要約:Google検索とYahoo!検索は、ベースとなる検索技術は同じながらも、一般利用者にとっては両者がとても同じ技術を採用しているとは思えないほど検索結果は異なります。要因は「複合検索結果の違い」「パーソナライズ検索の違い」「検索結果表示表現の違い」この3つに起因します。
GoogleとYahoo!検索の検索結果は違う
日本国内検索シェアの9割超を占める「Google」と「Yahoo! JAPAN(Yahoo!検索)」ですが、両者はどこが違うのでしょうか。2010年に結ばれた提携により、Yahoo! JAPANはGoogleの検索技術を採用することとなりましたが、検索結果は同じなのか、異なるのか。
cf.
Google、Yahoo! JAPANと提携、検索技術を提供へ
結論は「同じ検索技術をベースにしながらも、両者は大きく異なる」のですが、具体的な差違について2013年夏にGoogle検索とYahoo!検索はどれだけ違う?という記事でまとめました。今回はそのアップデートです。今後も年に2~3回のペースで更新していきます。
GoogleとYahoo!検索 検索機能一覧・比較表
この半年の間に追加された新機能を中心に項目を追加し、GoogleとYahoo!検索それぞれにおける機能概略や引用の情報源を記載しました。
料理に例えると、「一部で同じ食材を利用したけれど、調理方法も味付けも盛りつけも、オリジナルで追加した食材の種類も性質も違うので、出てきた料理のボリュームも味もすべてが違う」といった表現が適当でしょうか。
検索結果の違い(1) 多彩なコンテンツを混在表示する複合検索結果
今日、私たちが目にする検索結果は「ユニバーサル検索」(Google)あるいは「ブレンド検索」(Yahoo! JAPAN)といって、検索結果にウェブや画像、動画、ニュース、ブログ、ショッピング、地図、地域情報、特許、アプリ、掲示板、クチコミ(レビュー)など、多種多様なコンテンツへのリンクを混在・複合表示する検索サービスになっています。
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しかし、Yahoo! JAPANがGoogleから提供を受けている検索技術は、基本的に「ウェブ」「画像」「動画」の3つです。それ以外、地図やニュース、ショッピングなどの情報は両者それぞれ独自のデータに基づいて検索結果に表示しています。例えば地図は、Googleは自社のGoogle+ローカルからの情報に基づいて表示しますが、Yahoo! JAPAN はロコに基づいて表示します。
たとえば「コート」とYahoo! JAPANで検索した時に、以下のような検索結果が出てきますが、紫色でハイライトした部分はGoogleでは表示されないがYahoo!検索では表示される情報です。coneco.net(価格比較)、ヤフオク(オークション)、ヤフー!ショッピング、さらに広告スペースや関連検索表示など、Yahoo! JAPAN独自の情報が差し込まれているために、画面面積比で見ると、かなりの部分がYahoo! JAPAN側でカスタマイズされていることがわかります。
参考:Yahoo! JAPANで「コート」と検索した時の検索結果画面
紫でハイライトしたところは、Yahoo! JAPAN独自のもの。広告はぼかしを入れています。
複合検索結果の表示方針も違います。Googleは『自社及びサードパーティー問わず、検索クエリに適合性の高いウェブページへリンクする』、Yahoo! JAPANは『自社が運営する他サービスへ誘導するためのコリンクを提示する』傾向があります。Yahoo! JAPANは皆さんご存じの通り、ポータルサイトとしての歴史がありますので、賛否両論あると思いますが現状はこうなっています。
検索結果の違い(2) SPYWや位置情報、パーソナライズ検索などの高度な検索機能
10人がGoogleにて同じキーワードで検索しても、必ずしも同じ検索結果を目にするわけではありません。「ホテル」と検索しても札幌市で検索した時と那覇市で検索した時は検索結果が異なります。過去の検索履歴や直前の検索行動により、検索結果が変わることもありますし(パーソナライズ検索)、Google+における活動や他ユーザーとの関係性によっても検索結果は変わります(SPYW = Search Plus Your World)。
cf.
10年前であれば、100人が同じキーワードで検索すれば、100人とも同一の検索結果を目にしました。しかし今日のGoogleは、検索キーワードと適合性の高い検索結果をまず計算した後に、ユーザー一人一人の事情(=現在地や検索履歴、Google+など)にあわせて検索結果を調整します。両者を区別するために、前者のことを標準検索結果(unbiased/neutral/standard SERP)、後者のことをパーソナライズ検索結果(Personalized SERP)と呼びます。
- パーソナライズ検索結果(Personalized Search Result Pages):検索利用者の検索場所や検索端末、検索履歴など、検索利用者の属性や行動にあわせて個別化(パーソナライズ)された検索結果のこと。一般検索利用者が目にするGoogle検索結果の多くは自動的にパーソナライズされている。
- 標準検索結果(Unbiased / Neutral / Standard Search Result Pages):パーソナライズが行われていない検索結果のこと。検索利用者固有の情報を一切反映していない、一般的な検索結果画面。Chromeシークレットウインドウを開いて初めてGoogleで検索した時に表示される検索結果画面は(ほぼ)標準検索結果。
Googleは検索利用者の様々な情報に基づいて自動的にパーソナライズした検索結果を表示しているので、利用者が意識せずとも日常の多くの場面で、あなた自身にパーソナライズされた検索結果が表示されているはずです。
ところでGoogleがYahoo! JAPANに提供している検索結果は、標準検索結果、つまり手を加えられていない検索結果です。Googleの検索履歴やGoogle+のソーシャルグラフ情報がYahoo! JAPAN側に渡されることもありません。
このような事情から、「ウェブ検索」「画像検索」「動画検索」は同じ検索技術を採用しているとはいえ、実際に画面に表示される検索結果は両者で異なることになります。もちろん、Chromeブラウザでシークレットウインドウを開き、位置情報など一切渡さない条件下でGoogleの検索結果に表示されたものと、Yahoo!検索に表示された画面を比較したら、ウェブ検索結果の部分はほぼ同じになると思います。しかしながら、それは理論上の話であり、現実の世界では多くのユーザーが普段利用しているブラウザでいつも通りに検索しているに違いありませんから、日常的に目にするであろう検索結果は、共通技術であるウェブ・画像・動画だけを見ても少しずつ異なっているはずです。
検索結果の違い(3) リッチスニペット、オーサーシップ、In-depth Articles、カルーセル
検索結果画面の表示方法、すなわちUIはGoogleとYahoo! JAPAN それぞれが独自に開発をします。従って、スニペットに価格やレビュー・クチコミやレシピ、イベント開催日時を表示するといったリッチスニペットや、検索キーワードについて詳しい記事を表示するIn-depth Articles、ナレッジグラフとカルーセル、Google Nowでお馴染みのカード情報、著者情報を表示するオーサーシップといった、インターフェースに関する機能は Yahoo!検索結果には表示されません。こうした機能の差違も、両検索エンジンの違いを生み出す要因になっています。
cf.
Googleカルーセル表示について(本文後半)
ちなみに最新の検索技術、例えば音声検索や、会話型検索、画像で検索(※ アップロードした画像と類似した画像を探す検索機能)なども Yahoo! JAPAN側では提供されていません。
まとめ:全体的にGoogle検索とYahoo!検索は違いが大きい
要約すると (1) 複合検索結果はGoogleとYahoo! JAPANそれぞれ独自の情報源に基づいて検索結果に挿入する、(2) 標準検索結果を基にパーソナライズ表示するGoogleと、そうした機能がGoogleほど充実していないYahoo!検索では検索結果に差違が出る、(3) 検索結果のインターフェースやプレゼンテーションに関しては両者独自色が出る、以上3点の違いがあります。
こうした違いにより、一般検索利用者から見れば、とても同じ検索技術をベースにしているとは思えないほど見た目の検索結果は大きく異なりますし、視覚的な検索順位も違いが見られます。