SEMリサーチ

企業で働くウェブマスター向けに、インターネット検索やSEOの専門的な話題を扱います

「ユーザに価値あるサイトを運営する」ことが優れた SEO になる理由

SEOのアドバイスとして「ユーザに価値あるサイトを運営することが、継続的に検索流入を得られる(検索エンジンと親和性が高いサイト作りの)近道である」といったアドバイスがあります。これは私もよくいいますし、欧米の(ホワイトハットな)SEOの方々も、Googleも、Microsoft も口を揃えて言います。しかし一方で「もっと具体的な SEO のテクニックの話をしてほしい」といったコメントを頂くことがよくあります。

検索アルゴリズムの理解が、必ずしも「アクション」を明確にするわけではない

しかし、具体的な SEO のアクションが取れないアドバイスは意味がありません。技術的な説明をしたところで「で?」といった反応しかできない説明は、とりわけ企業内のSEO担当者にとって全く意味がない説明だと思います。

『検索アルゴリズムの分析手順がわかったところで、結論は変わらない』『知ったところで大半の人には意味がない』1つの例を、最近のウクライナ問題を題材に説明しましょう。Google は次のようなデータ分析に基づいて、1つ1つのウェブページの重要性や関連性を計算し、検索結果を出力しています。

例『ウクライナ問題』についての Google 検索アルゴリズム視点 ※ ほんの一例です

  • ページ分析:ある時点から「ウクライナ」「クリミア」「プーチン」「米大統領」「オバマ」「ロシア」「ウクライナ」「軍事行動」といった文字列及び分野に関する話題を持つ新規ページが急速に増加し、刻一刻と更新され始めている。また、ロシアやウクライナに言及していることに変わりないが、2月下旬から3月上旬にかけて、扱っている話題が「大統領」「与党」「新政権」といったものから、軍事衝突、クリミア掌握といった具合に刻一刻と変化していることから、現在進行形で動いている事象だと推定できる。さらに、こうした文字列を持つページの文章全体あるいは段落単位の分析を行うと、ある範囲の話題性を持っていることも確認できる。以上のデータから、一定の範囲内における話題に言及し、かつもっとも最新の(後述)ページはユーザーの閲覧ニーズが高いことから、重みづけを変化させていくことが適当。
  • クエリ分析:クエリ分析ある時点から「ウクライナ」「クリミア ロシア」「ウクライナ問題」といった検索クエリが急上昇し、数日にわたり一定の検索数量を維持している。同話題に言及する新規ページやリンクの急増時期と重なることから、ユーザの閲覧ニーズ及びリアルタイム情報へのアクセスニーズが高まっていると推定し、それに適した重みづけを行うことが適当。
  • タイムスタンプ(最終更新日時):ウクライナ関連の話題に言及するページの大半はタイムスタンプが分単位で最新のものが次々と登場し、かつ、更新がしばらく途絶えていたページでもタイムスタンプが更新され始めた。こうしたタイムスタンプの変化も、過去の重要性だけでなく、情報鮮度を重視した検索結果を提示した方がユーザーの要求に応えられるだろう(つまり、新しいものを優先しつつも、権威性が高いと判断できるページも適切に評価する)。
  • バックリンク(被リンク):タイムスタンプが次々と更新されているページに、次々と新しいリンクが向かっている。また、タイムスタンプの日付が古いが同時に被リンクも多かった文献に対するリンク数が増加している傾向もある。検索クエリによっては、最も新しいのではなく、現在までの時点で最も信頼性や重要性が高い一般的な検索結果を含むことも妥当であろう(つまり、更新日付が新しいものばかりでなく、更新日付が古くても権威性の高い、ウクライナ問題に言及しているページも検索上位に表示する)。
  • アンカーテキスト:文字列の種類は数十万にも及ぶが、総じてウクライナ関連の単語を文字列としたアンカーテキストが、ある時点から急速に増加していることが明らか。また、時系列で見ると、大統領辞任から「新政権」、ロシアの軍事介入、米国の非難といった具合に、新規に増加しているページ内容の変化にあわせるかのように、新規出現するアンカーテキストも変化している。ただ、こうした変化よりも情報鮮度に基づいて重みづけをする方が妥当であろう

つまり「継続的に有益な情報を発信せよ」の結論

これらはほんの一例ですが、Google はインターネット上に展開される情報や検索窓に入力される検索クエリといった得られる限りのデータを分析し、リアル社会の変化を認識したならば「その瞬間」の検索意図を正確に把握し、満足度の高い検索結果が表示されるようにする、そんな複雑な検索アルゴリズムを構築しています。

上記を踏まえて、ウェブマスターがサイト運営においてすべきことは何でしょうか。つまり「最新の情報を継続的に発信せよ」という14文字にまとめられますよね。

「コンテンツが重要」の本質的な意味

Twitter でも述べましたが、多くの人は「コンテンツの重要性」の本質を理解していないようです。SEO においてコンテンツが重要というのは、皆さんが検索上位に表示したいと狙っているキーワードを含んだコンテンツを用意せよ、という意味ではありません。そうではなく、来訪者が「またこのサイトに来よう」「このサイトは参考になる」「勉強になった」そう思ってもらえるようなサイト運営を心がけよ、というのが本質です。そういった態度・姿勢を持つようにするならば、必然的にコンテンツを考えないといけないですよね。SEO だから何か特別な技術が必要、というわけではありません。

Google は、人間が良質と判断する情報を、コンピュータで同じように判断できるようにするためには何を分析すればいいのか、どんなアルゴリズムを書けばいいのか、それを考えているに過ぎません。いいかえれば、まっとうにサイトを運営していれば、基本的には Google もそれを良いものと判断してくれます。※ ただし、Google は完璧ではなく、コンピュータで完全に情報を理解・把握できるわけではないから、マシンリーダブル(コンピュータが読める)という概念はおさえなければなりません。

昨日オーソリティーサイト(権威性)について加筆しましたが、今日の Google は過去から蓄積してきたリンクの総資産価値を評価するのではなく、過去から現在までのサイト運営の過程や実績を評価しようとしています。それは初めてインターネット上にそのサイトを立ち上げてから、今日までの履歴書に等しいものです。Google は活用できるシグナル(手がかり)を総動員して、サイト全体の真の価値を求めようとしています。

例えば、学校のテストでたとえてみましょう。学校のテストが年間10回行われたとします(100点満点)。 A さんの点数が第1回目から順に「0点→0点→38点→25点→54点→61点→59点→76点→71点→72点」と変化ました。一方、B さんは「100点→100点→0点→100点→0点→0点→100点→0点→0点→0点」と変化したとします。

こうした時に、『Aさんはテストの回数を追うに従って努力している』『Bさんは何か不正なことをしているか、やる気がないか』といったことが読み取れるかもしれませんが、Google はそれを検索アルゴリズムで試みている、というとわかってもらえるでしょうか。

つまり、リンクの総数や特定アンカーテキストの総数だけでは誰でもねつ造可能です。しかし、過去から現在までの推移や変化を人工的に作り出すことは困難です。特に、単にあなたのサイトにおける変化や推移ではなく、検索クエリや新規/更新/消滅ページの変化に対して相対的にあなたのサイトはどう変化したのかに基づいて計算されるので、なおさら困難です。流行は時間の流れとともに変わりますから、過去のある時点での価値と現在の価値が全く異なるものはざらにあります。その理屈を検索アルゴリズムの世界に持ち込んで来ているので、「リンク張れば順位が上がる」なんて時代ではないのです。

【まとめ】 Google は「検索意図」を正確に把握するために、クエリやウェブのデータを分析、その変化・推移から検索時点の検索意図・要求する回答を推定します。例えば、直近3週間で急激に検索数量が増加し、その検索要求が継続するのであれば最新の話題に重み付けをした方が良いが、年間通して一定の検索要求があるクエリであれば信頼性や権威性を重視した方が良い、といった判断などが可能です。

※ こうした傾向をご自身の目で確認したいという方は、こまめにテレビ番組をチェックして、自分が知らないこと、新しい物事がを見つけたら検索して検索結果画面を確認するクセをつけてみましょう。

一方、その検索意図に適合する高品質なウェブページを選択出来るように、過去から現在までに至る総合的なページの評判や信頼をアルゴリズムで算出します。例えば、公開されて3年が経過したウェブページは、その3年間の間にどのような評判(=リンク、引用、言及等)を受けてきたのか、等です。

※ こうした傾向をご自身の目で確認したいという方は、自分でサイトを運営して、毎日、必ず何かしらの話題(古いネタ、新しいネタ織り交ぜて)について記事を発信してみましょう。他のサイトを観察するよりも、自分でサイトを運営して確認した方が良いと思います。SEO が好きな人は SEOネタのサイトになってしまいがちですが、そうではなく、雑多なネタを扱ってみて下さい。

※ 話が脱線しますが、こうしたアプローチによってリンク販売業者は苦しんでいるのです。つまり、「毎日10本ずつリンク増やします」「少しずつリンクを増やすことで Google に捕まらないようにします」といった外部リンク構築戦略が通用しないのです。なぜなら、リンクの増減はクエリやウェブの需要/供給に原則、連動しているはずなので。

ユーザに役立つサイト運営は、SEO に良い影響をもたらす

話を戻しますと「ユーザに価値あるサイトを運営せよ」というアドバイスは、結局そういう姿勢でサイト運営することが、検索エンジンと親和性が高い、数々の要素を自然に作り出すことになるのです。Google がそれなりに賢くなってきたことで、テクニカルな側面ではなくサイト運営姿勢を理解し実践することで検索の発見性をある程度は高められるようになってきたんだ、ということを理解して頂ければと思います。

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SEO の技術的なことを全く学ばなくていい、というお話ではありません。クローラビリティやアクセシビリティを高めるといった手順も必要です。ただ、最近の「コンテンツマーケティング系」の話については、勘違いされている方が本当に多いので、ご注意頂きたいと思います。

※ 上記の説明は、Google の検索アルゴリズムの全体を説明したものではありません。「時間」と「推移」「変化」の観点から Google のアプローチについて述べています。

最終更新日:2014年3月6日

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