SEMリサーチ

企業で働くウェブマスター向けに、インターネット検索やSEOの専門的な話題を扱います

「ペンギンアップデート」 米Google、ウェブスパム対策のアルゴリズムにペンギン(Penguin)と命名

つい先日、米Googleから発表された、ブラックハットなSEO手法を駆使する、ウェブスパムページ対策のためにリリースした検索アルゴリズムについて、ペンギンアップデート(Penguin Update)と命名された。

ペンギンアップデート(Penguin Update)とは

米Googleはこれまで一定周期ごとに比較的大きな検索ランキングアルゴリズムの変更や更新を行ってきているが、それらには歴史的に名前がつけられていた。最近の有名なものとして、コンテンツ品質を分析し、内容の薄っぺらな低品質サイトをフィルタリングするために2011年に発表されたパンダアップデートがある。そのほか、2009年のVince updateや2010年のMayday Update、もっと昔に遡ると、2003年のFlorida UpdateというHilltopアルゴリズム関連の大規模なアルゴリズム変更がある。

Search Engine Landによると、今回はGoogle自身がアルゴリズム更新にペンギンと名付けたとのこと。ただし、なぜ名前がペンギンなのかその理由については言及されていない。

ペンギンアップデートは既に日本でも適用開始済み

このペンギンアップデートは既報の通り、発表された段階ですでに米国では検索順位の変動が発生しており、Google Webmaster Help や WebmasterWorldなど欧米のマーケッターが集うフォーラムではすでに多くの検索順位の変動や、(最悪の場合)オーガニック検索から消された事例も報告されている。日本でも25日時点で一部のサイトが大幅(100以上)に検索順位を落としていたり、ドメインごとインデックスから消滅した事例をすでにいくつか確認している。ペンギンアップデートは世界同時リリースということで、傾向も(日米比較で)それほどの差異は観察されない。

ペンギンアップデートの傾向

現時点で分析・確認できた傾向として、あまりクオリティが高くないページ(適当に書いたとしか思えないような薄っぺらなコンテンツや、他社のプレスリリースほぼ丸ごとコピーレベル)にターゲットキーワードを含んだアンカーテキストを使ってリンクを含めていたり、ほとんど検索利用者にとって意味のないディレクトリやリンク集から大量のリンクを集めているようなケースでは、この「ペンギン」に検出され、検索順位が落ちている。

また、少し前に話題となったSEOリンク構築が主目的と思われる大きなブログネットワークが軒並み削除されたことも最近の動きを加味すると伏線だったのだろう。日本でも確信犯的に構築された薄っぺらなサイト同士で構成したサイトネットワークはすでにインデックスから削除されるなどの対策が行われている。

ペンギンアップデートはこの通り日本でもすでに適用されており、一部のキーワードでの検索順位の変動を確認できているので、ゴールデンウィークの前に一度チェックしておくとよいだろう。

まだデータに目を通し切れていないのだが、傾向から察するに、たとえばSEO目的のリンクを大量に含んだプレスリリースを高い頻度で(一部のリリース配信会社を活用して)発信している企業サイトも、ウェブスパムとして検出される可能性が、少なくとも従来よりずっと高いはずと考えられる。リリース自体は毎回ほとんど代わり映えがないのに、会社紹介のところに30本くらいサイト紹介の体裁でリンクを掲載しているのは、コンテンツ的に低品質であり、ただのスパムリンクでしかないからであり、この手のサイトは英語圏ではいくつも落ちていることを確認しているからだ。

[UPDATE] 2012/04/28 アフィリエイターが注力しているサイトを分析すると、傾向として [1] リSEOのためのリンク集からのリンク(登録承認不要型リンク集、相互リンク含む)、[2] アジア系のコンテンツがほぼ存在しないサイトからのリンク、[3] 少し手の込んだ、グレーゾーンぎりぎり隠しリンク、[4] スクレイピングサイトからのリンク(検索結果をスクレイピングして、任意のリンクを埋め込む等)、[5] しょうもないテキスト文中に文脈関係なく埋め込んだリンク(中国人が書いたと思われるへたくそな日本語文章内にリンクが入っている等)という共通項が観察される。これらの手法自体は従来から存在したし、すでに類似パターンはリンクが無効かされていると思われるものもあったが、今回はスパム認定範囲とその検出能力が上がっている印象を受ける。

ペンギンアップデートにより検索順位が落ちた場合の対処法

現時点のペンギンアップデートの情報をまとめると(以下、Phase I Analysis)、全体的には不適当な大量の低品質なページからのリンクまたはリンク自体の品質・信頼性が著しく低いものが対象となっているが、サイト内部自体の問題、たとえば掲載しているコンテンツが単なる寄せ集めや自動生成、いわゆるコンテンツアグリゲーションで構成されている場合だ。ペンギンアップでとによる順位下落原因はサイト内部にも外部にも存在しうるので、もし4月24日以降のタイミングで検索順位が下落またはインデックスから削除されるような事態が発生している場合は、両方の原因究明を行う必要がある。

考えられる原因が特定できたら、通常の手順、つまりGoogleに再審査リクエスト(Reconsideration Request)を行う。現在の状況、(あなたが考えた、分析した)原因の特定と対応した内容、今後の改善策についてまとめたレポートをGoogleに送信することとなる。

この手続きは、(もしペンギンアップデートの直後で検索順位が落ちたのであれば)、Googleからのウェブマスターツール経由の通知メッセージの有無を問わず、行って構わない。むしろ、引き続き検索エンジンからのトラフィックを獲得したいのであれば申請を行うべきだ。

なお、GoogleはあるサイトをそのブラックハットなSEO手法に起因して検索順位の調節を行った場合、必ずしもウェブマスターにそれを明示的に通知するわけではない。今回面倒なのがペンギンの直前、4月19日にパンダアップデート3.5の更新も行われている点で、いったいどちらがトリガーとなって検索順位が下落したのか切り分けは行った方が優先すべき修正箇所も見えやすいだろう。

逆にいえば、通知メッセージがこないからといって、いまあなたが行っている(本当はブラックな)SEO手法が認められたというわけでもないので注意してほしい。Googleはあなたがウェブスパムを使ったサイトをアップしてから、それを検出するまでには時間がかかる。早ければ2週間くらいで削除されるかもしれないが(同じブラックハットSEO手法でも)半年ほど生存できることもある。

[UPDATE] 2012/05/01

[1] 検索順位下落の原因がペンギンアップデートによるものと特定できる場合:リンクやキーワードが並んでいるだけの相互リンクやリンク集に登録・掲載をした、あまり意味のないウェブページから文中内にSEO目的でリンクを張ったことがある場合は、それらをできる限り取り外す。自サイト内に、水増し用コンテンツ(サイト全体の情報量を見かけ上多くするためだけに用意したページ、意味のない自動生成コンテンツ、他のデータベースからAPIなど使って自動生成しているコンテンツ)はすべて取り除く。

[2] 検索順位下落の原因がペンギンアップデートかどうかわからない場合:同じくSEO目的のリンク集や相互リンクなどに登録している場合はそれらのリンクを取り外す(削除)する、水増し用のコンテンツを削除する、robots.txt でクロール対象外にした上で、一応再審査リクエストを行う。

身に覚えがないのにペンギンアップデートの影響を受けたかも…?

ブラックハットSEOに全く身に覚えがないにも関わらず、今回のタイミングと時を同じくして検索順位が落ち、もしかしてペンギンアップデートの直撃を受けたかも…?と自信を持って言える場合は、Googleにフィードバックをすることができる。

Feedback on our recent algorithm update ("Penguin")

上記フォームに詳細を記述して送信して下さい。

追記

Googleより「ペンギンアップデートは検索アルゴリズムによる(自動)適用なので再審査リクエストは機能しません」とコメントがあります。

Because this is an algorithmic change, Google has no plans to make manual exceptions. Webmasters cannot ask for reconsideration of their site, but we’re happy to hear feedback about the change on our webmaster forum. [Google, Penguin Update Recovery Tips & Advice, SearchEngineLand, April 26 2012 ]

しかし、諸々の理由により、検索順位が落ちた、インデックスから削除したのであれば、それの対応した上で一応、再審査リクエストすることをおすすめします、特に、ほかに相談する方々がいないウェブマスター。この理由はまた別の機会に触れますが、要は、自分のサイト順位が落ちた原因が手動か自動かなんて、判断しようがないじゃないですか、特にスパムの合わせ技をやっちゃってるようなサイトは。手動、自動うんぬんは、その情報を唯一把握しているGoogleの理屈です。再審査リクエストを試して、結果的に「Webspam チームによる手動の対応は行われておりません」(We reviewed your site and found no manual actions by the webspam team that might affect your site's ranking in Google.)の返信がきたら、それで原因の絞り込みができるのであれば一歩前進です。

※ どう考えてもペンギンアップデートが原因と断定できるケースであれば別ですけど。いまこの瞬間(2012/04/27)なら特定できますが、あと1カ月したらどれが原因かわからなくなります。

COPYRIGHT © 1997-2021 渡辺隆広(わたなべ たかひろ) ALL RIGHTS RESERVED.

お問い合わせ(お仕事の相談、講演依頼など)

SEMリサーチ(www.sem-r.com)に掲載している文章及び図版の無断使用及び転載を禁じます。著作権侵害行為には厳正に対処します。

免責事項:SEMリサーチは、本記事中で触れている企業、商品、サービスの全て(情報)について、有用性、適合性、正確性、安全性、最新性、真実性に関する一切の保証をしておりません。各自の判断でご利用下さい。