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DuckDuckGo、Googleパーソナライズ検索が及ぼすフィルターバブルの影響調査を発表、Google は反論

検索ユーザーのプライバシー保護を掲げる DuckDuckGo(ダックダックゴー) は2018年12月4日、Googleパーソナライズ検索がもたらす「フィルターバブル問題」についての調査結果を発表した。

フィルターバブル(filter bubble)とは

フィルターバブルとは、Google検索や Facebook ニュースフィードなどに採用されるパーソナライズが過度に行われることで、自分が賛同できる意見や考え、一方的な視点による情報ばかりが表示されてしまう現象を指す。多様性が失われることで異なる意見や視点を持つ情報との接触機会が奪われ、情報のタコツボ化につながる恐れがある。自分の興味関心という選択基準(=フィルター)により都合の良い情報に包まれる(=バブル)様を表す。イーライ・パリサー氏が著書『The Filter Bubble』で作った言葉。

最近では政治分野において個人のフィルターバブルが有権者の投票における意志決定に影響を及ぼしている懸念についてたびたび議論されているが、DuckDuckGo はこうした背景をふまえて Google 検索とフィルターバブルについての調査を実施した。同社が2012年に行った同様の調査では、当時の候補者の1人であるミット・ロムニー氏よりもバラク・オバマ氏に向けて数百万以上多いリンクが向けられたことにより、Googleのフィルターバブルが選挙結果に重大な影響を及ぼした可能性があるという結果を発表している。

本調査は米国在住のボランティアの協力を得て2018年6月24日に実施。検索クエリ"gun control"(銃規制)、"immigration"(移民)、"vaccinations"(ワクチン接種)と(ここに並べた順序で)検索するように依頼。最初はブラウザのプライベートモードでログアウトをした状態で検索を、次に通常のブラウザ画面で同様の検索を実施してもらった。ここから87の画面セット(デスクトップ76、モバイル11)を集計した。

調査結果:Googleからサインアウトしても検索結果の個別化が行われているとの結果

第1に、この調査に協力した参加者は、皆が異なる検索結果を目にしたという。これは検索場所や時間、サインイン/アウトや一時的なライブトラフィックテスト(一部ユーザーを対象としたアルゴリズムや新機能の試験的運用のこと)では説明がつかないと言う。

第2に、検索結果の1ページにおいて、ある参加者の画面には、他の参加者の画面には表示されないリンクが含まれていた。これはブラウザのプライベートモード使用時にも確認できたという。

第3に、ビデオやニュースの検索結果枠の内容は大きく異なり、複数人が同時に検索を行った時にも、これらの枠には異なるソースが表示された場合もあるという。

つまりブラウザのプライベートモードや Googleアカウントをサインアウトすることはフィルターバブルの防止に役立たないと結論付けている。

Google はパーソナライズ検索によりユーザーが見る検索結果に大差が生まれることはないと反論

先に公開した記事「Google「パーソナライズ検索による劇的な検索順位変動は都市伝説」」で紹介したように、Google社員のダニー・サリバン氏はこの調査を名指しこそしていないが Twitter に反論するツイートを投稿している。ユーザーごとに検索結果が多少異なるケースはあるが、それはパーソナライズ検索機能がもたらすものではなく、検索場所や時間、世の中の動向や人々の注目、サーバの違い、インデックス更新などその他の様々な要因がもたらすものだと丁寧な説明を行っている。

私はこの調査リリースに目を通した後、調査概要で挙げられている検索キーワードを用いて、米国内(サンフランシスコ、シアトル、ニューヨーク)の各都市から、複数の異なる端末(デスクトップ6、スマホ4)で検索結果を確認したものの、DuckDuckGo の主張するような顕著な結果は得られなかった。何がこうした結果を生み出したのかわからないが、個人的には2018年6月という時期、英語圏という話者の絶対数(≒データ量)の多さ、今年は銃乱射事件が何度か起きた米国社会情勢を踏まえると、とりわけ gun control は結果が多少は異なることが起きうるのではと考えている。

Measuring the "Filter Bubble": How Google is influencing what you click

https://spreadprivacy.com/google-filter-bubble-study/

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