると勘違いしているわけです。仮に100のメディア媒体に一斉配信・掲載される配信サイトがあったら、1回リリースを配信するたびに100本のリンクが獲得できると思い込んでいるのです。しかし、それは大きな間違いです。米Google マットカッツ氏が最近Google グループに投稿したコメントにあるとおり、もっと古くを遡ると2005年12月の時点で、「プレスリリースサイトからのリンクは、検索ランキングには貢献しません」と明言していますし、実際にその掲載本数分だけの効果はありません。

なぜなら、全く同じ内容のリリースが複数のサイトに掲載されたらその時点で重複コンテンツですし、そんな同内容のコンテンツから張られているようなリンクは価値が薄いですから、検索エンジンもあまり評価してくれません。ゼロではありませんが、重複扱い処理されますから本数分の価値にはなりません。

Boney, a legit press release can get you written up by reporters, or editors/sites may subsequently choose to link to your site. But the actual content of the press release itself doesn’t directly affect a site. For example, on http://www.prweb.com/releases/2005/10/prweb296086.php those hyperlinks don’t help avatarfinancial.com (in Google). [Matt Cutts, December 2005]

決して、Google はニュースリリース配信サイトを使うなとは言っていません。Googleはそのビジネスモデルを否定するつもりはありませんが、ランキング計算時に考慮すべき要素ではないので評価はしませんという意味です。

もっとも、冒頭で触れた通り、価値あるニュースリリースを、-- あるいは、いまメディアが書きたい事柄、編集方針などを考慮して戦略的にリリースを検討して -- ブロガーたちに届けようと考えると、存在意義がないリリース配信サイト(たとえばリリース掲載のためだけに存在するリリース配信サイト)は排除して問題がないので、結果的に、あのサイトに掲載してもらっても意味が無い=リンクの意味もないよねというのが見えてくるわけですが。

冒頭で触れた通り、SEOでいうリリース配信サイトを活用することの意味は、ブログやSNSなど個人が手軽に情報発信できるようになった今日において、一部のメディア媒体の記者だけでなく、ブロガーたちにもプレスリリースを届けて、記事を書いてもらう点にあります。配信サービス自体が手軽にリンクを生み出すツールではありません。

[注意事項] リリース配信サイトの利用によりGoogleからスパム等と判断されることはありません。少なくとも、リリースを発信した企業のサイトが不利益を被ることはありません。ただし、リリース配信事業を行っているサイト自体の検索順位が調整されるリスクがあります。なぜならリリース自体はユニークなコンテンツではく、それらを集約しただけのリリース配信サイトを検索上位に表示する理由はそれほどないからです(実際パンダアップデートで米国の一部のリリース配信サイトは順位を大幅に落としています)。

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補足すると、2000年代中盤までは、掲載された面数に応じた評価は得られていたので、少なくとも当時はあながち間違いではありません。また、Google News のインデックス対象かどうかなど、(広義の意味で)良い配信サイトとそうでないという判断基準は現在もあります。

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『ニュースリリースを掲載するためだけに存在する配信サイトとそのパートナー』というのは、『(誰も検索目的では利用しない)SEOの外部リンク供給のためだけに存在するディレクトリ及びその提携パートナーサイト』と似たような存在で、両者ともゴミを量産するだけのサイトなんですよね。提携パートナー増やして、リンク増えるんですと営業すると、一定数のだまされる企業が食いつくのでマネタイズができちゃうというのが何とも・・・。

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結局、「コンテンツ」の話に行き着くわけですが、コンテンツの選び方・探し方については年末年始のどこかで記事をアップしますので、そちらご参考にしてください。過去の実例踏まえて紹介します。

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