SEMリサーチ

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なぜSEOの世界が、ソーシャルメディアマーケティングに目を向け始めているのか? Rev.3 - アイレップのSEOスタンダード

SMO(ソーシャルメディア最適化)やSMM(ソーシャルメディアマーケティング)といった言葉がSEOの世界を賑わしている。これらは、SNSやブログなどのCGMの台頭やユーザー参加型サービスの増加に呼応して登場した用語であるが、それがなぜ検索マーケティングの世界からも注目を集めるようになったのか。その背景について解説する。

世の中の動きが、検索の世界に様々な影響を与えている

人々の興味や関心事、世界で起きる日々の出来事が、私たちの検索行動はもちろん、検索エンジンによるウェブの評価に影響を与え続けている。これは検索エンジンやポータルサイト各社が提供するキーワード急上昇ランキングが示すように、テレビやニュースで報道された話題に人々が感心を抱いた時、それに対する検索回数が急上昇していることからも想像できよう。また、ブログやSNS、ソーシャルニュースなどのCGMも興味や関心事に関連する多数のコンテンツやリンクをウェブ上に生み出す。先日ソフトバンクからAppleのiPhone発売の発表が行われたが、これに呼応して多数のメディアやブログがそれを取り扱い、ソフトバンクのコーポレートサイトや当該リリースページ、あるいは米AppleのiPhoneのページなどに対する多数のリンクが発生していることをイメージしていただけると、よく理解できるかもしれない。

さて、こうした事象を検索マーケティングのテクニカルな視点で捉えると次のように解釈できる。「特定キーワードの検索回数が上昇し、関連ウェブページへのトラフィックが増加した」「ソフトバンクにトラフィックだけでなく、大量の自然リンクが張り巡らされたことで、当該サイトへの被リンクが急上昇した、したがって、検索エンジンにおけるソフトバンクのサイト(ページ)の重要度の評価は高まった」ということだ。

SEOは目的か?それとも(影響の)結果?

ところで、特に後者について「ソフトバンクは、(被リンク増加という意味で)SEOを目的にAppleとの提携およびiPhoneの発表を行ったのか?」といえば当然ながらNoだし、そんな風に考える人はいないだろう。

あくまで、ソフトバンクは携帯電話事業の戦略の1つとしてiPhoneを採用したのであり、検索の世界に影響を及ぼし検索エンジンからの評価が高まったというのは結果に過ぎない。同様に、大手メディアなどで取り上げられるような企業であれば、何かのサービスや新商品を発表するたびに、それが注目を集めれば必然的に関連するコンテンツやリンクが発生するし、結果として関連キーワードで検索するときっと検索エンジンの上位に表示されてくるだろう。これらも当然SEOは念頭にないであろうし、繰り返すがあくまで経済活動の結果が検索システムの世界に影響を与えた結果に過ぎない。

検索エンジンはデジタルの世界に広がったウェブを目の前に、そこで通常発生する経済活動と、それがウェブに与える影響を理解した上で、ユーザーに対して適切な検索結果を返せる検索アルゴリズムを設計し、開発している。たとえばGooglgがリアルタイムの検索数に応じて、どのページを上位に表示するかを決定するQDFアルゴリズムはそれを示す1つの例といえよう。オンラインとオフラインが相互にリンクし、影響を与えあっている今、ある経済活動によって人々の関心が呼び起こされ、そしてリンクが生成されたのであれば、それは当然評価して然るべきものだ。

効率よく「影響」を与えるアマゾンのアフィリエイトマーケティング

SEOの世界では「検索順位を簡単に上げる方法を知りたい」「どうやって大量の外部リンクをかき集めようか」といった、どうやってSEOという行為を行うかという話がよくされる。しかし、先に述べた通り、あなたがSEOをする・しない(行為)にかかわらず、世の中の動きやあなたの企業や団体の経済活動の成果が検索の世界やサイト、ページに影響を与えているため、その影響が大きければ必然的に関連語句で検索した時に、希望するページが自然と検索エンジンの上位に現れるのだ。あえて「SEO」という名目の技術に莫大な予算を投下しなくとも、あなたが行う(SEOと全く関係ない)経済活動の成果がダイレクトに検索の世界に反映されさえすれば、本来、SEOそれ自体のために何かアクションを起こす必要などないのだ。

実はこうした仕組みを上手に取り入れシステム化しているのがアマゾンだ。同社が展開するアフィリエイトマーケティングは、それの目的は当然ながら「アフィリエイト」であるが、その成果はダイレクトに検索エンジンの自社に対する評価に連動するように技術的設計がなされている。

このマーケティングプログラムは、検索エンジンに影響を与える(=SEOの効果が出る)ことを視野に入れていた点で、先のソフトバンクの例と事情は異なるかもしれない。しかしアフィリエイト展開が進捗しなければ検索エンジンにも影響を与えることはないし、このプログラムに参加する誰もがSEOそれ自体を意識して活動するわけではない。アフィリエイターは商品を紹介し、小遣いを稼ぐために行動をしているし、また運営者側も売上を拡大するための手段の1つとしてアフィリエイトというマーケティングプログラムを選択しているに過ぎないからだ。そうした意味で、経済活動の成果を直接的に検索の世界に反映させている良い例といえるだろう。

検索エンジンフレンドリーな状態は必要

ここで、検索エンジンとSEOの技術的な話をしよう。検索エンジンは世の中の情報を整理し、ユーザーからの検索要求に対して関連性(レレバンシー)の高い検索結果を提示するための方法の1つとして、リンクのつながり(web connectivity)を評価し、ページやサイトの重要度を推し量ろうとしている。この時、本当に評価したい対象とするリンクは、順位上昇を主目的として(SEO目的とした)リンクではなくて、先のソフトバンクの例で触れたような、経済活動の結果として、自然発生的に生まれたリンクやコンテンツだ。ネット上で自然に生まれたリンクのみでページのレレバンシーを評価するのが、検索アルゴリズムの設計思想上も理想であるからだし、リンク分析アルゴリズムの代表であるPageRankも、もともと「リンクには特別な意味がある」というウェブグラフの特性に着目して生まれた産物だ。

それならば、仮に世界中の誰もが検索エンジンの存在を知らされずに経済活動を行っていたとしても、検索エンジンは適切な検索結果を返すことができるはずだし、それが私たちに理想の検索結果を提示してくれると考えるかもしれない。しかしながら、現実はそんなに甘くない。

たとえば、先のソフトバンクのiPhoneの例に考えてみよう。もしソフトバンクが発表文を(ありえないが)Flashで公開したり、クローラーがアクセス不可能な形式のURLであったり、あるいはクローラーという正体不明のアクセスを拒否するなどしていたら、インデックスすることはできない。同様に、世界中のWeb制作者が好き勝手に、AjaxやFlash、画像、動画などの技術をベースとしたサイトを構築して情報発信を行ったり、Eコマースサイトが自社の商品在庫データベースとの最適な連携と消費者行動の解析のみを考えてシステムを構築していたら、世界中に情報は溢れかえっているのに、検索エンジンにそれが何のコンテンツであり、何のキーワードと関連するのかを正確に認識することが困難を極め、結果的に適切な関連性を保つことは難しくなってしまう。人間が「良い」と思ったコンテンツを検索エンジンがアルゴリズムで同様に「良い」と判断できれば良いのだが、それが実現されるのは、まだまだ、ずっとずっと先の未来のお話だ。

そこで、発信した情報が人々だけでなく、検索エンジンに対しても意味を持つ、つまり「発信した情報が検索エンジンにも適切に伝達され、その内容や重要性が評価されやすくする技術」としての、つまり検索エンジンフレンドリーな状態を維持する手法としてのSEOが要求される。

また、みんなが好き勝手にウェブサイトを制作すれば、検索エンジンにとって「見えない」ものも多数生み出される可能性は、ウェブ環境が進化し、新技術が登場するほどそのリスクが高まる。そうしたことを見越して、Google、Yahoo!、Microsoftといった大手検索エンジンはウェブマスター向けにガイドラインやサイト制作のための各種情報を提供して、検索エンジンがインデックスしやすいウェブ制作の知見や知識を高めるための教育・啓蒙的活動も行っている。

自然リンクが最良、しかし、獲得する術がない

繰り返しになるが、私たちは「SEOをする、しない」といった具合に、SEOを行為ととらえて話をすることが多いが、別に「SEOをしない」からといって検索エンジンの上位に表示されないわけではない。オーバーチュア・スポンサードサーチやグーグル・アドワーズ広告は「広告」である以上、広告費用を支払わなければ決して検索結果には表示されないのに対し、自然検索でのリストを目的とするSEOは、仮にそれを「しなかった」としても、日々の経済活動が十分に人々のアテンションを得るに足るものであり、かつ、ウェブサイト自体が構造的・コンテンツ的に検索エンジンが理解・評価されやすい「状態」に保持されていれば、「SEOをする」という行為を考えなくても、(関連キーワードで検索結果に上位表示される、という意味で)SEOされているといえよう。つまり、SEOは「状態」を維持していれば、本来はその存在や技術を特別意識するものではない。

しかし、現実には、マーケットにおける競争戦略上、他社が積極的に資金を投入してリンクを大量に獲得できる施策(積極的な行為)を行っているのであれば、そして検索エンジンからの売上のインパクトが大きな業種であり、一般サイトから被リンクを得られるチャンスが低いほど、対抗上、外部リンク対策も積極的に展開する必要に迫られる。企業にとって利益につながる、コマーシャルクエリ(キーワード)は限られている。そして、そのクエリに対して「上位」に表示できるポジションもまた、有限だ。その限りある場所を獲得するか、しないかによって自社の成長が左右されるのであれば、そして特別な施策の実施によってその場所を奪う確率がずっと高まるのであれば、利益追求を目指す企業がそれを積極的に行うのは当然の帰結だ。

とはいえ。多くのSEO担当者は、こうしたSEOを目的とした外部リンク対策よりも、前半で触れた「自然リンク」を獲得することが最良のSEOであることは理解している。ユーザーが自然に、自発的に張るリンクを幅広く集めることが、検索マーケティングのリスク管理の上でも、コストパフォーマンスの観点からも最良なのだ。実際、検索エンジンがもっとも評価するのはSEOのみを目的として人工的に生成されたリンクではなく、人々が自発的に、何らかの理由で張りめぐらされた自然リンクだ。

ただし、自然リンクを獲得することはすべての企業や個人にできることではない。日常的に人々の注目を集められる、多大なる広告予算をテレビや新聞、雑誌などにつぎ込んで告知活動が行える大企業や、非常によく知られたブランド商品やサービスを持ち、人々の興味の琴線に触れるような商材を扱う一握りの企業に限られていたのだ。

さらに、莫大な情報量が溢れかえる今日のデジタル世界においては、優れたコンテンツを作成してもそれに対するアテンションを得ることが非常に難しいことも、問題を複雑にしている。仮に、誰もが素晴らしいと感想を洩らすような優れたコンテンツ - ブロガーが見れば誰もがそれに言及せずにはいられず、リンクも張るようなコンテンツ - を作成したとしよう。こんなコンテンツであれば自然と検索上位に表示されるかもしれないが、表示されるようになるのは「人々が訪問して評価した後」の話だ。つまり、評価してもらうための人々はどうやって集めてきたらいいのだろうか?優れたコンテンツだったら、公開さえすればどこからともなく勝手に人々はやってくるのだろうか?

コンテンツを公開しても、それを多くの人の目に触れさせるためには検索エンジンの上位に表示させる必要がある。しかし、自然リンクで検索上位に表示するためには、そのコンテンツは多くのユーザーの評価を得ていなければならない。つまり、最初に検索エンジン以外の経路で持って人々の評価を得なければいけないのであるが、「検索エンジンにヒットしない情報は存在しないに等しい」と言われる今日において、どの個人や企業でも実現するのは至難の話だ。

ただ、もしも検索以外の経路で露出させるチャンスがあれば、話は別だ。

コンテンツ回帰に導くソーシャルメディアマーケティング

この現状を変えうる可能性を秘めたメディアがウェブ上に出現した。それがソーシャルメディアだ。

ブログやSNS、ソーシャルブックマーク、ソーシャルニュース。これらユーザー参加・共有型のサイトは、それ自体がSEO的価値を持つリンクを直接的に生成するわけではない。しかし、これらのメディアで注目を集めた個々の商品やサービスは、大量のトラフィックやリンクを間接的に集めることができる。日本ならlivedoor clipやBuzzurl、はてなブックマーク、海外ならdiggといったサービスがあるが、たとえばdiggであればトップページで紹介されることで平均被リンク数が数日間で500ほど増えていたり、はてなブックマークでも同様にトラフィックが通常の10倍以上になることは少なくない。

これまで自分が関心あるコンテンツを見つけ出すためには検索エンジンを使う必要があった。しかし、どんなに良質なコンテンツをウェブで発信しても、それが検索エンジンで見つかる状態でなければ閲覧も評価もされず、結局(良質であっても)人に見せる機会は生まれなかった。

しかし、ソーシャルメディアが出現し、それを見て良いと思った人々が集まることでアテンションを得て、そしてトラフィックが生まれ、ブログなどで紹介されることで被リンクが集まり、検索エンジンでも見つかるようになり、そしてまた検索経由で訪れた人々に評価されるといった具合にそれぞれが巡回し、良いコンテンツが見つけられやすいようになった。こうしたウェブ環境の変化に目をつけ、米国では1~2年の間に検索マーケティング関連のブログやニュースメディアでもSMOやSMMなどの話題が頻繁に取り上げられ、また検索系コンファレンスでも必ずといって良いほどソーシャルメディア関連のセッションも設けられるようになっている。

SMOやSMMはあくまでブログやSNS、ソーシャルメディアなど新たに台頭したメディアへのマーケティングであって、SEOは目的ではない。コンテンツが良くなければユーザーはそれに反応しない。つまらないコンテンツであれば一所懸命ソーシャルメディアの渦にそのコンテンツを投げ込んでも、誰もがそっぽを向くであろう。そうした意味において、ソーシャルメディアの登場は、質の良いコンテンツを作成すれば継続的に人々の来訪を招き、純粋に支持するリンクが増えていくことを指し示しており、そうした意味で、ここで改めて「良いコンテンツありき」というSEOの大前提への回帰が促されるであろう。

企業にとって、ソーシャルメディア自体は無視できない存在になりつつあるので、それに対する施策を行いつつ、同時に検索エンジン対策もできるという点で効率的といえる。また、SEO主目的とした外部リンクはリンク獲得とソーシャルメディアマーケティングを通じて自然発生的に得られたリンクのコストやパフォーマンスを比較した時、後者が圧倒的に優れている。

SEOはそれ自体を目的としなくても、他のマーケティング施策から影響を与えることで実施する方法もあるということを認識し、本稿で触れたSMOに限らず各種の企業活動を見直してみたらいかがだろうか。

執筆:株式会社アイレップ 取締役 SEM総合研究所所長 渡辺隆広

2008年6月6日

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