SEMリサーチ

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検索クエリ情報の意味と活用方法

要約

  • リファラ情報が取得不可能になったことで、広告主向けキーワードデータを主に使ってコンテンツ改善施策が行われている歴史的経緯を理解する
  • キーワードデータだけでは何の意味もない
  • キーワードデータを参考にするなら、Search Console や Googleトレンドを利用したほうがよい

検索利用者が実際に入力した検索語句を参照できた時代

検索クエリのデータをコンテンツの企画や制作に反映するというアプローチは、SEOという言葉が確立する2000年より前から行われていた施策の1つである*1。2011年以降、Googleがコンテンツ品質を評価するという方針(パンダアップデート)を打ち出したことで皆があらためてコンテンツに注目した。その結果、自然検索流入を増やすために検索キーワード情報を使ってコンテンツを企画するという方法論が再び広まり始めたという経緯がある。

ところが1990年代~2010年までと、それ以降ではこの施策で活用されるデータソースに決定的な違いがある。2010年まで -- 正確に言うとGoogleが検索クエリのリファラ情報(ユーザがページに訪問した時に実際に検索窓に入力した検索語句(クエリ)のこと)を訪問先Webサイトに渡していた時代まで -- は、コンテンツの制作アイデアに活用していたデータは主に (1) Web解析で取得する参照キーワード情報 (2) 検索各社(Google, Microsoft, Yahoo! など)が提供する広告主向けのキーワードデータ(たとえば Google キーワードプランナー)、(3) サードパーティーが提供するキーワードデータ 上記3つのデータソースを活用していた。

Googleがリファラキーワード情報を渡さなくなった2011年以降の世界

ところが2011年以後、Googleがセキュアな検索サービスの提供を目的にSSL化を推進する過程で上記 (1) のリファラ情報をWebサイト側に渡さなくなったために具体的な検索語句を知る術がなくなってしまった。検索結果をクリックする時にリファラ情報を削除するようになったため、サイト運営側も来訪者に関するリファラ情報を取得することが不可能となった。

仕方なく (2) と (3) のデータで代替することになるのだが、(2) については Ask Jeeves や Yahoo! が自社検索技術の開発を諦めたことや Microsoft の苦戦の結果 Googleによる検索市場の寡占化が進み、実質的に Google のキーワードデータしか参照できない。(3) についても (1) が失われたこと、検索マーケティングデータについてのニーズ変化により活用可能なソースが限定されることになった。

「キーワードとインプレッション数では何の意味も持たない」

上記のような歴史的経緯とその当時のデータの持つ意味を理解していれば、2011年以降に行われている広告主向けキーワードデータを使ったコンテンツのアイデア探しには重大な注意事項があることがわかるはずだ。つまり、広告主向けのキーワードデータは、Web解析レポートで閲覧可能だった検索語句とは性質が全く異なるため、2010年以前に定着していたキーワード情報活用のベストプラクティスをそのまま実践していても、誤った施策に到達するリスクがあるということだ。

Web解析で取得可能だった参照(リファラ)キーワード情報と、広告主向けのキーワード情報は何が違うのか。それは、前者は時間や文脈や行動のデータと紐付けることで別記事で触れた検索利用者の体験の一部を推し量るデータになり得たのに対して、後者は文脈や行動の概念が全くないという点だ。

検索クエリに文脈や閲覧履歴、行動を紐付けて初めて意味を持つ

参照キーワード情報というのは、(1) いつ、(2) あるブラウザが何の検索語句(実際に検索窓に入力して検索された文字列)で、(3) どのウェブページに到達し、(4) どういった行動をしたのか(※ 一般にWeb解析ツールで分析可能なデータの範囲)という情報をセットにすることで、単なるクエリだけでなく、そのクエリで何を閲覧し、どうサイト内を回遊したのかを分析することができたわけだ。でも、その検索語句が世間的にどれくらい検索されるのかわからないので、広告主向けに提供されるキーワードデータで補完をする。ここで注目して欲しいことは、参照キーワード情報はそこに文脈や行動データを紐付けることでユーザーの需要や感情の一部を垣間見ることが可能である点である。別記事で触れた「体験を理解する」ために少しばかりであるが役立てることができた。

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それに対して2011年以降から現在にかけて、(その参照キーワード情報の代替として活用される)広告主に提供されるキーワードデータは、文脈がまったくない。世間的に、ある検索キーワードが月間どれだけのインプレッション数を提供されたところで、「自社の」Webサイト運営管理の継続的な改善データとして役立てることが困難なのだ。キーワードのインプレッション数が●回であるという情報だけで、どうやって実行可能な施策に結びつけられるのか?先日公開した記事「SEO業務における「検索キーワード調査」関連のタスクは消滅する運命にあるのか」で指摘している問題点の1つは、こういう話だ。

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繰り返しになるが、検索意図を理解するとは、ある課題(タスク)におけるユーザーの一連の体験を理解することだ。参照キーワード情報が取得できた時代は、その情報と検索各社が提供するキーワードデータ、Web解析データを横断的に参照することでその理解の一助となった。しかし文脈が一切ないGoogle提供のキーワードデータを見ても、その理解はとても難しいのだ。

どのデータを活用するか

これはデータの組み合わせと活用方法の問題であるので、改善策はある。その1つは、もしコンテンツの改善施策を行いたいのであれば、Google Search Console から参照できるキーワード情報(検索パフォーマンス -> クエリ)を使うことだ。一部の検索語句(1990~2010年頃の参照キーワードに準じる情報)を閲覧できるので、このデータが代替になる。

ただし、「使用されたすべての検索語句ではない」ことは留意してほしい。Web解析ツールを活用していた時代は、ロングテールの中の超テールクエリ(たとえば月間検索流入数が1~3程度のまさにテールのクエリ)を束ねることでコンテンツの改善やアイデア探しが行われていた。現実の検索利用者が使う検索語句は、大半の人の想像を遥かに超える語句の組み合わせだ。Web解析は(ログで残せる限り)そのあらゆる検索語句を参照できた。*2しかし Search Console はそのロングテールに広がる検索語句の種類の一部しか表示していない。もっとも「ないよりずっといい」「アクションにつなげる仮説は出せる」程度に有用なので、使うならこのデータだ*3

2つ目の案は、検索語句そのものではなく、そこに何らかの意味を持たせられるデータを使うことだ。たとえば日本の8月中旬から下旬にかけて、毎時16~18時に検索数が増えるクエリは何かご存じだろうか?あなたは毎日朝8~9時によく検索される語句の傾向はご存じだろうか。世間の話題や検索の時間帯、デバイスと紐付けていくと、「キーワードとインプレッション数」以上の情報に変えられる。データに意味を持たせて使えるようにする。もっとも手軽な方法は、Googleトレンドを参照することだ。ただし、世間の動きや興味関心について日常的によく学び、そこにGoogleトレンドのデータを乗せていくことが必要になるので、単にコンテンツを大量生産するために作業を効率化したいだけの人には不向きであるしその思考を変えない限り上手くいくことはないと断言しておく。

検索語句や検索行動の感覚をどのように身につけるか

私はカンファレンスでの講演、オンライン記事や書籍などでも、検索キーワードに関連する話題に時には必ず講演者(執筆者)のプロフィールを確認し、もし2010年以前(つまりWeb解析でリファラ情報が取得できた時代)におけるSEO関連の業務経験がない場合は例外なくスルーしている。それくらい、この「生の検索クエリを分析した経験の有無」は埋めようのない知識と経験の断絶がある。

現在これを補おうと思ったら、検索会社で働いて大量の検索ログを分析する機会のある仕事をすることだろうか?少しでも感覚を身につけるなら、1日中、テレビやSNSを見ながらGoogleトレンドを毎日確認することや、@niftyが提供する瞬!キーワードを閲覧する程度だろうか。昔はexciteがサーチストリーム(いまユーザーが検索しているキーワードをそのまま流し続けるサービス)のような検索行動を垣間見れるツールがたくさんあったのだが・・・。

 

*1:この時代は無料のアクセスログサービスが人気で、それらの一部はサイト運営者以外でもレポートを閲覧できるものだった。したがって、同業や類似するサイトのアクセスレポートを覗いてマーケティングに活用することが可能だった。私は当時のレンタルサーバの多くに標準搭載されていた解析ツール(AWStats?だったと思う)や、futomiやeXTReMe のアクセス解析ツールを導入していたサイトのレポートをよく見ていた。2020年現在の感覚から考えると「自サイトのアクセスログを無料開放する」ということが信じられないが、いま振り返ればいい時代に大切なことを学ぶ事があって良かったと思う。

*2:2000年代にWeb解析の仕事をしていた経験がある方は、その検索語句の幅広さをよくご存じだろう。同時に、その当時の知識や経験があれば、現在のGoogleキーワードプランナーや Search Console の情報が十分なわけではない感覚もきっと理解できるだろう。

*3:Bing Webmaster Toolsの検索キーワードレポートでも構わない。他にクリックストリームデータを使う方法がある。しかし手軽にアクセスできるものでなく一気にハードルが上がるので割愛する

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