SEMリサーチ

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Google「エイジングフィルタ」との付き合い方

「最初からSEOを考慮に入れて設計、色々な検索キーワードで検索上位に表示されることを期待して公開したWebサイトが、いつまでたってもGoogleに表示されない。Yahoo!では比較的よい成果を生んでいるのに・・・」。

2004年以降、新規にWebサイトを立ち上げた際に、こうした経験をした企業の担当者がいるのではないだろうか。

新規に取得したドメインでWebサイトを立ち上げても、最初の一定期間(約6ヶ月)の間は適切なSEOを実施してもGoogleに上位表示されない、これはSEO業界にて「エイジングフィルタ(Aging filter)」※と呼ばれている現象だ。明確なメカニズムについて解明されているわけではないが、少なくとも米Googleエンジニアも巷で話されている現象に相当するアルゴリズムが存在すること自体は認めている。検索エンジン用に隠して設置したクロスリンクによって削除されるような検索エンジンスパムとは異なる性格のもので、いわば”仕様”に近いものだ。

エイジングフィルタが有効になっている間はサイト名称を除く - 例えばキーフレーズなども含めて - ほとんどの検索ワードで上位に表示されない一方、その一定の時間が経過すれば検索上位に表示されるようになる。決して全ての新規開設サイトがこの影響を受けるわけではないが、こうした現象に遭遇することは少なくない。こうした仕組みをGoogleが導入した真の理由はわからないが、おそらく、サイト開設と同時に自らが運営する多数の他のWebサイトから大量のリンクを張ることで、最初から検索上位を独占しようとするSEOマーケッターが増加したことへの対策ではないかと推定される。

理由は何であれ困ったことに、例えば新規に立ち上げるWebサイトへのトラフィック誘導施策としてあらかじめSEMを想定していたのにふたを開けてみたらGoogleからの誘導が全く行えないという事態になる。幸い日本においてはYahoo!のサーチシェアが高いため海外市場の企業が被るほどの深刻なインパクトはないが、SEMの戦略設計の修正を行う必要に迫られるケースもあろう。

対処策としては色々な案が考えられる。例えばドメインをあらかじめ取得しておいて一定時間は放置しておく、既存のドメインに新たなホスト名をあててサイトを開設する、などだ。もっとも、ドメインを取得してWebを開設することが半年以上も前からあらかじめわかっているようなことはそうないだろうし、サブドメインを用いるのも後になって面倒な処理が発生してしまうこともある。

結局のところエイジングフィルタに遭遇することはあらかじめ想定した上で、その間はGoogleからの集客は全くアテにしない前提でWebマーケティングを組み立てておく、というのが近道となろう。中小企業の担当者の場合はクリックに対して課金されないSEOが魅力的に感じるかもしれないが、上位に表示されていない時は検索連動型広告で補完するという柔軟な考え方も必要だ。

※ 本稿では特に新規サイトについて現れる現象について述べている。それ以外でも発生する似たような症状(これをSandboxとして区別する場合がある)についての説明は割愛している

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