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「キーワード単位ではなく、情報単位で考える」 ことの意味 | SEO初心者向け

「(2013年9月にGoogleから発表された)ハミングバードの導入で SEO の方法をどう変えたらいいのですか?」という問いに対して、私はいつも「(ごちゃごちゃ細かいこと気にせず)普通に文章を書けばいいんですよ」という回答をしています。少なくとも一般的な事業会社のSEO担当者であれば、細かな仕様変更に振り回されずに、本質的に重要なことにもっと注力せよという意味合いも込めてそう回答しているのですが、よくよく話を聞いてみると""「普通に文章を書く」とは何かをそもそも理解していないから結局何をすればいいのかわからない"" という現実に直面している方が少なからずいらっしゃるということで、少し説明を加えたいと思います。以下、初心者(SEO経験年数1年未満)を想定しています。

ハミングバードのおさらい - クエリ修正戦略

最初にハミングバード(Hummingbird)の内容について改めておさらいをします。例えば、新車購入を検討しているユーザーが、スバルのインプレッサについて詳しく知りたいと思い、検索窓にクエリ「スバルインプレッサ情報」と検索したとします。

検索意図は「インプレッサについて(全般的な事柄を)知りたい」です。クエリは「スバルインプレッサ情報」。""情報"" というクエリ(文字列)が入っている点に注目してください。

Google は原則的に、ユーザーが入力した「クエリを全て含むウェブページ」を検索結果に表示します(同義語などの話はひとまず置いておきます)。インプレッサに関しての乗車レビューやクチコミ、コミュニティ(掲示板)、ニュースなど数多くのウェブページがあるに違いありませんが、「スバルインプレッサ情報」の"情報" という言葉が入っている故に、検索結果の関連性が貧弱になる可能性があります。

なぜなら、情報発信者側が自分のウェブページで「インプレッサ情報」という言葉を使うことは希だからです。つまり、検索者は(情報が知りたいから)「情報」というクエリを使っても、意図に合致するウェブページには必ずしも「インプレッサ情報」とは自分自身で表現(記述)しないため、検索クエリの"情報"という文字列が含有されることで検索意図に合致するウェブページが発見できない可能性が生まれてしまいます「インプレッサの充実した情報を提供しているけれどもページには"情報"という言葉が記述されていない」ウェブページが発見できない可能性が生まれてしまいます。[UPDATE 2014/04/02 17:00 この段落の日本語がおかしかったので修正しました]

同様に、池袋駅周辺に車を2時間ほど停めたいというユーザーが「池袋駅近くの駐車場」と検索した時、世の中には「パーキング」「コインパーキング」と表現しているページも多数ありますし、「近くの」とは書いていないところもあるでしょう。この例もまた、ユーザーのクエリが検索結果の適合性を低下させる可能性があります。

同じ話題・興味について調べているユーザーでも、入力するクエリは千差万別です。ユーザーの感性やリテラシに検索結果の適合性が依存してしまうことは好ましくありません。また、今後は文字入力以外の検索手法(音声検索、画像検索、ジェスチャー検索、etc・・・)が増加してくれば、ますますこの問題の影響は大きくなってくるでしょう。

そこでハミングバードです。ハミングバードは、ユーザーが入力したクエリの修正戦略を担うものです。入力された文字列を足したり、引いたり(余分な文字列を除外)、類義語や同義語の言い換えの可能性も考えてあげることにより、「文字列に合致する検索結果」ではなく「検索意図や背景に合致する検索結果」を表示するようにしました。

ユーザーの疑問や悩み・期待に回答せよ

ハミングバードは「受け取ったクエリ文字列を見て、修正(追加・言い換え・削除)をしてサーバに送ってあげることで、検索意図に合致するページが検索結果に含まれるように(適合率 Precision を改善)してあげてくれるのです。

以上を踏まえて「普通に文章を書け」という方針について。

普通に文章を書いてくださいというのは、「検索経由でやってくるユーザーが、「あなたのページに期待していたもの」、「その時点で抱えていた悩みや疑問を解消できるようなコンテンツ」を用意するように心がけていれば、(ハミングバード導入により)検索流入減少などの不利益を被ることはない」という意味です。

例えば、昨年夏頃から注目を集めている、MVNO による格安SIM(IIJ や OCN、So-net、イオンなどドコモの回線を利用した通信サービス)を例に取ってみましょう。

悪い例)

  1. 「格安sim」の検索キーワード回数を調べる
  2. 「格安sim」というキーワードを含むウェブページを作る
  3. 「格安sim」というキーワードを含むウェブページを増やす

良い例)

  1. 格安SIMを取り扱う各社の商品・サービス情報を収集して比較・分析する
  2. 「格安sim」事業全てにかかわるキーワード市場を調べる(※ 格安simに興味関心を持ち始めてから、購入、購入後の利用に至るまでに世の中のユーザーはどんな物事に関心を持っているのかを明らかにする)
  3. どんな情報を提示すべきかコンテンツを考える。「低価格SIMって言葉を時々ニュースで目にするけれど、安いなら興味がある。でも何だろう?」というユーザーの疑問を解消する情報を用意しよう、といった具合

後者の手続きで進めていけば、最終的に完成するアウトプットは、ハミングバードの処理に耐えうる、十分条件を満たしたコンテンツになっているに違いありません。

仮に上記の手続きを経なかったとしても「ユーザーに読みやすい文章とは何だろう」を意識して編集していっても、やはりコンテンツを読んで欲しい人々(≒検索意図)に届けられるはずです。

だから、「(特定)キーワードを如何に含めるか、如何に自然に埋め込むかというキーワード単位で SEO を考えるのではなく、ユーザーの問題を解決するという情報単位で考えている限り、今後 Google がどのようなクエリ分析技術を導入したとしても耐えることができる」わけです。

Google はあくまで「検索意図に合致した情報へ瞬時にアクセスできるようにする」ことを目指しているわけであり、私たちの想像もつかない明後日の方向に進んでいるわけではありません。

Googleは、みんなの検索意図を正確に把握したいのです

どんな新技術が導入されようと、Google は基本的に (1) ユーザの検索意図を正確に把握する、(2) 記述されている内容を正確に把握する いずれかの目的を果たそうとしているに過ぎないのです。Google の技術が進化すればするほど、より賢くなるほど、Google に配慮する必要性が低下することがあっても何か特殊な工夫が要求されることは(とりわけクエリ分析において)ありません。

cf.

[解説] Google新アルゴリズム「ハミングバード」導入で検索がどう変わったの?

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