以下の内容は毎年、新卒入社でSEOに配属されてきた人に向けて「SEOの学び方」として最初にお話ししていることです。ご参考までに。2020年版。
要約
- SEOは新卒配属で学ぶにはハードなお仕事
- なぜ世界中の企業がSEOに取り組むのか、その必要性を自分で経験して学ぶこと
- SEO単独のスキルは実はそれほど役立たない。Web運用管理の周辺専門領域を1つ習得して、それを中心にSEOの理解を深めるのもよい
SEOは、Web経験がない新卒にはハードなお仕事
SEO はインターネットの雑学の集合体です。ドメイン、Web制作の一連のフロー、サイト運用管理、コンテンツマーケティング、情報設計(IA)、UX/ユーザビリティ、Web解析、ソーシャル、そしてインターネット検索技術に関する知識と、幅広い専門知識が要求されるお仕事です。
新卒でSEOに配属されることをドラクエで例えると、何の経験もないのに最初から賢者やパラディンなどの上級職にさせられて、それなのに戦士や魔法使いといった基本的な知識と経験があること前提で仕事を任されるようなイメージでしょうか。つまり、本人の相当の努力が要求されます。
世界中の企業がSEOに取り組んでいる理由を理解する
世界に目を向けると、HP、IBM、Disney、Walmart、P&G、Kraft Heinz、GE、Samsung など名だたるグローバル企業の多くがSEOに取り組んでいます。残念ながら日本の大企業に限ると微妙なところですが、世界的には検索トラフィックを集めるSEOはデジタルマーケティングの主要な施策の地位を確立しています。むしろSEOを実施していない企業が珍しいくらいです。
最初に「なぜ、多くの企業がSEOに取り組むのか、そこに多大な予算を投下する理由はどこにあるのか」ということを、その事業会社の目線で理解をすることから始めてください。彼らはSEO自体が目的で推進しているのではなく、ビジネス目標を達成するためにSEOが非常に適切な施策であると判断したから行っているのです。その理屈を頭ではなく自分自身で体験として理解することから始めるのです。
最初の課題として「Webサイトを運営すること」を課しているのは*1、こうした必要性を自分自身で実感してもらうためでもあります。可能であれば、ぜひ自分自身でウェブサイトを作って、集客を増やすための試行錯誤をしてみてください。ウェブに関連する広範囲な知識の習得にもつながります。
「この領域だけは、自信がある」というスキルの柱をつくる
繰り返しますがSEOは雑学の集合です。さまざまなことに精通している必要があります。そして重要なことは、SEOというのは「検索に配慮できるWebの汎用的なスキル」であるので、次にあげる領域の少なくとも1つについて理解がなければ、SEOのスキルは何の役にも立たないということです。SEOは優れたWebサイトを継続的に運用管理することでもあるので、隣接領域についての理解なく学びを進めても小手先のテクニックに終始してしまい、事業推進という本質を見失ってしまいます。
・Web制作・開発全般:広く浅くでいいので、新規Webサイトの立ち上げ段階から、実際に公開に至るまでの業務フローと各々の業務の理解があること
・ユーザビリティ/UX:ユーザーにとって使いやすいWebデザインや構成要素について、合理的な理由に基づいた課題の指摘と改善施策を提示できること
・Web解析:Webのアクセスデータを分析して、課題の抽出と改善施策を提案できる能力
・コンテンツマーケティング:ターゲットとするオーディエンスの教育・啓蒙・理解をコンテンツを通じて進めながら、最終的に自社の商品やサービスを選択してもらうように促すマーケティング全般の実務理解
言い換えると、上記いずれかのスキルを身につけて、そこにSEOの知識を融合させると、初めてSEOのコンサルティングが可能になるということです。
上記を踏まえて、ぜひ、最初に「自分のスキルの柱」、中核となる専門領域をつくってみてください。上記のいずれの領域でもいいので、それなりに詳しいと自信を持っていえる領域をつくります。その領域ができると、SEOの1つ1つの知識が、業務との関係性を理解した形で、整理して習得できるようになります。
繰り返しますが、SEOのスキルというのは「検索に配慮してデジタルマーケティングの何かを実行できる能力」ですので、その何かの柱ができると、他の領域との互いの関係性や意義もわかってくるので業務を理解しやすくなるはずです。
上記に挙げた領域は、いずれも1990年代から存在する職種であり、現在でも非常に重宝されているものです。どれを選択しても5~10年後も決して無駄になりません。
[UPDATE] 2020.06.12 SEOの学び方上級編も書いてみました。
*1:社内研修で、Webサイトを自分でゼロから作って運営しなさいという課題を出しています